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魔物の討伐で思ったこと

家に戻る道中で、ロアンヌさん、ココ、シルバの3人を連れて、

ハイパージャンプのスキルで一緒に跳べるかなぁと危険な事を

考えていた俺だったけど、


 「途中で薬草採取もしていきたいにゃ。

  ワイルドウルフのいる辺りには

  高価な薬草があるのにゃ。」


ココの提案を受けて歩いて登っていく事にした。


ガルダホルンの街から南の大きな街や王都に向かう道は

馬車が頻繁に通るから轍があるけど、

草がほとんど生えていない見晴らしのいい道に整備されている。


反面、北の世界の果てと呼ばれる山の方に向かう道は

果樹園までは見渡しがよく開けているけど、

その分岐の道から先は、草が伸び放題の荒れた山道のまま

放置されているみたいだ。


何でも、このガルダホルンの街の先の山に見えない壁があって、

その先には進む事ができないから、大陸の果て、

世界の果てとか言われているそうだ。


区切られた世界だから狭いのかなと思ったら、

南の端の街まで移動するのに早くても半年くらいかかるそうだ。


前にココから聞いた話だと、この世界の時間は

水時計のようなもので計っていて、

神殿の人達が鐘を鳴らして刻を伝えてくれているそうだ。

何故か十二支で示す延喜法が大陸中で使われていて、

確かにほぼ2時間ごとに鐘が鳴っていた。


このファンタジー感ある街で、

 酉の鐘が鳴ったな、晩飯にするか 

という声を耳にすると、スイスの山奥のような街並みなのに

江戸時代の時代劇のような雰囲気と混ざった感じで、

何だか凄く微妙だった。


一月は月の満ち欠けで決めている太陰暦で、

今夜は満月なので7月の15日だそうだ。

元の世界は6月なんだけど、ズレてるみたいだ。

まぁ、異世界だしいいのかも。気にする必要もないかな。


そんなことを思いながら歩いていると、

日が高くなって暑くなってきたのもあって

喉が渇いてきた。


しまった、ペットボトルの水とかお茶とか

スポーツドリンクとか全部家に置いてあるままだった。

シルバが少し口を開けて、ヘッヘッと息をしていた。

もうちょっと行ったら小川があったけど、

あれ飲んで大丈夫かな?しくじったなぁと反省していると、

目の前にプルプルとした水の玉のようなものが浮かんでいた。


 (ピロン

  聖水創造のスキルを獲得しました。)


また便利なスキルを、・・って、聖水って!

確かに飲んでも大丈夫で、とっても衛生的な水だと思うけど、

そこまでのレベルの水でなくていいと思うんだけど。

まぁ、いいかな、有り難く頂こう。


あれっ?

ロアンヌさんとココが、俺の目の前で

ふわふわ浮いている水の玉を見て硬直している。

シルバはキラキラした目で見つめながら凄く尻尾を振っている。

よし、よし、今飲ませてやるからな。

何か受け止める器無いかなと思っていたら、


 「「カケル(君)!

   魔法も使えるの(にゃ)!?」」


と二人がハモって聞いてきた。


 「いや、魔法じゃやなくて聖水創造ってスキルみたい。

  何か受け止める器とか持ってないかな?」


 「「そんなスキル聞いた事ない(にゃ;わ)」」 


いや、そんなこと言われても今ここにあるし。


ココが背負っていたリュックに似た鞄から

水包っていう柔らかい素材の水入れを、

まだ予備があるからあげるにゃ、

と言って渡してくれた。

サンキュー、ココ。


ココは出会った時から何だか話しやすいし

見た目も可愛いから、いい印象しかないな。

初めていい友達に出会えた気がする。

出会いに感謝だな。



俺は目の前で浮かんだままの水の玉を見ながら、

細くなって水包の口に入るといいなと思っていたら、

水の玉が細長い槍のようになって、入っていった。

これも便利なスキルだな。

何故いつもいいタイミングで獲得できるのか、

まったく分からないけど、

 スキルをくれてありがとう

と心の中で感謝した。



ごくごくと美味しそうに水を飲んだシルバは、

落ち着いたのか普通の呼吸になっていた。

俺も一口もらったけど、少し熱めの飲み物を飲んだ時のように

じわじわと胃に染みて広がっていくような暖かさを感じる水だった。

水だよな?


ロアンヌさんとココも飲んでみたいと手持ちの水包を出してきたので、

聖水創造のスキルで水の玉を出して、槍状にして入れてあげた。

二人とも美味しいと言って喜んでくれたので、

やっぱりいい水なんだなとちょっと安心した。



途中で薬草を刈り取っていると、

シルバが嫌な匂いがすると言ってきた。

探知のスキルで周りを調べたら、

右手横の奥の方にワイルドウルフの群れがいるのがわかった。


カイルさんの話では、

シルバは猟犬種の犬人族らしくて鼻がとてもいいそうだ。

だから、食べ物の匂いを探り当てられて、

今まで生き延びてこれたようだ。

これからは俺と一緒にのんびりと過ごして

食べたいものだけ食べて生きていけるようにしてあげようと

自分の事もまともに出来ていない感じの俺なのに、

ちょっと偉そうなことを思ってしまった。


 「よく分かったな、シルバ。えらいぞ。


  ココ、そっちの奥の方に

  ワイルドウルフの群れがいるみたいだ。


  その辺で切り上げて先を急ごうか。」


 「わかったにゃ。」


 「あら、討伐すればいいんじゃないかしら?」


 「あー、それなんだけど、

  俺ちょっと思った事があるんだけど。


  多分なんだけど、

  ワイルドカリブーが増えてきたから、

  それを襲って食べるワイルドウルフが増えてるんだと思う。

  逆にワイルドウルフがワイルドカリブーの数を減らしたら、

  彼らはまた他の獲物を求めて移動すると思うから、

  本当に討伐するのはワイルドカリブーだと思うんだけど。


  だから、ワイルドウルフは別の見方したら協力関係にあるから

  彼らの数は減らさない方がいいと思うんだけど。」


 「なるほどね、それはそうかもしれないわね。

  じゃあ、このまま先を急ぎましょうか。」


 「うん、ココもカケルの考えに賛成にゃ。

  討伐する時に怪我をするのも嫌なのにゃ。

  避けられるなら、避けたいにゃ。」


俺たちはそれから静かに山を登っていく事にした。

山っていうより、なだらかな丘を登る感じかな。

標高は元の世界と同じなら500mくらいかな。



丘がさらに緩やかになってきたから、

そろそろあの温かい壁に当たってしまう。

右手はシルバを片手で抱いたロアンヌさんと手を繋ぎ、

左手でココと手を繋いで、ゆっくりと歩いていくと、

フワッとしたいつもの感覚の壁を越えて、

俺たち全員は家の見える草原に出られた。


 「あれがカケルの家にゃ?

  変わった形しているにゃ。」


ココとシルバが興奮気味だ。

ロアンヌさんはそうでしょうって顔をしている。


・・・あれっ?

家の横に見覚えのある軽自動車が止まってる。

車の横にスーツ姿のお姉さんが佇んでいるのが見えた。

何だか、こっちを見て唖然としているように見えるんだけど。


俺の右手には、ツノのある青い髪に青い瞳のお姉さん、

その腕に立ち耳の銀髪で碧い瞳のわんこ顔の小さな子供、

左手には、褐色の毛並みで金色の瞳の猫耳の女の子を連れている。

俺はというと、肩から草刈機を下げ持って、腰に剣をさして

背中に丸盾を背負った不審者ルック。俺だけダメじゃん!


あーヤバイ、この状況どうしよう。

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