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冒険者ギルドに行こう

目の前で可愛い猫耳がぴょこぴょこしていた。

コスプレかなと思ったけど女の子の瞳を見て確信した。

縦長の瞳孔がそこにあったから。


 「いや、殺したくはなかったんだけど。

  この辺りの草を刈り取っていたら襲われて

  避ける時に切ってしまっただけなんだ。」


 「そうなのにゃ。

  避けただけで倒せるのもすごいのにゃ。

  それにしてもすごい音がしているにゃ。」


言われるまで気がつかなったが、

草刈機の丸刃が回りっぱなしだった。

エンジンを止めて肩から吊り下げて

女の子に話しかけてみた。

何となく普通に話せるような気がした。



 「あの、俺はこの辺りに来るのは初めてなんだけど。

  あ、自己紹介まだだった。

  俺の名前は、鞍馬 翔っていうんだ。

  よければこのあたりのことを教えてもらえないかな?」


 「クラマ カケル

  クラマが名前にゃん?」


 「いや、カケルが名前で、クラマは苗字だよ。」


 「苗字?家名持ちにゃん?貴族にゃん?

  すごいにゃん。わたし、ココ。

  こちらこそ仲良くして欲しいにゃん。

  この辺りは獣人族が多く住んでる町にゃん。

  町の案内もしてあげるにゃん。

  出来れば、ワイルドウルフの魔石を

  一つ分けて欲しいにゃん。」


 「それならお安い御用だよ。

  はい、どうぞ。」


 「ありがとうにゃん、じゃあ早速行くにゃん。」


それからココとこの町のことについて

話を聞きながら歩いて行った。


この町、ガルダホルンは、この大陸では最北の町で

早ければもうそろそろ雪が降るそうだ。

俺の身長くらい積もることは珍しくないから、

雪が滑り落ちやすいようにと、

とんがり屋根の家が立ち並んでいるのだそうだ。


町には2千から3千人くらい人がいて、

獣人族の他に、頭に角があるのが特徴の魔族、

色白で耳が細くて長いエルフ族、

身長150cmくらいのココより小柄なドワーフ族と

俺と同じ人族がいるのだそうだ。


この町は獣人族の領主が治めているのだそうだ。

りんごやブドウといった農産物が特産品で

木をかじる鹿系のワイルドカリブーが増えてきていて

討伐に追われているのだそうだ。


ワイルドカリブーが増えてきたのと同時期に

ワイルドウルフも増えてきて

討伐に影響が出ているのだそうだ。


ココは駆け出しの冒険者で

ワイルドウルフの討伐はできないけど、

薬草類の採取は出来るので、

この丘の麓の方で採取をしていたら、

遠吠えが聞こえたので、

こっそり見にきたんだそうだ。


本当は危ないからダメだったそうだ、

町に着いたら麓で出会ったって話で通す事にしたんだ。


歩いている途中で気づいたんだ。

ワイルドウルフの返り血が

そこら中についていることに。


綺麗にならないかなと思ったら、

何かが全身をふわっと舐めるような感じがした。

見ると服や草刈機にもついていた返り血が

綺麗に消えていた。


 (ピロン

  洗浄のスキルを獲得しました。)


また新しいスキルが手に入ったみたいだ。

これは便利だなと思って、ココを見ると

丸く見開いた目でこっちを見つめて、

唖然としていた。


 「にゃ、にゃんにゃ?今のは何なのにゃ?

  返り血が一瞬で綺麗に消えたのにゃん!

  すごいのにゃん!」


よく見ると、ココの服も所々汚れていた。


 「ココの服もやってみようか?

  洗浄ってスキルなんだけど。」


 「うわっ、いいのにゃん?

  ぜひお願いするにゃん!」


よーしと気合を入れて、

一瞬で固まった。。。


 「スキルってどうやって人に使うんだろ?」


 「ほぇ?

  神殿の神官さん達は手をかざして

  何やら念じていたのにゃ。

  同じじゃないのにゃ?」


 「あー実は自分以外に使うの初めてなんだ。

  じゃあ、やってみるね。」


手をかざしてっと、


 (洗浄)


と念じたら、ココがブルっと体を震わせて

クリクリとした目をパチパチとしていた。


 「何か温かい風が舐めるように

  吹いてきた感じにゃ。

  あ、綺麗になってるにゃ。

  ありがとうにゃん。」


 「うまくいったね。

  どういたしまして。」


それからココとスキルについて

話しながら町まで道を下って行った。

この世界では、スキルは神殿でジョブを選んだ時に

一緒に貰えることが多いそうだ。

   

町の入り口には大きな門があって、

両脇に門番の人、ケモ耳の人がいた。

ココが手を振るとお帰りって声をかけてきたんだけど、

俺の方には旅人かい?お疲れさんとだけ話しかけてきて   

特に警戒される事なくすんなり通してもらえた。


それだけで何となくいい感じの町じゃないかなと

思った。


 「ここが冒険者のギルドにゃ。

  未登録でも薬草とか魔石も買取してくれるにゃ。

  登録したら依頼を受けて報酬ももらえるのにゃ。」


高さは20m以上あるんじゃないかと思うような

大きな建物だった。

入り口には扉がなくて10mくらいの高さで

横幅も普通車が2台通れるくらい、5mくらい空いていた。


中には20人以上のケモ耳の人とか、耳が細長い人とか、

ココより背が低いけど恰幅のいい親父さんがいたりした。


ココと一緒に奥のカウンターの前まで歩いて行ったんだけど、

特に誰からも声をかけられたりすることはなかった。

自由そうでいいなと、より一層この町が気に入ってきた。


カウンターには耳の長い男の人?っぽい人と、

額から小さなツノが一本生えている綺麗なお姉さんがいた。

二人の前には4、5人の人がきちんと並んでいた。

ココはお姉さんの方の列に、俺は男の人の方に並んだ。


 「やぁ、見ない顔だね。初めての利用かな?」


 「はい、初めましてカケルと言います。

  買い取りと出来れば冒険者の登録をお願いしたいです。」


 「僕はカイルだよ。

  素材の持ち込みどうもありがとう。

  じゃあ、買い取りのもので、このトレイに乗るくらいのものは

  ここに置いてもらえるかな。

  肉系は裏手の解体場に持っていってもらう事になるけど。

  

  お、魔石と薬草だね。査定する間、この紙にわかる範囲で

  いいから書いてくれるかな。」


手渡された紙には普通に日本語で

氏名年齢出身地とジョブの記入欄があった。

ジョブには、さっきなったばかりの薬草士と書いて提出した。


 「お、珍しいね。人族で薬草士とは。

  そうだ、何か薬も持っていないかな?

  薬も買い取れるよ。」


 「あ、じゃあこの丸薬もお願いします。」


 「これって、もしかして、

  対火炎傷丸薬じゃないのかい?

  助かるよ、今不足してるんだ。

  もっとあると有難いんだけど

  どうだろうか?」


 「ごめんなさい、今手持ちはそれだけなので

  また後で作って持ってきましょうか。」


 「ああ、そんなに急がなくてもいいけど

  明日でも何個か納品してもらえると助かるよ。


  はい、これが君、カケルのギルドカードだ。

  ここに一滴血を垂らしてもらえるかい。

  そう、その小さな針で指先をついて、

  そうそう、これでカケル専用になったよ。」


血を一滴たらすとカードの表面に

綺麗な光の輪が浮かんでカードが

黒鉄っぽい色になった。


 「おお、初心者とは思えないわけだ。

  カケルはアイアンクラスの冒険者だね。


  このカードには登録者の能力によって

  クラス分けがされるんだよ。

  プラチナ、ゴールド、シルバー、

  カッパー、アイアン、ウッド、リーフの

  6段階あってリーフが本当の初心者レベルで、

  カケルのアイアンは中堅クラスのベテラン冒険者だよ。


  買い取りして得たお金もカードに登録されるから

  この辺りの町では金貨も銀貨も使われなくなってるんだ。

  でも、神殿とかで銀貨が必要になる時には、

  銀貨と念じながらカードを振ると出てくるよ。

  戻すときは収納と念じればいいよ。


  カードには所有者登録された空間魔法がかかってるんだ。

  無くさないように気をつけてよ。


  さて、さっきの買い取りだけど、

  薬草は銀貨1枚、ワイルドウルフの魔石は銀貨5枚、

  対火炎傷丸薬は純度が最高だったから

  金貨1枚の値がついたよ。


  じゃあ、これをカードに入れておくよ。


  後ろのボードに薬草採取とか薬の納品の

  依頼の紙があるから、できる物を選んで

  紙を持ってきてね。

  事前登録で達成が早いとボーナスが出る依頼もあるよ。

  

  じゃあ、また薬の納品お願いだよ。」


カイルにありがとうと感謝しながらカウンターを離れると

ココが依頼ボードの前で猫耳をぴょこぴょこさせていて

見ているだけで癒された。


この世界の物価が全くわからないから、報酬の

金貨とか銀貨とか言われても何も実感がもてないな。


依頼ボードを見ると、対火炎傷丸薬の納品依頼があった。

迷わずそれを手に取るともう一度カイルの列に並んだ。


依頼は早ければ早いほどボーナスが出るというもので

5個以上10個までの納品希望とあった。

標準品質なら1個銀貨8枚と書いてあった。

ココに聞くと銀貨10枚で金貨1枚になるのだそうだ。

ちなみに銀貨の下には銅貨と鉄貨があって、それぞれ

10枚単位で鉄、銅、銀、金、白金と上がっていくそうだ。

銀貨1枚で高級宿に2食付きで泊まれるそうだ。

この世界にはお昼ご飯の習慣はなく、朝晩だけだそうだ。


ココは薬草採取の依頼を新たに受けたそうだ。

明日も一緒に行こうという話になった。

でも、薬草採取用のナイフとか、護身用の武器とかも

持っていないから、一緒に買いに行く事になった。

ワイルドウルフの魔石のお礼がしたいそうだ。


ギルドの建物を出ると、すぐ目の前に

剣を何本も立てかけているお店があった。

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