表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/59

俺の料理は指一本で完了するんだ

実のところ、かなり不安だったけど、

ロアンヌさんと俺は無事にあの温かい壁を越える事ができて、

家の灯りもはっきり見えてホッとした。


元々はこのキャンプサイトの管理棟だったけど、

今は太陽光パネルを載せたり、流水発電機や

工業用の大型蓄電池を設置したりと

原形を留めないくらい手を加えて

今ではすっかり俺好みの家だ。


玄関の扉は指紋認証式だから

鍵は持ち歩く必要がない。(無くして探すこともない)


ロアンヌさんはというと、

家の造りも扉の形や素材も気になったみたいで、

質問がマシンガンのように飛んできて、

人生で初めて質問攻めで死ぬかと思ったよ。



玄関で靴を脱いで上がってもらうときから、

家の中の電灯も全部センサー式で自動で点灯するので

何もかもが珍しそうだった。


玄関を上がって、左奥にある洗面所で手を洗って、

ついでにすぐ横にあるトイレの説明もした。


自動洗浄だけでなく、トイレットペーパーで感動されると

どう反応していいのか分からなかった。

必死に聞かれても、作り方とか全く知らないし。。


ついでにその奥にあるお風呂の説明もした。

4、5人で入れそうな広さのあるお風呂で、

無駄にお風呂のお湯が必要になるけど、

ここにも工業用サイズの温水タンクを設置してあって、

水は湧き水だからある程度は気兼ねなく使える。

節水を心がけようと思ってる。


お風呂の中のボディソープとシャンプー、リンスの

使い方とかも説明したら、

ロアンヌさんはすぐにでも入りたいと言いだしたけど、

お湯はりする時間がかかるから、と説得して

晩御飯の後にしてもらった。


前の日に掃除は頑張ってしていたから、

軽く流して蓋をして、自動お湯はりをセットして

晩御飯にすることにした。




玄関の右側にあるキッチンに戻って、

ロアンヌさんにはキッチン前のテーブルで

椅子に大人しく座っていてもらう事にした。

ほっとくと色々危なそうだったので。


何となくチャーハンとラーメンが食べたかったから、

ロアンヌさんに簡単なものだけどいいかなって聞いたら、


 「すごいな、カケル君は、料理もできるの?

  もうお嫁さんに欲しいくらいだわ。

  料理をするところを見せてもらっていいかしら?」


 「いや、お嫁さんって。

  料理って言っても俺の料理は指一本で完了なんだ。

  見るところが何もないと思う。」


 「えっ?

  指一本って何?

  それもスキルなの?」


スキルと言われて、説明するのも恥ずかしくて

苦笑いしながら、やって見せてあげる事にした。


まず、冷凍チャーハンを冷蔵庫から取り出して、

電子レンジを指一本で操作して、解凍加熱開始。。。

次に、電気ポットの再沸騰ボタンを押しただけ。。。


へっ?何をしたの?って

顔をしているロアンヌさんの目の前のテーブルの上に、

買い溜めしたカップ麺を並べて、麺の太さとか

味付けとかの違いを説明した。


ロアンヌさんは、麺をこれまでに食べたことがあるけど、

噛み切りにくくて美味しいと思ったことがなかったそうだ。

味付けは味噌を知らないから食べてみたいそうだ。


じゃあということで細麺の味噌ラーメンをお勧めして、

俺はコッテリとした醤油ラーメンを選択した。


お湯が沸騰したので、またも指一本でお湯を注いで、

蓋をして待っている間に、電子レンジが

チンといい音といい匂いを立てた。

お皿に取り分けて、ペットボトルのお茶を

冷蔵庫から出して並べて、待ち時間が来たので

ラーメンにスープ類を入れて軽く混ぜたら、

俺の料理は完了。

うん、俺的にはこれでも料理した、です。。


 「もう何と言えばいいか分からないわ。

  でも、とっても美味しそうな香りがしていて

  食欲をそそるわね。」


電子レンジも電気ポットもこのカップ麺も

全部不思議なものだそうだ。

ロアンヌさんは、お箸が使えないので

コンビニで貰って大量に取り置きしてある、

先割れスプーンと普通のスプーンを渡して

食べてもらう事にした。


 「いただきます。」


?という顔をするロアンヌさんに

俺の世界、国かな?の

食べる前にいただきます、食べ終えたらごちそうさまの

作法について話したら、それはいいわねと言って、

ロアンヌさんもいただきますと言って一緒に食べ始めた。


結果、チャーハンもカップ麺も絶賛され過ぎた。

特にカップ麺は、美味しくて食べやすいから

長期間の討伐や遠征の携帯食にいいかもと

目を輝かせておられました。

いや、だから何度聞かれても作り方とか知らないし。。。


食事の後に一緒にごちそうさまをして、

食器類を軽く洗って、必要なもの、欲しいものを

ネット通販で購入してみる事にした。




ロアンヌさんと肩が触れる距離で横に並んで座って、

テーブル横に立てかけて充電していたタブレットPCを起動して

いつもの通販サイトに入った。


カップ麺は箱売りしているのもあるから、

それを何種類か購入カートに保存して、

下着と長袖の服も替えが欲しくなったので

何着か頼んだ時に、ロアンヌさんが

ふと思い詰めたように話しかけてきた。


 「わたしも買ってみたいものがあるのだけれど、

  銀貨ではダメかしら?」


あー、銀貨とか金貨が日本円に換金できれば価値観も

わかりやすくなっていのになぁと思いながら、

銀貨一枚で一万円くらいかなぁとか思ったら、


 (ピロン

  両替(円)のスキルを獲得しました。)


えっ?

こっちの世界でもスキル獲得できるんだ?

このカッコの円はどういう意味だろう?

ステータス画面内の両替(円)をタップして・・・

いや、こっちの世界でもステータス見れるんだ。。


 両替(円)

 異世界の通貨を日本円に両替できる。

 ギルドカード内からネットバンクへ振り込みされる。

 同一名義人に限る。

 換金レートは時価となる。


あ、これはロアンヌさんのネットバンクの口座を

作ったらいけるかもしれない。


 「ロアンヌさん、

  こっちの世界のギルドカードみたいなのを作ったら

  今獲得した両替ってスキルで何とかなるかも。


  このタブレット使って、すぐに作れるから作ろうか?

  そうしたら、大きさと重さに限定があるけど

  ロアンヌさんのお金で生活用品から服とか

  色々なものが買えるようになるよ。」


 「お願いできるかしら!

  わたしも両替のスキルが獲得できたみたいだから、

  自分で換金できそうだわ。


  何だかカケル君と一緒にいると

  スキルがたくさん増えて楽しいわ。」


同じスキルを共有獲得できたロアンヌさんが

ネットバンク口座の作成を食い気味にお願いしてきた。

タブレットPC経由で俺の口座を信用条件(親代わり)にして

子供扱い(月100万円までの使用制限)であっさりと作れたよ。。

いいのかな、このセキュリティ・・。



まず、先に俺の口座に入るか試す事にした、

いや、やってみたくて仕方なかったからだけど。

ギルドカードを手に持って、金貨と銀貨各一枚と思いながら、


 (両替)


と念じたら、銀貨は2万2千円、金貨は28万8千円と

浮かんできた。


 (鞍馬 翔のネットバンクに振り込みますか?)


ハイと念じて、数秒待っていると俺の口座に31万円が

無事に振り込まれたけど、振込先名が

 ガルダホルンボウケンシャギルド になっていて

少しおかしかった。

この世界には絶対ないと思うんだけど。。

ギルドカードの中からは、金貨と銀貨が一枚ずつ消えていた。



次に、ロアンヌさんが作りたての自分の口座に

スキルを使って振り込んでみることになった。


 「思い切って多めに買うから、

  金貨10枚分でやってみるわ。

  ・・・・・

  振り込んだわ。

  どうかしら?」


タブレットPCで確認すると、ちゃんと

ロアンヌさんの口座に288万円が入っていた。

無事に換金できてハイタッチした。



  この換金が後で問題になるとは

  この時は全く思いもしなかった。



それからお風呂が入るまでの間、

ロアンヌさんは生活用品から服類まで

色々なものを購入していた。

女性用品と下着は特に時間をかけて選んでいたみたい。


途中、下着のサイズのことで測りたいと言い出されたので、

前の管理人さんが置いていった裁縫箱の中に

メジャーを見つけていたから、渡したら、

いそいそと洗面所の方に行って測っていたみたい。


うん、何となく買い過ぎな気がするけど気にしないでおこう。

まさか限度枠の100万円分の買い物する人いないだろうし・・・

いないよな?・・・気にしないでおこう。

一瞬買い物カートにポップアップしている数字が

3桁だった気がするけど気のせいだと思おう。



さらに靴とかリュックのコーナーを一緒に見ていると、

お湯はり完了のアラームが軽やかに鳴ったので、

先にお風呂に入ってもらう事にした。


お風呂に入ってる間に洗濯して

乾燥機をかければすぐに乾くから

隣接して設置してあるコインランドリー仕様の

大型洗濯機と連動する乾燥機の使い方の説明もした。


 「あら、じゃあ乾くまでの間は

  どうすればいいのかしら?

  この椅子で座っていればいいのかしら?

  ふふっ、それもいいわね。」


怪しい笑みを浮かべたロアンヌさんが

乾燥機の前に置いてあるマッサージチェアで

素っ裸でくつろいでいるイケナイ想像をして

鼻血が出そうになった。


 「あ、ごめんなさい、そういうつもりはないから。

  そうだ、俺のまだ着てなくて洗っただけの

  スウェットがあるからそれを着てて。」


慌てて、昨日のうちに洗ってたたんでいた

スウェットの上下を渡した。


 「あら、これがスウェットていう服なのね。

  柔らかい素材ね。いいわね、これも。

  どうかしら、これは買わせてもらえるかしら?」


 「あーそれは安いのだから、

  串焼き一本の方が高いくらいかも。」


 「じゃあ、串焼き一本でいいかしら?」


商談(?)が成立して、ロアンヌさんには

先にお風呂に入ってもらった。

俺はキッチンのテーブルに戻って、

スマホから通販サイトに入った。



まず、追加でタッチパネルPCをもう一台と

太陽光でも充電できるモバイルバッテリー、

園芸用の革手袋、枝切り鋏と、

薬草を入れられるようなポーチも

大きいのがあったので購入して、

護身用の防刃ウェアもあったから

購入する事にした。

伸縮性があるらしくて

SMLの大雑把なサイズだったけど。


 これ全部即納対応できて、明日の朝一で届くらしいから、

 ちょうどいいと、この時はそう思った。




そうしていると、ロアンヌさんが濡れた髪を

アップにまとめ上げたスウェット姿で現れた・・・。


ものすごくドキドキしてすぐに俯いてしまった。

アップにしたうなじだけじゃなくて、

ロアンヌさんの上半身にはスウェットがピッタリ張り付いて

胸の形がはっきり分かってしまう状態だったから。


思わず、新しいバスタオルを渡して

首から下げてもらうようにお願いしたら、

別にこれくらい気にしなくていいのにと言っていたけど、

俺には刺激が強すぎた。

しばらく椅子から立ち上げれなくなったのは内緒。




ロアンヌさんに防刃ウェアの話をしたら

カイルさんのも一緒に買う事にしたそうだ。


色々と落ち着いたから、俺はお風呂に入って、

キッチン奥の4畳半の元管理人さんの部屋で眠る事にして、

ロアンヌさんは奥の広間の真ん中に

ゆったりと布団をひいて昔のお殿様のように

寝てもらう事にした。

ロアンヌさんだとお姫様かな。



その夜、ロアンヌさんに両親のこととか、

小さい時のこととか聞かれたからか、

久しぶりに昔の夢を見た気がする。

何となく頭の中であの音がした気がしたけど。

とても長い時間夢を見ていた気がする。

まるで過去に戻ってそこにいたかのように

自分を、今はいない両親を見つめていた気がした。

朝起きると俺の流した涙の跡が残っていたのは内緒。



事件はここからだった。


朝ご飯(冷凍ホットサンドとインスタントコーヒー)を

食べ終えた頃、本当に泣きたくなる事になった。


通販サイトのドローン便が次々と・・・、ええ次々と

途切れる事なく飛来してきて、しばらく唖然となった。

空爆かと思うほどドローンが飛んでたよ。

通販サイトさん、配送業者さんごめんなさい。。


ロアンヌさんと俺はドローン発着場横の

仮設の荷物置き場(ただの草原だけど)にせっせと

箱を移動させては山の形に積み上げていった。


ロアンヌさんの購入分はリアカーで数往復しないと

運びきれないだろうなと思ったほどなんだ。

そう思っていたら、目の前の箱の山が

白い靄の中に吸い込まれるように

全部消えてしまった。


 (ピロン

  亜空間収納のスキルを獲得しました。)


また便利なスキルを獲得できたみたいなんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ