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115話 最後を聞かせるため

「うーん」


「どうですか?」


「はっきり言って、君の身に何が起こっているのかは、しっかりとした検査をしてみないと判断できない、だが…君の健康には何の支障もきたしていないとは断言できる状態だ。すぐにでも戦線に復帰できる状態だろう」


「そうですか」


「あぁ、だが、君の体力自体がかなり弱っているから、後2日ほどは休養を取ってもらってからの復帰となるだろうがね」


「分かりました」


軍医にそれだけ言われて、俺は診察室を出た。


すると、めんどくさそうに立ちながら俺を待っているソラナが見えた。


「ソラナ…」


「で?どうだったの、あんたの状態」


「詳しくは分からないが、健康に問題はないらしい」


「嘘」


ソラナは驚きながらも、わざとらしく落ち込みながらそう言った。


わざわざ軍医にここまで体を診察してもらったのは、現在肉体に蓄積した疲労状況の確認…もあるのだが、俺の場合はもう一つ、


あの、魔力の謎の放出現象を診てもらうためだ。


ウイッチ戦で、初めて人前であれを使ったが、俺もあの力が何なのか全く理解できていない。


いつから使えたのか、何故あんな事が出来るようになったのか…


初めて使ったのはあの平原でのテオ戦だったと思うが、それより前にも一度だけ使っていた気もする…


とにかくあの力の正体を探るべく、ソラナに半ば無理矢理軍医の人に診てもらうよう言われた。


軍医には分かっている事を全て話し、いろいろと体を調べてもらったが、結局分からず終いだ。


ますます分からなくなる、あの力は何なのか。


今度もっと大きな設備がある病院で、国の許可が下り次第診てくれるらしいが、それもこの戦争が終わるまでは無理だろうな。


セルセさんたちの活躍もあり、サイン軍はニアレン森林を占領する事に成功した。


死体となった戦士は一度端末に保管しておき、生け捕りにした戦士は捕虜として後々色々な事に使われるだろう。


ニアレン森林はフレミングの首都、レンドンの真横に位置する森、そこの占領の成功したなら、間違いなく比法戦争終戦にかなり近づいたはずだ。


いや、それ以上に、もうこの戦いはほとんど俺たちの側の勝利といってもいい。


それは向こうも分かっている筈だ、だからこうなった以上、向こうが降伏してくるのも時間の問題だと思われていたが、まだその気配は見えない。


まぁ仕方ないだろう、ニアレンを占領したのは良かったが、それと同時に、サインにも、そしてフレミングにとっても想定外の事態が起きた。


『テオとβの逃亡』


こんなの誰が予想できたのかなんて話しだ。


両国の最強の戦士が、2人揃って戦争を放棄し、逃げた。


理由については様々な憶測が飛び交っている。


2人の駆け落ち説、始めたから2人で決められていた契約説…無駄に様々だ。


だがそんなのはどうでもいい、重要なのはテオとβが互いの国から消えたという事実だ。


これにより、フレミングは降伏の更なる動機付けにと、逆に徹底抗戦の動機づけ両方を手に入れてしまった。


フレミングがどちらを掴むのかは知らないが、それだと困るというのが現状の筈だ。


俺としてはさっさとこんな戦争終わらせて欲しい、だから…フレミングの意思をはっきりさせてやる。


「それが出来るのが、あの魔力なんだよな」


俺が不意に呟いたそれをソラナは聞き取り、「どう言う事?」と聞いてきた。


だが俺はそれを無視して、超越光速でアイラの元へ移動した。


「あらアレス君、どうしたの?」


アイラは辺りが暖炉と椅子だけの、薄暗い部屋にいて、俺が来たとほぼ同時にこちらに振り向いた。


因みに、よく見るとアイラは一人サキュバスのコスプレをしたまま縄で吊るされている女の子が表紙に描かれている漫画を読んでいた。


「………………」


「なによ」


「ま、まぁいい、アイラ、一つ頼みがある」


「珍しいわね、できる限りいくらでも聞くわよ」


「実はだな…」



翌日、俺はサインの重要会議室に呼び出された。


目の前には軍や国の幹部たちが、いつもの面子かのように並んでいた。


アイラに魔力の事を全て話し、それをサインに話してもらった。


今こいつらは、俺のあの力を調査しようとしているのだ。


あの力なら、比法戦争を確実に終わらせる事ができると思ったからだ、その為の手順だ。


俺は幹部たちの目の前で魔力を放ち、リザレインを作り出してみせた。


アイラも含め、幹部たちは面白いくらいその様子を見入っている。


その後、俺自身この力については何も分かっていない事を伝えた。


そして、超越光速を使い、街の外にいる適当なゴブリンを連れてきた。


「!?」


幹部たちは困惑するように驚いた。


まぁ無理はない、俺が今からしようとしている事は、今まで一度やった事がないし、故にアイラにも伝えていないかとだからだ。


「それと、まだ確信はないのですが、恐らくこの力は、こういう事も可能です」


そう言って俺は、このゴブリンへ向けて思いきり魔力を放った。


それを喰らい、ゴブリンは悶えたが、段々とまるで服従したように大人しくなっていった。


「これは……」


やはりそうか、


「はい、今見ていただいた通り、この力はモンスターを生成する能力の他に、モンスターを支配する能力も御座います」


まぁ厳密には違うかもしれないが、概ね合っているだろう。


たぶんこの力は、前のロックドラゴンが放ってたあの魔力に近い…というよりほとんど同じかもしれない。


この魔力を浴びたモンスターは、凶暴化に近い状態になる。


凶暴化…即ち人格を捻じ曲げる状態を応用し、今俺はゴブリンを操っているわけだ。


それを見て、幹部たちは浮かれながら良い評価をしている様子だった。


その後、幹部たちはしばらく協議をした結果、この力を利用したある作戦を考えた。


それは、上手くいけば比法戦争を確実に終わらせる事のできる作戦、


そんな作戦の要に俺が抜擢されたのだ。


その事が、1週間後の召集で発表された。


これでもう、後戻りはできなくなった。


だがそれでいい、元々こうなるつもりで、アイラに話を持ち込ませたのだ。


無意味に続き続けた比法戦争も、ようやく、これで終わらせる事ができるんだ。



作戦開始まであと3日、俺は1人雨に打たれ、気持ちを落ち着かせていた。


「アレス…」


そんな俺に、エルナが話しかけてきた。


エルナも傘を刺さず、雨で全身を濡らしながら俺に話しかけている。


「本当…なの、あの作戦…」


「あぁ、本当だが、」


「ねぇお願い…今すぐあの作戦から辞退して…」


「は?何故だ、あの作戦には必要不可欠だ、それに…俺にその意思は全くない」


「それでも!!!」


エルナは俺の話しを遮るようにそう叫んだ。


「それでも嫌なの…アレスがあの力を使うの…あれを使ってたアレスは、本当に入っちゃいけない闇に、入ってるような気がしたから…」


俺はその言葉に、うるさいくらい違和感を感じた。


「お前…まさか知ってたのか、俺の力の事…」


ミアは黙って首を縦に振った。


「………………」


「ねぇお願い、貴方はいつもそう、どうして自分の命を蔑ろにするの…?」

次回、ミアはなぜアレスに惚れ込んだのか、その過去が語られます


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