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108話 変わらない結果

「よしやるかー、スキル、[時間停止]」

俺の目の前に、ウイッチが現れた。


これに関してはソラナ様々だな、お陰で…奴を殺せる状況になった。


「お前が…マイロを殺した奴か…」


「は?マイロ?そんな奴は知らないけど、確かに前にここに来た戦士は3人殺したね、男2人と、女1人」


それを聞き、やはり俺は感情をもう抑えきれなくなった。


「うるさい黙れ…必ず殺す!!!!!」


そう言って、俺が感情のままに叫び挙げたと同時に、また、俺の体から薄紫の魔力が溢れ出し、瞳の色もカメリア色に変化した。


それを見て、当然ソラナもクラウドもウイッチも、誰もが驚愕を隠せなかった。


「!!!???アレス!?なに…それは…」


「これは…」


その時、突然クラウドは頭を抱えながら、少し地面へ膝が落ちた。


「?」


それを見たウイッチは、驚きながらもこの森にいるセルセの事を考えた。


「へー、面白そうな事してくれんじゃん、でも今お前には用ないの、じゃあねバイバイ」


ウイッチはそう言ってさっさと飛び去ろうとした刹那、


「逃すと思うなよ貴様…」


俺は超越光速を発動し、ウイッチの目の前まで近づいて剣を振った。


だがウイッチには直前にエアズシールドを発動して防がれた。


その時、斬撃がエアズシールドに威力が軽減されていくような気がした。


そしてすぐに、ウイッチはタイフーンを使って反撃に出た。


アレスはこれが直撃する前に、超越光速を発動して避けた。


「ちっ、めんどくせーな、早くセルセを対処しないといけないってのに…」


だがウイッチはアレスの様子を見て、自身の加虐心に従う事にした。


「しょうがない、すぐに終わらせる、ちょっとだけ遊んでやるよ」


俺はその言葉を聞き終える前に、もう一度超越光速で切り掛かった。


ウイッチはそれをギリギリのところで避けると、森の奥へと移動していった。


俺もすぐにその後を追いかけた。


「ったくあいつ勝手な事してくれるわね、クラウド君、すぐに追うわよ!」


ソラナは改めて両手に持つ剣を構え、2人を追おうとした。


「そうっすね…追いましょう」


だが、クラウドは普段よりやや苦しそうにそう言った。


「?どうしたの?クラウド君?」


ソラナは気になってクラウドの方を振り向いた。


すると、クラウドは頭に手を当て、やや苦しそうにしながら「どうしたんすか…?追いましょう」と言った。


「どうしたの?クラウド君」


「いえ…ただ、さっきアレスさんから出ていた魔力…あれ、なんか変じゃありませんでした…?」


「…確かにそうね、あれは、前の凶暴化事件の時にモンスターが放っていた魔力に似ていた、どうしてあいつがあんな事を…」


「それに…あの魔力を浴びてから、なんだか体が変なんです…なんていうか、体が勝手に暴走しようとしている…というか」


「それがさっきからクラウド君が苦しんでる理由なの?」


「たぶん…そうです、でも大丈夫です…」


クラウドはゆっくりと起き上がりながらこう言った。


「いけます、行きましょう」


「…そう、分かった」


ソラナはそう言って、クラウドと共にアレスを追いかけた。


その道中、クラウドは何度も思った、今は戦争中だ、自分がこんな風に倒れている余裕なんてないと。


自分が、必ずソラナを護る…絶対に、と。



その頃、俺はウイッチと何度も空中でぶつかり合っていた。


だが、俺がどれだけ剣を振ってもそれが奴に当たる事はなく、(ことご)くすべて避けられていた。


「ちっ、クソが!」


「あんた、この前来た戦士の友達か何かでしょ?いいねぇ〜暑苦しくて、意味無いのにね」


「黙れ!」


俺は今度こそと、地面を蹴り上げて奴に急接近し剣で切り掛かったが、箒で更に上空に移動させられて避けられた。


「まだだ!」


それで諦めるはずがないと俺は超越光速でウイッチの目の前まで移動し切り掛かったがこれもギリギリのところで避けられ、そのまま火炎放射を発動させられた。


炎が勢いよくこちらへ向かってくる。


「っ、」


俺は超越光速を使ってそれを避け、一度地面に着地した。


「はぁはぁ」


超越光速を連続使用したせいで、俺の体にかなりの疲労と負担が蓄積してきている。


「アハハハハ、必死だねあんた」


「!!!」


ウイッチが高所から高らかに煽ってきた。


「分かってるよ、正攻法じゃあたしにどうやっても勝てないから、その高速で移動するスキルを多発してるんでしょう?でもその様子じゃ、あれを使うのにかなりの体力を使う感じかな?哀れだねぇ、そんな事してもあたしには勝てないのにさ、アハハハハハハハハハ」


ウイッチは更に箒に乗って上昇しながら、甲高く笑った。


「っ、テメェ!!!そうやって嘲笑うように、マイロも殺したのか!!」


「当たり前でしょ?戦場で人を殺すのに意味なんて必要ないのなら、せめて嘲笑した方が楽しめるってものよ」


「んだとっ……!!」


その時、俺の眼にウイッチよりも高く飛び上がり、木を矢の形にして弓から射ち放とうとしている戦士が見えた。


クラウドだ。


「これっでも…喰らぇ」


クラウドは弦を引き絞り、文字どおりの木の矢を射った。


「今だ、状態変化」


ウイッチはそれに気づいたが、僅かに遅かった。


既にクラウドが放った木の矢が彼女にまで迫っていた、そして、クラウドが状態変化を発動し、木を元の大きさに戻した。


巨大な木が、矢となってウイッチに接近してきている。


「ちっ、ダルい」


ウイッチはすぐに火炎放射を発動して木を焼き払おうした。


それは間に合ってしまい、更にクラウドが放った木は僅かに軌道がズレていた為中心を焼かれ2つになった木はそのまま地面へと落下していった。


「あーホントダルい、急がなきゃいけないのに」


「そう、忙しいのね。なら…今楽にしてあげるわよ!!!」


そう声が聞こえた直後、クラウドが影で隠していたソラナが見えた。


浮遊でこの高さまで上昇していたソラナはここでスキルを解除して落下し、真下にいるウイッチに切り掛かった。


「次から次へと!!」


ウイッチはこれを避け、一度地面に着地した……が、僅かに頬を傷つけられた。


「ちっ、、、、、」


ソラナとクラウドも俺の近くへ着地した。


それとほぼ同時に、クラウドが一度ふらついた。


「!!クラウド君ホントに大丈夫!?」


「だから大丈夫ですって、すみません…さっきから手が半ば勝手に動いて、それで狙いが…いえ、言い訳ですね、自分が矢を外したせいです、すみません」


「気にしないで、大丈夫、勝てるよ」


ソラナとクラウドも、睨みつけるようにウイッチの方を見た。


「今のはガチで危なかったわ」


ウイッチはヒールアレイで頬の傷を再生した。


「ホントつくづくダルいわね」


また、ウイッチがぶつぶつと愚痴を垂らし始めた。


その今がチャンスだ、


この魔力が漏れ出ている状態は、殺意が思うように抑えられなくなる、それでもそれなりに奴を観察していて分かった事は、奴は愚痴を溢している間はほんの僅かだが集中力が下がる。


(ここで何か大きな行動を起こせば、奴はそこに気を取られる可能性が高い…)


そうやってウイッチを殺す方法を考えれば考えるほど、俺の殺意は膨張していった。


その殺意に応えるように、溢れ出ていた魔力から2体のリザレインが生まれた。


その異様な光景に、俺以外の誰もが驚いていたが、俺はウイッチが驚愕している内を利用し、迷わずリザレイン2体を向かわせた。


「ちっ、まじホントダルい」


ウイッチは[エレキショット]という電気を放つアビリティでその2体を一撃で処理した。


           キン


それと同時に、俺は超越光速を使い、その後すぐにソラナ達の方へと戻った。


「はぁはぁはぁ」


「何したの…?あんた」


「ようやくこれをする…隙ができた」


          パーン


その瞬間、ソラナの右腕が花火のように切り飛んだ。


そう、アレスは超越光速でウイッチの右腕を斬ったのだ。


「ぐっ…っ、、、」


ウイッチはよろけ、切断された右腕を必死に抑えている、だが切断面から血が滝のように流れ出て、止まる気配はなかった。


「これで更に隙ができたはず、もう一度超越光速を使い、次は貴様の首を切り飛ばしてやる…!!!」


ウイッチは苦しみながら、青ざめた顔で俺の方を見てた。


「なるほど、あんたちょっとはやるじゃん、テオが若干警戒してただけあるわ」


ウイッチはそう言った直後に、一瞬で、切断された右腕を完璧に蘇生させた。


「「「!!!???」」」


それを見て、3人とも、言葉が一切出なかった、あり得ないものを見せられたからだ。


悪魔でもあり得ないような、異常な再生速度だ。


それに唖然としている俺たちに、ウイッチはまた煽るようにこう言ってきた。


「どうしたの?w別に大した事はしてないよ、とにかく大量の魔力を使って、右腕へヒールアレイを発動させただけ、切断された右腕が一瞬で再生するくらいのね、アハハハハ」


「何言ってるの…?そんな魔力、いくらなんでも引き出せるはずが…さっきまでの戦いで魔力もある程度消費しているわけだし…」


ソラナがか細い声で聞いた。


「それがあたしのスキルってワケ」


先程の光景が脳に焼きついて、ウイッチの発言一つ一つに、恐怖のようなものをのしかかられているように感じる。


「あたしのスキル、[ゴモラ]。これのお陰でどれだけ多く魔力を使っても自動で回復してくれんの、しかも魔力が消費されればされるほど回復速度が上がる、だから実質魔力の制限なしにアビリティが使えるってワケよ」


それを聞いて、俺たちは底知れない絶望感に似たものを感じた。アビリティを無制限に打ってくる相手に、どうすれば勝てるのかのイメージが全く湧き出なかった。


でも、だからこそ、少しの光も見えた。


だがそんな俺たちの思考を見透かして言った、ウイッチの次の言葉で、その光も完全に消えた。


「あんたらの考えてる事は分かってるわよ、それだけ強力なスキルなら、代償も大きいって言いたいんでしょ?でもざんねん、このスキルにはね、代償が一切ないの」


「そんな訳ないでしょ!!!」


ソラナが強く反発した。


「代償のないスキルなんて存在しない!何か必ずあるはずよ!」


「そう思いたければ勝手に思えば?でも、今のあたしに弱点なんて存在しないから」


そう言ってウイッチはトリックニードルを発動した。


あれに当たると魔力を回復させると逆に毒を浴びたような状態になるらしい、だから3人バラバラにジャンプして、飛び散るように棘を避けた。


「[テレポート]」


だが、その攻撃が終わると同時に、ウイッチはテレポートを発動してこの場から消えた。


と思えば、俺の目の前にいきなり現れた、かと思えばまた消え、今度はソラナの目の前に現れる。


と思えばまた消え、クラウドの前に現れてまた消えた。


現れては消え、現れては消え、


ウイッチは俺たちを撹乱するようにそれを繰り返した。


「何!?今度は何をする気!?奴が見えない」


「分かりません!!」


何度もウイッチはそれを繰り返した後に、突然俺たちから少し離れた位置で静止した。


「はい、これで1人終わった」


こちらへ振り向いてそう言った言葉の意味が、分からなかった。


「?どういう意味だ…」


「言葉の通りよ、さっきテレポートを使いまくってた時に、ハイド・インスタントを使った、効果はどうせ知ってんでしょ?だから1人確定で死んだ」


ウイッチは箒をクラウドの方に向けながらこう言った。


「球はあんたの方に飛んだから、あんたが確定死ってワケ」


「…………」


クラウドが死ぬ、あまりにも、あっさりとそう告げられた。


「俺が…死ぬ…?」


呆然と立ち尽くすクラウドへ、ソラナは焦るように励ました。


「だ、大丈夫よ!彼奴がアビリティを使っている所を誰も見てない、ただ脅してるだけよ」


「あのアビリティは誰も見てない状況じゃないと使えないけどね」


「っ、、、」


ソラナは言葉が出なくなった。


クラウドは急激な無力感に襲われながら、自分の右手を見た。


(死ぬのか…俺は、このまま…)


その時、クラウドの体が、ゆっくりと浮かび始めた。


情報通りだ…ハイド・インパクトを喰らった者は、上空にゆっくりと浮かび上がり、その後肉体が破裂して死ぬ。


これで確定してしまった、クラウドは、もうすぐ…死ぬ…?


「クラウド!なにしてんの!!早く降りて来て!!!」


ソラナの必死に叫びも虚しく、クラウドはどんどん上空へ浮かび上がっていった。


「ソラナさん、俺…ここで死ぬみたいです、すみません、どこまでも…あなたについて行くって言ったのに」


「なに言ってるの!?クラウド君!!貴方は大丈夫!大丈夫よ!!」


ソラナの瞳から、涙が流れた。


ソラナだって既に理解してしまっている、クラウドはもう、助からない事を。


「ソラナさん、俺…良かったです、あなたの出会えて。戦士養成学校へ入学したものの、自分に自信がなかった俺は、本当に戦士になれるのか、不安で堪りませんでした。もしなれなかったら、何の為にここに来たのか、両親が払ってくれたお金は、一体どうなるのかって…それがとにかく不安でした。そんな時、あなたに出会えたんです」


クラウドは晴れ晴れとした顔で、そう続けた。


ソラナは、溢れ出てくる涙を抑えられなかった、悲しさが、心の全てを支配していた。


「どんな時でもナスカンのため、一切言葉を曲げる事なく自身に満ち溢れた…その言葉、行動、全てが俺に、すごく自身をくれたんです。そして、俺もあんな風になろうと思えた。いつかあんな風になりたいって…そしていつの間にか、あなたと親しくさせていただくようになって、でもそれで、あなたの良い面だけでなく、そうでない一面を見えるようになってきました。思っていたよりも頑固な所とか、自分が認めない相手の事はなにがあっても認めない所とか…でも、どんなあなたの一面を知っても、結局俺の中にあるのは、あなたのようになりたいという、憧れでした。ソラナさん、こんな俺と親しくしてくれて…本当にありがとうございました」


「うんうん…そんな事ない、寧ろ救われてたのはわだし、ずっと、国家様第一みたいな事言い続けて、自分は本当に大丈夫なのかなって、ずっとなってた…本当に私は、自分の意思を持っているのかなって、不安だった…!!!だけど、貴方がいたから…貴方がいてくれたから!私は自分に自身が持てた!貴方が私を慕ってくれていたから、私は、ちゃんとここにいるんだと安心できたの…!!」


泣きながら、ソラナはそう言った。


「そう…ですか、そう言ったいただけると、嬉しいです…。あ、でも、アレスさんとは仲良くしてあげてくださいね、お2人が手を組めば、これ以上のものはないって、思ってますから」


「ずっと…言ってるよね…それ、」


「はは、そうですか?でも、本当にそう思ってますから」


クラウドの体の上昇が止まった、恐らく、もうすぐ破裂して無くなるのだろう。


それは、クラウド本人が一番感じ取っていた。


最後に悔いを残さないように、何か…言うべき言葉はあるだろうか、


クラウドは少し考えてみたが、やはり、あれしか思い浮かばなかった。


「ソラナさん、ありがとうございました、今までずっと…」


「うんうん、こちらこそ…今までありがとう…!!!」


いや違う、これだけではなくて、最期に本当に伝えたいこと。


「ソラナさん!!!」


「!」


ソラナは涙に包まれたその瞳で、もう一度クラウドを見上げた。


「好きです、ソラナさん」


その瞬間、クラウドの身体は巨大な破裂音と共に肉体が飛び散った。


クラウドの血、肉、想いが、全て平らな地面へと、無情に倒れ落ちた。

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