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異世界でも大金が手に入ったんだけど

突然できた山にダガーさんが硬直している。

ロアンヌさんはダガーさんの肩を叩いて蘇生させると、

フレイムオーガの解体をよろしくねと依頼してくれた。


俺には山の選別の補助を頼まれた。

シルバは分かっていないのか、箱の山に登りたそうだった。

おもちゃを買ってあげればよかったな。ごめんよ、シルバ。


箱を順番に開梱して、服や生活用品、

食品と分けて並べ終えた時になって、

手が空いたのかカイルさんが

ひょっこりと顔を出してきた。


 「もう終わっちゃったかな?」


と、まるで待っていたかのような絶妙なタイミングだった。


カイルのものもあるから後で手伝いにきてねと

ロアンヌさんは声をかけていたそうだ。


ロアンヌさんが、何故かニコニコ顔で、

防刃スーツを手渡して着てみるように頼んでいた。

俺の分も見つけていたので、カイルさんと一緒に

奥の部屋まで着替えに行った。


 「こんな小さいの入らないよ。」

 

 「あ、こうやって引っ張ると伸びるので、

  伸ばして着る服です。

  こんな感じです。」


着てみせると、なるほどと言いながら

カイルさんは意外と筋肉質な上半身に着込んでくれた。


 「いいね。 

  何だか動きやすくなった気がするよ。」


 「実際、疲労軽減効果もあるそうです。

  刃物で切られにくくなるんです。」


 「へぇー、でも試したくはないよ。

  って、これどうやって脱ぐんだろ?」


 「あ、先にロアンヌさんに見せてあげてくだい。」


 「いやいや、このままの格好で出ていったら、

  今日が僕の命日になっちゃうよ。

  上着を羽織っていくよ。」


確かに、そんなアミアミの格好で外に出たらやばいよな。

その姿がとっても似合うアーティストなら知ってるけど。


でも、カイルさんのその気遣いは無意味だった。

ロアンヌさんのところに行ったら、いい笑顔のままで、


 「さっき一瞬覗いて逃げたわね?一度切らせて!」


と言って、双剣をいつの間にか抜いて

両手に持ってカイルさんに迫っていった。


解体場の中で凄く危ない絵面の追いかけっこになっていた。

いや、一度切って、もしものことがあったら、

本当に今日がカイルさんの命日になるから

シャレにならないんだけど。


ロアンヌさん達がそんなことをして遊んでいるのを

横目で見ながら、ダガーさんはフレイムオーガの解体作業を

黙々と進めて完了したみたいだ。


 「ふぅー、やっと終わったぜ!

  ロアンヌ、すごい大物を討伐したな!

  魔石なんてこんなにでかいぞ。

  見てみろ。」


ワイルドウルフの魔石はピンポン玉サイズだったけど、

ダガーさんが手に持っているのはメロンサイズだった。


 「あらすごいわね。

  ダガー、それはカケル君が一人で討伐したのよ。

  見てわかるでしょう。

  しかも、剣の刺し傷が一箇所だけ。

  一撃だったのよ。

  将来が楽しみな我がギルドの新鋭薬草士は

  剣の腕もすごいのよ。」


 「マジかよ。

  確かに、ロアンヌの双剣の切り口じゃねえな。

  坊主、やるじゃねえか。

  この魔石がありゃあ、百年は遊んで暮らせるぜ。」


 「あー、でもそれはロアンヌさんと山分けにします。

  一人だったらきっと怖くて逃げ出していましたので。

  ロアンヌさんがいてくれたから

  討伐できたようなものなんです。」


 「そうかい、坊主、

  いや、もう一端のにいちゃんだな、よく言った!

  よく分かってるじゃねぇか。

  で、後の肉とかはどうすんだ?

  持って帰るか、ギルドに納品するか、

  量で分けて選んだりもできるぜ。」


 「あ、この肉って食べられるんですか?」


 「ああ、こいつはこう見えて草食でな。

  肉に臭みがなくて美味いんだ。」


 「じゃあ、おすすめの部位を一ブロック持って帰ります。

  残りは納品にします。」


 「そうかい、そりゃあ有難い。

  今日は焼肉食って、娼館でも行くか?」


 「ちょっと、ダガー!

  カケル君に変な遊び教えないでよね。

  それと、カケル君、

  山分けはありえないわよ。


  あなたの力で討伐したのだから、

  自分を褒めてあげる意味でも、

  自分のために使いなさい。

  いいわね?」


しょ、娼館。。あるんだ。いや、別に行きたいとか思わないけど、

ちょっとだけ見たいなとか思う気持ちが少しあるけど・・・

無理だな、想像するだけでヘタレた。

ロアンヌさんには山分けを断られたけど、

何かの形で今度返そうと思った。

とりあえず、フレイムオーガの肉は亜空間収納に入れておいた。



その後、ロアンヌさんとカイルさんで手分けして

上の階へ荷物を運ぶからと、俺は解放される事になった。

薬草と丸薬は預けておいて、帰る時に受付によって

ギルドカードに入金してもらえる事になった。


別れ際に、ロアンヌさんにタブレットPCと

モバイルバッテリーを渡した。

起動すると、すぐに通販サイトのカタログが

見れるようにしておいた。

買い物カートに欲しいものを入れておけば、

家に戻った時にネットに繋がった瞬間に発注できるから。

ここでも繋がれば便利なんだけどねと思いながら話したら、


 (ピロン

  異世界通信のスキルを獲得しました。)


うん、またいいタイミングでスキルを頂きました。

このスキルを使うと、俺の持っているデバイスなら

元の世界のネットに通信可能になるそうだ。

確かに、圏外だったスマホもアンテナ全力で立ってるし、

タブレットも繋がった。



とりあえず、シルバを連れ立って、

ギルド前で待っていてくれたココと

串焼きを食べにいく事にした。


うん、今日も串焼きがうまい。

これ元の世界だと2千円くらいする事になるのか、

味わって食べよう。

柔らかい牛肉って感じでジューシーだ。

うん、これも亜空間収納にこっそり入れて持って帰ろう。

追加で10本ほど買って、リュックに入れるふりをして

白い靄の中に隠した。


今日のココは昨日より嬉しそうだ。

何でも銀貨8枚分稼げたかららしい。

ココは今は安宿に寝泊まりしているそうだ。

ちょっと綺麗な宿に替わろうか悩んでいるそうだ。


昨日はロアンヌさんが俺の家に泊まっていたことを聞くと

ココも俺の家に行ってみたいと言い出した。


 「じゃ、これから一旦ギルドに寄ってから帰るから、

  一緒に来る?」


 「いいのかにゃ?嬉しいにゃ!」


不安そうな顔をするシルバには、

当然シルバもだよって言うと

凄く嬉しそうだった。

そうだな、シルバは俺の家族みたいな存在だよな。

何だか、人が増えるのが少し楽しくなってきた。

みんな獣人だけど。。



ギルドの受付に行くと、ニコニコ顔のロアンヌさんが

何故か双剣を装備して、タブレットを手に待っていた。


 「カケル君、今日もお邪魔していいかな?

  明日も私の荷物が届く事だし、護衛兼ねて

  一緒に行っていいかしら?」


いや、もう来る気満々ですよね、それ。

しかも、明後日も荷物来る事になりますよね?

いいですよ、というと受付カウンターの中から

いいなーというカイルさんの呟きが聞こえた。


 「カケル君、ほら、ギルドカードかして!

  はい、カイルもカードに早く入金して。」


はいはいとカイルさんが口を尖らせながら、

明日は僕も連れて行ってよと頼まれた。



受付の横に設置されているギルドカード内の

残金確認ボードで中を見て、びっくりしたんだ。

白金貨200枚と金貨が10枚増えてたんだ。


換金のスキル経由で金貨が28万円だったから、

白金貨はその10倍の280万円だとすると・・

あれ?俺こっちの世界でも大金持ちになったんだけど。


うーん、もうこっちに住んだらいいのかな?

いや、違う、違うぞ!

山奥でゆるゆるとネット通販頼りで

だらっと生きていくんだ。


シルバという家族のような存在が増えて

一人っぼっちの引きこもり生活は無くなったけど、

料理は基本指一本で済ませたい俺には

通販生活だけは譲れない。


スーパーとかで食材買って、自炊するとか、

そういう面倒なことはしたくない。

電気ポットと電子レンジがあるじゃないか!

フライパンとか鍋なんていらない、

置き場すらない。

野菜不足?大丈夫ですよ、野菜たっぷりの

冷凍チャーハンとか、カップ麺があれば。



そうだ、忘れるところだった。

亜空間収納に直していた、あの瓶を

8本ほどカイルさんに渡したんだ。

必要とする方にあげてください、サービスです。と言って。


中身がわからないカイルさんは

?を浮かべた顔で、ありがとう?と言って受け取ってくれた。

ロアンヌさんが何か言いそうだったので、

じゃあ行きましょうと言って

背中を押してギルドから出た。



 「カケル君!

  あれは神殿の神官とかに、存在そのものが知れたら

  大変な事になる代物よ!

  この世界には存在しない薬なのよ?」


 「いいんです。

  きっと必要とする時に、必要な人に使いなさいって

  いう感じでスキルが獲得できている気がするから。

  その副産物の薬もきっと必要な人に

  使って貰うべきなんです。

 

  俺なら面倒な事になりそうになったら、

  あの家に逃げ込んだら追って来れないわけだし。

  あんまり気にしないでください。

  俺も気にしてないので。」


はぁーっ困ったカケル君ね、と

ロアンヌさんは呆れ顔をしながらも、

まぁ、いいわ、確かにその時はその時ねと言って

山に向かって歩きだした。



 「カケルはすごいスキル使えるのに、

  全然いばったりしないのにゃ。

  シルバを引き取ったりして、

  本当に優しい人族なのにゃ。

  珍しいのにゃ。

  人族はココ達のような獣人族を嫌うのに、

  カケルは普通に友達みたいに接してくれるし、

  ココはとっても嬉しいのにゃ。」


 「なんで嫌うんだろう?

  ココなんて、この猫耳がとっても可愛いのにな。」


 「にゃ!」

 「あらあら」


何となく赤くなったココに全く気づかないカケルは

3人を抱えて跳べるのかなあと、ぶっ飛んだ思考をしていた。

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