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99話 それならこうすればいいのだろうか

アリエルはゆっくりとその戦士へと歩いていった。

テオはフレミング帝国に帰還後、ひとまずサインではアイラの妨害に遭い、()()()()()()()()()()()()と報告した。


その後、テオは軍病院で身体を診てもらう事になったが特に異常はなかったため、「しばらくは休んでおこう」という医師からの通達をもらい、病院を後にした。


「しばらく休め…か、」


テオは病院から離れた一本道を歩きながら、ふとそう呟いた。


休めと言われても、心が抵抗するのも事実だった。


「俺はβを救いたい、」それが今のテオの本心であるとは分かった。


だが分かったところでどうなるという話だ、実際に彼女をどう助ける?


5年もかけて植え込まれた雑草を、今更完全に除去できるのかという話だ。


確かに、あの時βと接触して、光明は見えた、彼女を救える可能性はあるのかもしれない。


だが可能性があるからと言って、実際に救えるかどうかは別の話だ。


具体的に彼女をどう助かる、何が必要になってくる、


そもそもリフレクションを発動させるために元の彼女の記憶自体は潜在的に残しているんなら、テオのこの思考に反応しても何もおかしくない話だ。


意図してそうしてるんだから、何の対策も立てていないはずがない。奴らも記憶を取り戻されては困るはずだからな。


そもそもβは敵国の戦士だ、テオが助けようとする理由も、ここまで感情を抱き寄せる道理もない。


だが、βは自分から望んでこの戦争にいるわけではない、寧ろ被害者だ。


何の関係もない普通の少女が、国の勝手な思想で勝手に戦士に改造された。


そこに彼女の意思はない、それなのに無理矢理この戦争で戦わされている。


そんな人…救わなくていい理由があるはずがない。


救わないといけない、けど…しかし、


テオは何度も何度も、終わりの来ないほど葛藤した。


その内、そもそも何で自分はここまで悩んでいるのか、分からなくなってきた。


βを救いたいのは、命を懸けて護りたいもののためにその身を捧げ合うこの戦争に、これ以上巻き込ませないようにするため。


決して冒涜があってはならないこの戦いに、不本意に迷い込んでしまったのならそこから出させてあげるため。


けど、本気でβを戦争から解放させてあげようと思えば、それにはフレミングを裏切るしか方法がない。


それこそ、フレミングの兵士達が命を懸けて戦う事を冒涜する事になるのではないか?


それは、本末転倒なんて言葉で済まされる事じゃない、


テオが最も許さない行為だ。


そんな事とっくにわかっているはずなのに、何故自分は悩み続けている?


何故βをそこまで助けようとする?


初めて奴を見た時から、俺はずっと奴を排除しようとしていた。


その感情が助けたいという方向に変わっただけで、何も変化していない。


まるで奴に心を支配されたかのようだ、そんな事はないと思うが…


その時、脳裏に過ったのは、最後に親友、カナリと交わした会話______________________


『お前、どんなに死にかけても絶対逃げないし、それに倒した敵には毎回敬意を込めているよな…あれはなんでなんだ?』


『なんでって…そうだなぁ、戦場にいるって事は…相手も命をかけてるわけだろ?その人にとって大切なものを護る為に…そんな相手を殺めてる訳だから、せめてその覚悟を敬おうとするのは当然の事じゃないかと思ってるだけだけどな…』


分かってる、けどそれとは違う気がする…


「うわー、またやっちまったー」


その時、夕日に照らされながらも木の枝に突っかかってとれなくなった風船の下で泣きそうになっている男の子が目に入った。


テオはそれにゆっくりと近づき、「ちょっと待ってて」と低く優しく声をかけると、バリアを腕状に変化させてそっと風船を枝から引き抜き、「はい」と言って少年に返してあげた。


「わぁ〜サンキュー、そしてよくぞ帰ってきた!我が超快適ティッシュペーパー消臭機能付きeditionよ!」


と言いながらさっさと恐らく自分の家へ帰っていった。


「…………………」


夕日の中に消えていくその少年を見ながら、テオはずっと佇んでいた。


いつの間にか、テオは寝室についていた。


今からもう眠るところだ、結局、今日一日考えてもこの想いが整理される事はなかった。


どうすればいい、本当に俺はどうすれば…


そんな事を考え続けながら、テオの瞳は閉じ、眠りについた。

次回、テオの過去が明らかになる…


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