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116話 レッペル橋事件 前編

※やや中度の性描写を含みます、苦手な方はご注意下さい。

エルナとアレスが、まだ戦士養成学校に所属していた頃、その授業の一貫として、グリスの養成所の戦士たちと一緒に、実際にレッペル橋という巨大な橋を警備する訓練を受ける事になった。


現地についてすぐ向こうの養成所生たちと合流し、そこで両国の教官から今回の訓練についての説明を受けた。


「いいか!今回お前たちがする事は、目の前に見えるあのレッペル橋の警備だ!」


教官がそう言うと、エルナも含め全員が橋の方を向いた。


レッペル橋はグリスの首都、[ハゼネ]とその外部の海を繋ぐ、縦に6km、横幅15mの巨大な橋だ。


そして、ハゼネに外部から足を着けるには、空から飛行する以外にはこの橋を使うしか手段がない。


だから万が一の戦争でハゼネを警備するとなれば、必然的にこの橋を重点的に警備する事になる。


「お前たちには実際に戦争が起こり、敵が攻めてきたと仮定してこの橋を警備してもらう」


今度はグリス側の教官が説明を始めた。


「敵兵役には両国の実際の戦士に演じてもらいます、貴様らは我々の指示に従って各々の配置につき、迫り来る敵兵からレンドン橋を守り抜く…というのが今回の訓練です」


「「「了解!!!」」」


戦士たちは全員、指定された配置に着くため準備を始めた。


エルナもその一人だった。


「もうこの日来たのかよー」

「めんどくせー」


「あの女良さそうだな」

「後でいただくか」


「卒業できるかはこれの評価に掛かってるらしいよ」

「採点高いんだー」


エルナは指定位置への移動中、他の戦士たちが各々いろいろと話しをしているのが耳に入った。


そのほとんどがエルナにとってどうでもいい内容だったが、何処の国にも、いろいろな戦士がいるんだなとは思った。


そう思う度に、今の自分と比較されている感じがして、心がじわじわと傷つけられていった。


この時のエルナには、どうして自分が戦士になろうとしていたのか、その意気込みを見失っていた。


親に無理を言ってまで入所した養成所、あの頃はただただ戦士になりたくて、それだけの事しか考えてなくて、まるで覚めない夢を観ているかのように、その願望に浸り込んでいた。


だけど、次第にその気持ちが薄れていった。


別に戦士になりたくなくなったとか、興味を失ったとか、そういうわけではない。


だけどどこか、あの頃に比べると間違いなく気持ちが弱まっているのを感じていて、


だから周りの戦士たちが、適当そうに見えてはっきりと戦士への夢を語る姿を見ると、こんな自分との劣等感を感じて、どこか…どうしようもない疎外感を覚えてしまっていた。


「君は…確かエルナだっけか、よろしく」


そうエルナに話しかけたのは、アレスというエルナと同い年の戦士養成生。


どうやらエルナとほぼ同じ位置に配置されたようだ。


「あぁうん、よろしく」


何度か顔を見たことはあったけど、実際に話したのはこれが初めてかもしれない。


そんな事をしている内に、訓練が始まった。


内容としてはナスカンとグリスの実際の戦士が敵兵を演じてレッペル橋を攻めてくるからそれを阻止するという内容。


思いの外本格的で、油断すれば死ぬのではないかと思ってしまうほど相手も本気でこちらに抵抗してきた。


「よし、本日の訓練はここで終了とする!!」


教官のその一言で訓練は終了し、各々がその場に尻をついて休憩を始めた。


「私も休むか」


エルナも橋の柵にもたれかかり、携帯していた水を飲んで疲労を癒そうとした。


「ねぇねぇ」


その時、2人の男性の戦士が話しかけてきた。


「君さっきの銃裁き、凄かったね!」


「え?まぁ、」


そんな事ないと思うけど、


「あの弾に電気とか火とか加えてたの、あれってスキル?」


もう一人の方も話しかけてきた。


2人とも、気持ち悪いくらいに笑顔だ。


「いや、あれはスキルじゃなくてアb…」


「そんなんだー!!ええ凄いね!!!」


エルナの言葉を遮って話を進めてきた。


「あの…えっと、」


「ねぇ、俺たちもっと強くなりたいからさ!よかったら俺らにその強さの秘訣、教えてよー、いいよね!?」


そう言いながら一人がエルナの背中まで近づき、肩に手を回してきた。


「あ、いや…えっと、」


「ありがとーー、それじゃあちょっと着いてきて!!」


「えっと…ですから、」


エルナの言葉などまるで聞く耳を持たず、2人は半ば無理矢理エルナをどこかに連れて行った。


その様子を、近くで休んでいたアレスは偶然見ていた。



エルナはそのまま、人気のないガレージに連れて来られた。


2人はしつこく、エルナに強さの秘訣を聞こうとしてくる。


「ねぇねぇ教えてよー」


「だから…っていうか何処ですかここ、こんな所まで連れて来て…」


その時、突然背後から全身を黒スーツで包み込み、目元には黒いサングラスをかけたスキンヘッドの屈強な男に締め付けられた。


エルナはその気配を全く感じ取れなかった、気づかない内にこうされていた。


「きゃ、なんですか!?」


「すまないな、これも弟の為だ、我慢してくれ」


エルナはその男の怪力に何もする事ができず、そのまま気を失ってしまった。



「…………………」


「!!!」


エルナが目を覚ますと、いつの間にか全身を椅子ごと縄で括らされていた。


そして周りは、8人程の男たちに囲まれていた。


そして8人全員が何やら歪みあっているようだった。


「この女は俺が先に食うんだ!」

「は!?横取りしようとすんじゃねぇ!先ずは俺だ!」


何の話をしているのだろうか、あまり分かりたくはない…


「まぁまぁ、ここは公平にじゃんけんして決めようぜ」

「それがいい、是非そうしよう!!」


全員が自然と円を作り、じゃんけんを始めた。


「それじゃあ行くぞ?じゃんけん…」


「「「「「「「「ぽん!!!」」」」」」」」


その結果、最初にエルナに話しかけた男が1人勝ちした。


「っしゃあ!」

「んだよ」


そのまま、その男がゆっくりとエルナに近寄ってきた。


「な、なに…?」


「なにじゃねぇよ、もう分かってんだろ?お前は食われるんだよ」


そう言って男はエルナの縄を解いて椅子から立たせると、肩を掴んで動けなくさせ、そのままエルナの服を脱がそうとしてきた。


「いや!ちょ…お願い!やめて!!!!!」


「ゴタゴタうるせぇ!」


          フン


その時、閉鎖されたガレージの中で、僅かに風がした。


男の真横に突然アレスが現れ、そのまま男の顔を思い切り殴りつけ壁まで吹き飛ばしたのだ。


「!!!!!」


その場にいた男全員が起こった状況に反応し切れず、ただただ驚いた。


エルナも突然の事に追いつけていなかったが、考えるよりも安堵の感情が先に出て、崩れたようにその場に座り込み、深く息を吐いた。


そんなエルナに、アレスは語りかけてきた。


「大丈夫か?エルナ。大体の事はもう分かってる…逃げるぞ」

次回、決着


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