11話 デストロイ
宮殿の地下にある研究室では、凶暴化したモンスターとロックドラゴンの死体を、カプセル内に収納して、専門家達はその実態調査を続けていた
「どうですか?ホーシングさん、ロックドラゴンについて、なにか分かりましたか?」
研究員の1人が、この研究チームのリーダー的存在であるホーシングという男性に現状を確認した
「あぁ、調べていく内に、ある程度の事はわかってきた。恐らくだが、このロックドラゴンは…凶暴化していた」
「!?そうなんですか!?」驚きと戸惑いが入り混じった言葉を口にする
「あぁ、こいつの魔力の状態、これは凶暴化したモンスターの状態によく似ている。あの場で戦っていた戦士の1人からも、魔力が体から浮き出ていたという証言もあるし、間違いないだろう…だが、」
「だが…なんですか?」
「未だ謎な点が2つある。1つは、あの場にいた戦士を苦しめたという魔力を放出する攻撃…知っているとは思うが、あんな攻撃、これまで報告されてきたどのロックドラゴン…いや、如何なる種のモンスターにも確認されていない現象だ、更にあの場にいた戦士によれば、その魔力の雰囲気が、凶暴化したモンスターのそれに似ていたという証言もあるようだが…」
「それじゃあ、ロックドラゴンが凶暴化すると魔力を放出する事が可能になるという事でしょうか?他のモンスターにはそんな事例は報告されていませんし」
「わからない、まだなんともいえない…そしてもう一つ不明な点は、シンプルな疑問、こいつがどこから来たのかだ。ナスカ森林に当然ロックドラゴンは生息していないし、そもそもの話しどういった経緯でモンスターが凶暴化するのかも謎だ」
「ではやはり、アイラが全て仕組んだものだと」
「現時点では、その可能性が高いだろうな。さて、これは一体どういう事か…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私、ノアはゴルファング討伐に出たソラナ君達を助け、ゴルファングの前に立ちはだかった
「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
身体全体が振動するほどの巨大な叫び声をもって、ゴルファングが全力で威嚇してくる
私はその様子をただ眺め、奴が攻撃してくるのを待った
「ノア様!どうしてここに?」
「君たちだけでゴルファングと戦うのは荷が重いであろう。救援にきただけであるよ」
「そう…ですか///ありがとうございます!!!」
有り余るような目でソラナ君は私に感謝を告げている。この歳になっても、やはり人助けというものは胸がはがゆいものだ
だが、今はそれどころではないがな
「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
ゴルファングは激烈に咆哮しながら、私にその巨大な拳で殴りかかってくる
「ノアさん!!!」
「…デストロイ」
私の左眼が赤に赫く光り、ゴルファングの左腕の上腕二頭筋を風船のように破裂させた
「ガァァァァァァァァォァァォォォォォァァァォァ」
ゴルファングが痛みで地面に座り尽くし、何度も地面に右腕を叩いて暴れ回る
私のスキル、デストロイは、左眼で見つめた対象の筋肉組織を即座に破裂させるスキル
これを使い続けると一時的に眼球が破壊され、更に使い続けると永久に目が見えなくなるというのを代償として、魔力をほとんど使わずに発動する事のできるスキル
今私はこのスキルを使用し、ゴルファングの左腕を筋肉を破壊した
だがゴルファングは諦めんと、残った右腕で私を薙ぎ払おうとしてきた
その腕もデストロイで破裂させた
「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
一度に2度もデストロイを使った反動か、左眼から血が流れ、視界もぼやけてきた
だが私は臆することなく、デストロイでゴルファングの両脚の筋肉を破裂、それによって体制が崩れてゴルファングが仰向けで倒れたところに、デストロイでゴルファングの腹部を見つめて、腹筋も全て破裂させた
ゴルファングは断末魔のように血を吐いて倒れた
「す…すごい」
「あのゴルファングを…一瞬で」
「はぁはぁはぁ」
デストロイの使いすぎで…眼球が破壊されたか…
まぁ5回も連続して使えば無理はない、それよりも
「このゴルファング、まだ生きているぞ」
「え!?じ、じゃあこのまま殺っちゃいましょう!」
「いや、こいつはこのまま街まで運んでいく、生きたままな」
「え!?どういう意味ですか!?」
ソラナ達が理解できないままに驚いた
無理もないが…
「生きたまま街まで運ぶって…意味わからないですよ!?そいつはゴルファングですよ!?」
「そのために筋肉をほぼ全て破壊した、抵抗することはできん」
「けど!」
「ソラナ君、これはチャンスだと思わんかね、このゴルファングは凶暴化している、これまで凶暴化したモンスターの謎が解明できていないのは生きたままの状態での調査が行えなかったからだ、それは…凶暴化したモンスターを無抵抗な状態にできた事がなかったから、端末は生物を収納する事はできぬし…だが、こいつはどうだ?このゴルファングは今、全身の筋肉をほぼ全て破壊され身動きが取れないでいる、だがそれでも死んではいない、時間を置けば死ぬという事もないだろう、ゴルファングにはそれだけの生命力がある。つまり、この状態のままゴルファングを専門家達に調べさせれば…」
「!!!なるほど!凶暴化したモンスターの解明に一歩近づけるかもしれない!」
「そういう事だ」
そしてそれは、彼女の身の潔白を証明する事にも繋がると考えている
「でもどうするんですか?こんなデカいのを運ぶ技術なんてありませんよ」
「大丈夫だ、考えはある」それをアイラに聞いておいたのだ
「まずクラウド君、君が辺りの2つ以上の木材をゴルファングの巨体にも耐えられる程には頑丈に変化させて、ここに持ってきてくれ。その後、それを担架の形になるように配置し、それをつる草や蔓を使って結びつける…これでおそらく、即席の担架が完成するはずだ」
「なるほどそれなら…いや!ち、ちょっと待って下さい!仮にそれで作れたとして、それだとこれを持ち運ぶって事になりませんか!?重すぎて無理ですよ!!!」
「筋肉がほとんど失われている状態だ、体重はかなり減少しているはず…大丈夫だ」
私はそう言いながら近くの小岩の椅子に座った
「わ、わかりました、木材を集めてきます」
ソラナが積極的に協力しようとしてくれている
「すまんな、頼んだぞ」
「え?ノアさんは作業してくれないんですか?」
「すまない、デストロイの使いすぎで左眼が開けられなくなっていてだな、腐っても私は老いぼれた身じゃ、こんな状態ではまともに動く事ができないんだ…すまない」
本当に、それについては申し訳なく思っている
「いやいやいや、ち、ちょっと…いや、え…」
「ほらほら、クラウド君も手伝って」
本当にすまない
いや強すぎるだろwww、評価・ブクマよろしくお願いします!