天の火 地の土
ゴォーッ!
灼熱の炎の渦が俺の体を飲み込んだ。
丸焼けにされそうだけど、
一瞬早く不可視の聖域と
火炎耐性のスキルが発動した。
全く向こうが目視できない。
透明の壁の表面を炎が溶かす勢いで
まとわりついている。
困ったな、
下に降りたら土龍の硬くて重い攻撃、
このまま上空にいても
火龍の炎の攻撃。
何かいい手ないかな。。
あった!これで行こう。
まずは、火龍のいそうな方向に向かって、
時の牢獄のスキルを使う。
1回目はハズレだな。火の勢いが変わらない。
幸運なことに2回目で当たった。
火の渦が消えて煌めく箱の中で
大口を開けている火龍がいた。
下を見ると、土龍が俺の方を
忌々しそうに見上げている。
でかいトカゲっぽいけど、尻尾が異様に太い。
どう見てもあの尻尾は凶器だな。
土龍の方に向かって、魔道具店で見つけて
買っていた魔石が中に入っている玉を
投げつけた。
顔の前あたりに落ちたくらいのタイミングで、
パァーーーンッ!!
という甲高い音とともに強烈な光が炸裂した。
グギャーっという声をあげて頭を振っている。
今だ。
俺は空中で浮かんでいる位置を補正して、
不可視の聖域の変形を実行した。
上手くできたと思う。
すぐに火龍を時の牢獄から解き放つ。
火龍は俺の気配を辿って、すぐに見つけると
こっちに向かって炎の渦を吐き出してきた。
いいタイミングだ。
炎の渦は俺の周りを取り囲みながら
加速するように俺の後方へ伸びていった。
グギャーっというさっきより大きな叫び声に
俺は作戦の成功を確信した。
声の先に向けてスキルを放つ。
大きめの時の牢獄の中に
たっぷりの聖水を詰め込んであげた。
ギュッと小さめに光の箱を調整して、
そのすぐ外に不可視の聖域を張った。
同時に時の牢獄を解き放つ。
ボンッ!!
といういい音を立てて、聖域の中で
強烈な水蒸気爆発が起こったみたいだ。
同時に聖域をグッと狭くしていく。
予想通り圧縮できるみたいだ。
力一杯圧縮を掛けていく。
(ピロン
土龍を討伐しました。)
振り向いて、火を吐き続ける火龍に向けて
同じく不可視の聖域をかける。
出来る限り小さくしていく。
こっちは二階建ての家くらいの大きさで
止まってしまった。
まぁ、それでも手はある。
この状態で、今度は時の牢獄で取り囲んだ。
同時に不可視の聖域から解放してあげる。
そこに、俺の薙刀の貫通スキルを乗せた
連続突きを繰り返した。
むちゃくちゃ熱い。
フレイムオーガの比じゃない。
火炎耐性のスキルを使っていてこれだと、
なかったら、近づくことも出来ないくらいだ。
中々倒れてくれない。
大きいこともあって中まで
刃が届いていない感じだ。
聖水の長槍を作り出して
思いっきり突き込むことにした。
長さが15mくらいあるけど、
真上から突き下ろすなら問題ない。
少し上に浮かんで加速をつけて
聖水の長槍を突き込んだ。
ググッという感じの手応えがあった。
(ピロン
火龍を討伐しました。
新たなジョブを獲得しました。
ドラゴンバスターのジョブを
選択しますか?)
おおっ!かっこいいジョブだ。
ドラゴンスレイヤーじゃないのけど、
まあいいかな。
(ピロン
ジョブにドラゴンバスターが
追加されました。
剛腕の一撃のスキルが付与されました。)
おおっ、さらに強そうなスキルまで。
女神様いつもありがとうございます。
時の牢獄を解放したと同時に、
大きな魔石と何かが一緒に
落下しそうになっていた。
すぐに亜空間収納に取り込んだ。
火龍の魔石と火炎の皮が増えていた。
下に降りてみると、
土龍が見覚えのあるものになっていた。
急いで走ってきた皆さんが
土龍だったものを見上げて驚いている。
「こ、こんなに大きな金剛石など、
ありえぬ。。」
「わぁ〜〜キラキラしてとっても綺麗〜」
国王陛下は唖然として、聖女隊の皆さんは
歓喜の声をあげていた。
うん、この国のために役立ててもらいたいな。
中には魔石があるみたいだけど、
それもすぐには取れそうにない。
ノブマサ隊長によれば、
このままの状態でこそ価値のあるものだから、
このまま競売にかければ、おそらく数千年は
遊んで暮らせる金額で落札されるだろうとのこと。
この国ではないけど、周りの国には、
買えそうな豪商や貴族がいるそうだ。
国王陛下も、一度王都に凱旋して
飾りたいと仰られていた。
俺は、この場を借りてお願いすることにした。
この土龍の形をしたダイヤモンドで得たお金で
国中の街にいる孤児の子供達や生活に困窮している
人達を支援をする施設とか、その運営費用として
使って欲しいと。
もう俺は今のギルドカードの中のお金だけで
十分贅沢できるから、必要とするところに
使って欲しいとお願いした。
エレノア神殿長含めた聖女隊の方々が
涙を流して感謝してくれた。
この国はもともと資源が豊かな方ではないので、
各地の神殿で保護している子供達は
栄養状態が良いとは言えず、皆ギリギリの
生活をしているのだそうだ。
スラムのようなところもあって
神殿の方では、時々炊き出しの支援も
しているそうだ。
ダンジョンが沸き起こると中から
魔物の魔石や素材が手に入るので、
ダンジョンから得られる資源が
この国を下支えしていると
ノブマサ隊長が教えてくれた。
だから、彼らのような専門の部隊がいるのだそうだ。
エレノア神殿長の顔色があまりよくなかった。
さっき感謝されたあとから何か表情が曇っている。
「何か心配事でもあるんでしょうか?」
そう話しかけると、凄く躊躇いながら
ぽつりぽつりと話し出してくれた。
聞けば、この街にもいるのだけど、
神殿の文官がいて、彼らは皆この国の民ではなく、
正教国という神殿の総本山がある国からの派遣神官で
彼女達聖女とは別の指揮系統で動いているそうだ。
俺の寄付金は下手をすると、彼らに取り上げられ、
さらに俺までもその国に連れて行きかねないそうだ。
逆らうと神に逆らう異教徒の国の烙印を押され、
周辺国から総叩きに会い、酷い時は滅ぼされることも
あるそうだ。
それだけに、俺の存在含めてどうしたものかと
思い悩んでいるとのことだった。
「うん、それなら一つ良い手があります。
子供たちは何歳からであろうと、
一人前になるまでは国の教育機関に
通えるようにしませんか?
そうですね、15歳くらいまでで
どうでしょう?
その間は3食その教育機関で食べられて、
家がない子は専用の宿舎で寝泊まりできて、
家のある子でも、15歳までは
国から生活支援金として各子供宛に支給する。
俺の方ならいつでも向こうの世界に
逃げ帰れますし、何より、あの屋敷の
女神様の聖域にいれば大丈夫だと思うんです。」
国王陛下は少し悩んでいたが、
うむ、子供たちは国の宝であるな、ならばよしと
英断いただけたようだ。
それでもエレノア神殿長の顔色は冴えない。
うん、俺がなんとか頑張るしかないかな。
「うむ、カケルは欲があまりないのじゃな。
それはよくもあるが、悪くもある。
まぁ、我がいうのもなんじゃ。
やりたいようにやるが良いじゃろう。
それよりもまだ討伐が終わっておらんのじゃ。
次はもっとまともに打ち合って
討伐してみせるのじゃ。
なんなら、スキル封じをかけたままで
やりおうてみるのも一興じゃな。」
ありえないです、小天狗師匠。
スキルなしだと秒で消し炭です。
今日が俺の命日になりませんように。
師匠が思い直してくれることを祈るカケルであった。




