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世界に名を馳せるまで  作者: niket
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第八話 リザードマンとの戦闘

 ワロウたちの目の前に現れたリザードマンの数は4匹。奇しくも先ほどバルトが告げた同時に相手できる数よりも一匹多い。


「仕方ねえ! 一匹は任せるぞ、ワロウ!」

「おう!気をつけろよ!」


 ワロウたちが話している間に、リザードマン達は完全に姿を現していた。いずれもワロウの胸の高さ辺りまでの高さしかないが、いずれの個体も武器と防具を身にまとっている。


 これがリザードマンの厄介なところだ。身体能力的にはFランクのゴブリンとそこまで大差はないのだが、持っている武器や防具の質がゴブリンよりも高いのだ。


 それには理由がある。ゴブリンは基本的に自分たちで武器を作るということをしない。そこらへんに落ちているこん棒や、死んだ冒険者から追いはぎした武器を使っているのだ。


 当然人の大きさに合わせて作られている武器を彼らが十全に扱えることはまずない。しかも防具に関していえば、人間よりもずっと小さい彼らが使えるようなものはほとんどない、なので、ゴブリンは大して強くないのだ。


 その一方で、リザードマンたちは自分たちで武器や防具を作ることができる。もちろん人間が作ったものと比べれば大分見劣りするのだが、リザードマンはゴブリンと違い自分たちに合わせた武器や防具を作れるというのが大きい。


 なので、例えゴブリンと身体能力がさほど変わらなくてもリザードマンの方が脅威的には上になっているのだ。


 ワロウたちに近づいてきたリザードマンたちはこちらに既に気づいているようだった。盾と剣を油断なく構え、4匹で取り囲むようにして迫ってくる。


「俺がまず仕掛ける。相手が動揺したらそれを狙ってくれ」

「了解だ」


 短い作戦会議の後、バルトが先頭にいたリザードマンに切りかかった。

 その速度は流石Cランク冒険者といったところで、ワロウがまばたきした瞬間には剣の先がリザードマンに迫っていた。

 

 遅まきながら自分に剣が迫っていることに気づいたリザードマンが、何とか防ごうと盾をあげるが、その危機から脱出するためには少しだけ遅かった。

 リザードマンが持ち上げかけた盾の上に当たったバルトの剣は、多少剣筋をそらされたものの、そのままリザードマンの頭へと吸い込まれたのであった。


 勢いの乗ったバルトの一撃はリザードマンの頭を易々と切り裂いた。致命傷だ。

 他のリザードマンたちは呆然とした様子だった。獲物を見つけて追いつめたと思ったら、

次の瞬間には仲間が切り殺されていたのだから当然かもしれない。


 ワロウはその瞬間を見逃さなかった。呆然として隙だらけになっていた近くのリザードマンに切りかかる。流石に先ほどのバルトのように鮮やかには決められず、気を取り戻したリザードマンに盾で守られてしまう。

 

 だが、それだけではなかった。ワロウの一撃を受けたリザードマンは、盾で防いだもののその勢いに押されて少し姿勢を崩したのだ。


(...! やはり前よりも威力が上がってるな)


 以前のワロウだったら、盾で防がれてそれでおしまいだっただろう。だが、今のワロウの一撃なら防がれてでも、相手の姿勢を崩すことができる。それだけの威力があったのだ。

 これは単純に力が上がったというのもあるが、ワロウの剣の技術が上がったということも大きい。


(このまま押し切ってやる...!)


 ワロウは体勢を崩したリザードマン相手に盾で殴りつけて追撃をする。足場が沼地ということもあって、その攻撃に耐えきれず、リザードマンが転倒する。


 転倒したリザードマンは隙だらけだ。当然その隙を逃すはずもなく、ワロウは首元目掛けて剣を振った。その剣筋はワロウの思い描いたようにリザードマンの首まで届き、切り裂いた。


(こんな風にきれいに剣なんて振れなかったんだがな...腕輪様様だぜ)


 ワロウが一匹の相手をしている間にバルトは2匹目をすでに仕留めていた。一匹目が速攻で終わったことを考えても相当な速さだ。そして、取り残された最後の一匹は自分の不利を察して逃げ出そうとした。だが、その判断は遅かった。


 バルトが懐から短剣を取り出すと、それを逃げ出そうと背中を向けたリザードマンに投げつけたのだ。当然後ろを向いているリザードマンにそれを避けるすべはなく、そのまま背中に短剣が突き刺さる。


ギギィッ!!?


 思わず悲鳴を上げて立ち止まってしまったリザードマン。その立ち止まった瞬間を逃さずワロウが切りかかる。ワロウの剣はきれいな弧を描いてリザードマンの首に突き刺さった。


 ワロウの一撃を喰らったリザードマンは突っ伏して動かなくなった。これで、4匹のリザードマンすべてを倒し終わった。


「ふぃー...終わった、か?」


 沼地という足場の悪い中、リザードマンの相手はなかなかの重労働だった。ワロウが一仕事終わったと一息ついていると、バルトがワロウのことを凝視していることに気づいた。


「うん?なんか顔についてるか?」

「あ...いや、違う違う。ちょっと、な」


 いつも割とはっきりものを言う彼にしては珍しく歯切れが悪い。ワロウはさらに彼を問い詰めた。


「なんだよ。その微妙な返事は...」

「いやー、悪い悪い。...ワロウ、お前、剣の修行でもしたのか?」

「剣の修行? なんだ、藪から棒に」

「昔見たお前の剣術と大分違ってたから驚いちまった。強くなったんだな、ワロウ」


 バルトがワロウのことを凝視していた理由はワロウの剣技にあったようだ。確かに数年前のワロウと今のワロウでは強さが全く異なると言っても過言ではない。


 しかもそれがまだ若い冒険者なら成長したとも考えられるが、中年の冒険者がいきなり強くなっていたら驚くのも無理ないだろう。


「ああ...まあ、似たようなことはしてたな」

 

 とはいえ、正直に腕輪の力で強くなりましたと言うわけにもいかない。とりあえずワロウは若干濁すようにしてバルトの質問を誤魔化した。


「ふーん...気になるところだが、あまり追及はしないでおくぜ」

「そうしてくれると助かる」


 基本的に冒険者の奥の手や、修行方法などは暗黙の了解であまり他人にしつこく聞くものではない。ワロウは内心深く聞かれたら困るとヒヤヒヤしていたが、バルトは暗黙の了解に沿って深くまでは聞いてこなかった。


「それで? あんまりここに長くいると血の匂いで余計なモノまでやってきかねないぜ。そのラモサとかいう薬草は見当たらないのか?」

「まあ、そう焦るなって。これだけドウランが生えてりゃ、そこらへんに...」


 ワロウが改めてドウランの茂みの中を覗いてみると、そこには小さな黄色い花を咲かせた背の低い植物がちらほらと見えた。間違いない。あれがラモサだ。


「あったぞ。あの黄色い花の奴だ」

「ああ、あれか...あれなら俺でもわかりそうだ。採取、手伝うか?」


 バルドが手伝うと申し出てくれたが、薬を作るのにそこまで量はいらない。ワロウ一人で十分だ。


「いや、そんなに量はいらねえから大丈夫だ。任せておけ」

「了解だ。じゃ、採取はワロウ先生にお任せするぜ」

 

 そういうとバルトは辺りの警戒をし始めた。血の匂いで他の魔物が寄ってこないか見てくれているようだ。ワロウはその間にさっさとラモサの回収を進めた。ラモサの採取は特に注意することは無い。普通に根っこごと採取するだけでよい。


 ワロウが必要な分のラモサを集めるのにはそう時間はかからなかった。ラモサを採取し終わればここにいる理由はない。ワロウとバルトはすぐにその場を立ち去り町へと帰還したのであった。

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