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114話 ウイッチ討伐

「ごめん、さっきまで…お前の言う通りだ、俺たちは生きなきゃいけない、クラウドの分まで。だから生きよう、最期まで、そしてその為に、ウイッチを倒そう」


俺はそっと、ソラナへ手を出した。


「そ、そうね」


あまりに突然素直になって、ソラナは若干困惑しながらも、大人しく互いに手を合わせた。



「へー、中々熱い感じになってんじゃん、それも今から終わるけどね」


「!!!」


ウイッチはいつの間にか箒に大量の魔力をチャージしていた、恐らく報告書に書かれていた、テンペスト・レーザーを撃つ構えだ。


「あんた達が青臭い会話をしてる間に、こっちは全部終わってたの、それじゃ、サヨナラ」


「待て」


だが、それを俺は堰き止めた。


「やりたきゃやれよ、でも撃った瞬間、超越光速でお前の箒を斬り壊す」


俺は剣を突き出して威嚇した。


「ふーん、そっちこそやってみなさいよ、まぁ例え箒が無かったとしてもあんた達くらいじゃ十分勝てると思うけどなぁ」


「なら試してみるか?」


俺とウイッチは互いに武器を向け合い、牽制し合った。


緊迫した間合いの間を風が通り抜ける。


その間に、俺はソラナと即席で作戦会議を始めた。


「よし、これで奴はしばらく何もしないはずだ」


「そうね、でもあんなの一時凌ぎ、すぐに次がくるわ、その前にこの力の差を埋める方法を考えないと」


そうだ、例え俺たちが共闘したとしても、ウイッチとはまだ、到底埋めきれない力の差がある。


でも…確かに埋める事はできないが、それに喰らいつく方法なら、一つだけ思いつく事ができた。


「一つだけ考えがある、これなら彼奴を殺せる…とはいえないが、勝つ事はできるかもしれない」


「なるほど、分かった。それで私は何すればいいの?」


「お前はとにかく奴の手から箒を放してくれ、奪えなくてもいい。とにかく奴から箒を失くさせるんだ、その為のサポートは俺が徹する」


「なるほど、つまり作戦のほとんどをわたしにやらせようって訳」


「悪いがそうしてもらう、でも、箒を取り上げた後は俺が何とかするつもりだ」


「…………」


ソラナは少しの間を置いた後、「分かったわ」とこの作戦を了承した。


「…助かる」


「悔しいけど私は何も思いつかなかったから、勝てる可能性が少しでもあるなら、私はそっちに賭ける」


「俺の作戦は賭けか」


その時、ウイッチはテンペスト・レーザーのチャージを解除した。


「ちっ、ウザい事を。火炎放射」


ウイッチはその代わりとでもいうように、火炎放射を放ってきたが俺たちは左右バラバラに動いてこれを避けた。


俺は左からそのままウイッチへダークボールを投げたがエアズシールドに防がれる。


だがその隙にソラナがアビリティ、[回転斬]で一気にウイッチへ切り掛かっていった。


だがウイッチはそれを当然のように避け、上空へと移動する。


ソラナもそれを追って浮遊を発動した。


さてここからだ、ソラナがどこまでやれるのか、それに全て懸かっている。


下から見ている限り多少互角の戦いをしているように見えるが、あれは恐らくウイッチが手加減しているだけだ。


奴がいつ全力を出し始めるかそれで全て決まる…


ウイッチはミリッドタイフーンを発動し、ソラナはそれを全て避けられたがそれで精一杯になった。


ソラナはどうにか避け切るとすぐに反撃しにウイッチへ突っ込んで行った。


「残像斬」


だがこれもウイッチに避けられ、更にソラナが一瞬でも硬直したところにサンダーショットを放とうとしてきた。


「!!!」


(まずい…!!!)


俺は超越光速を使ってウイッチの目の前に移動し、そのまま剣を振った。


「!」


ウイッチはそれのガードが間に合わず、後方まで弾き飛ばした。


「アレス」


「あと少し、あと少し隙を作ってくれ、任せたぞ」


「偉そうな事言うわね」


俺は着地し、再びソラナの戦いを見上げる体制に入った。


後方まで弾かれたウイッチだったがすぐに立て直し、ソラナの間合いまで戻ってきた。


「!!!」


ウイッチは真上から火炎放射を放った、ソラナはこれも何とか避けたが本当に当たる寸前だった。


(やっぱりそう長くもちそうにないわね、毎回ギリギリ…早く決めないと)


更に続けてウイッチはアイスニードルを放ってきた。


次々と飛んでくる氷の針をソラナは直撃するスレスレの所で避けていった。


次に連続して放ったパープルレーザーも、ソラナはギリギリの所で避けた。


駄目だ、このままだと負ける、どうすればいい…


…いや、一つだけ方法がない事はない、あの魔力が出るやつを使えば…


けど上手くいく保証なんてどこにある…?


自分の意思であれを使った事なんてない、もしまた殺意に呑まれたら…


「……………」


いや、考えるな、余計な事は。


今はソラナを援護する事だけを考えろ、殺意なんて抑えればいい。


「ぅぉぉおおおおおおおおおおおおおお」


俺は体から薄紫の魔力を放った。


「「!!!」」


ソラナとウイッチもそれに気づいたようだ。


「またあれか、何なのあれマジで!」


「………………」


ソラナも口を閉じた、ウイッチと同じような意見しか持てなかったからだらうか。


そんなの、俺も同じだ、これが何なのか俺も分からない…


けど!今はっきりしている!今俺はこの力を制御できていると!


殺意だって抑える事に成功している。


俺はこのまま、魔力から[ライヤン]という飛行型のモンスターを生み出し、それをウイッチに向かわせた。


「ダルいダルいダルい、またそれか」


ウイッチは火炎放射を使い、ライヤンを一瞬で焼き払った。


「!!!」


だが、一瞬でもソラナ以外のものに注意が逸れた事で、僅かな隙が出来た事にソラナは気がついた。


(今だ!!!)


ソラナは体内に魔力を巡らせながら、ウイッチと自分の位置関係を入念に確認した。


そして、ウイッチが一切動かなかった場合、どうすればそこに行けるのかの最速の軌道を考えた。


そしてアビリティ、[出力斬]を発動した。


その瞬間、ソラナが考えた軌道完全にその通りにワープし、ウイッチはいつの間にか頬を切り付けられた。


(!?なに!?)


(嘘、これでも少ししか切れないの?)


両者は一度離れ、互いに空中で向かい合った。


!!これだ、今この状況だ…


これを待っていた、今なら行ける…!!


「あんた、思ってたより結構ウザいじゃん」


「好きに言いなさい、けど最後に勝つのは、私たち…ロムレス軍…だから!!」


ソラナは真剣斬を発動し、一気にウイッチの間合いへと接近していった。


「!」


だがこの時、ウイッチが考えたのは、ソラナのこの行為は完全に悪手だと言う事。


この一撃をエアズシールドで防ぎ、その後火炎放射を放てば勝てると、そう判断したからだ。


「スキル、超越光速」


だがそうならなかった、ウイッチの目の前に、突如無数のダークボールが現れたからである。


「!!!」


ウイッチはすぐにそれを避けようとしたが間に合うはずもなく、仕方なくエアズシールドでそれを全て防いだ。


だがそのせいで…ダークボールが相殺されて出来た煙で前が一切見えなくなった。


「くそ、どけ煙!!早く晴れろ!!」


ウイッチが苛立ってそう叫んだその直後、煙に紛れてソラナが斜め下へと掻い潜るように接近していき、そのまま真剣斬を使い、ウイッチの手から箒を離す事に成功した。


「クソが!!!」


「今よ!アレス!!!」


その直後、俺はもう一度超越光速を発動してウイッチの目の前まで移動し、奴の腹部を、全力で切り裂いた。


「がああああああああああああああ」


ウイッチは皮膚が裂けた痛みで悶えながら遥か後方へ吹き飛ばされていった。


だが俺も同時に超越光速の代償で身体が動かなくなり、ゆっくりと地面へ落ちていった。


まさか、ソラナを倒すために覚えたダークボールで、ソラナを援護する事になるなんてな…


けど、まだ終わってない。あと少し、後一撃で全てが決まる。


「ソラナ!!まだ彼奴は死んでない!けどあと少しだ!!やれ!!ここで倒せ絶対に!!!」


そう言いながら俺は落ちていった。


「…あんたに命令されるってのは、仕方ないと言えどやっぱり釈ね、けど…任せておきなさい!!!」


ソラナは出せるだけの最高速度でウイッチに近づいていき、その首に刃を突きつけた。


(くっそ完全に油断してた。本当にまずい、このままだと死ぬ、どうする?逃げようと思えばまだ逃げられるけど、でもそれだとあたしがこの森から消えるという事になる、それは残された戦士全てを見捨てるという事、そしてこの森を捨てるという事と同義)


そんなウイッチの葛藤など構いもせず、ソラナはどんどん自身に近づいてきている。


(…仕方ない、この森を奪われるのはまずいけど、テオがいない今のフレミングで、あたしまで失う事その事の方が更にまずい、仕方ないか…)


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」


ソラナの剣が、ウイッチの首を掠めた。


「[テレポート]」


ソラナが剣を降り、ウイッチの首を切り飛ばすその刹那、ウイッチの姿が魔力と共に忽然と消え、完全に姿が見えなくなった。


「!?消えた!?」


「いや…魔力ごと消えている、という事は…」


地面に落下した俺の元へ、ソラナは一度着地した。


「どこに消えたの!?魔力ごと消えたようだけど…」


「あれだけの魔力、そうすぐに隠せるとは思えない、だから恐らくは…」


その時、遠くから「おい!」と言う声が聞こえ、段々とこちらへ近づいてきた。


セルセさんの声だ。


「おい、何があった?さっきまで近くに感じた膨大な魔力が突然消えたようだけど」


「セルセさーん!!!」


更に後ろから、主に魔力の探知を担当していた1人の戦士がセルセさんにある事を報告しに来た。


「どうした」


「報告します!先ほどこの辺りで感知されたウイッチと思われる戦士の魔力が突如この森から消失、また、それとほぼ同時にニアレン森林にいる全てのフレミング、及びグリスの戦士の殺害、及び捕獲を完了。これにより、我々サイン・ナスカン・ロムレス連合軍が、ニアレン森林の制圧を成功しました!!!!!」


その戦士ははっきりとそう言った。


ニアレン森林の、制圧に成功したと、


「ぅ…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


それを聞いた全ての戦士たちが、声を荒げ、全てを吐き出すかのように歓声を叫んだ。


魂の叫びとでもいうように…


だがその全員が、心からこの勝利を祝えたわけではなかった。


ここに来るまでに、どれだけ多くの人、どれだけの大切な人が自分から失なくなっていったのか…その悲しみは、想像の内に納める事はできないだろう。


それでも、叫ばずにはいられなかった、反射的に、勝利を祝ってしまったのだ。


この戦いに勝利した、それがどういう意味を持っていたとしても、その事実を喜ばざるを得なかったのだ。


俺も、その中の1人だった。


叫ぶ事はなかったが、心から、勝利を迎えられた事を喜んでいた。


勿論、マイロとクラウドの仇を打つことはできていない、それは腹が引き裂かれるほど悔しいけど…


でも今、俺は生きていた。


間違いなく、確かに生きている。


クラウドが望んだ事を、確かに成し遂げる事ができたんだ。


優しく見下ろす陽光が、勝利に歓喜する俺たちを、眩しいくらいに照らし上げていた。

終戦の時は近づいていく…


評価・ブクマ、よろしくお願いします!

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