表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/59

幸運

無謀にも2作目だったりします。

こちらはプチ異世界転移、行き来可能な世界観でゆるーく書いていく予定です。

 「よし!

  この金があれば、夢の自給自足の生活ができる!

  のんびり暮らせる!

  勝った、俺は人生の勝負に勝ったんだ!」


何に勝ったのか全く分からないと思うだろう?

そうだろうな、これは俺にしか分からないだろうな。


今日は過労で倒れて入院していた病院で勝利宣言した。

俺の人生最高の日として記憶に留めようと思った。



入院して目が覚めた日に、

お見舞いに来てくれた町工場の社長に

申し訳ないけど退職したいと話したら、

そうだな、今までありがとうな と言われ、

退院を明日に控えた今日またお見舞いに来てくれて、

明日からの生活の足しにしてくれと言って

退職金を持って来てくれた。

いい人なんだけどな。ちょっと泣けてきた。


ちょっと懐と心が暖かくなったのもあって、

現実に返って明日からの生活資金の確認をしようと

ネットバンクの残金を確認してみた。


・・・何かの悪戯かと思ったよ。

振込先を見て宝くじと分かって少し涙が出たよ。

俺にも幸運が舞い降りたんだと実感できた瞬間だった。

それがさっきの意味不明の勝利宣言だったんだ。




これまでの人生をふと振り返ってみたくなった。



高校の卒業と同時に両親が事故で逝ってから、

俺の人生は狂い始めていたんだと思う。


少ない賠償金しか貰えなかったのもあるが、

初めての葬式やら相続やら色々と近所の人達や

役場の人達に教わりながら一通りやり終えた時には

決まっていた大学に通う気もなくなり、

町工場で働くことにした。



元々親戚がいない不思議な両親だった。

祖父母の話も聞いたことがなかった。

近所の人達によると駆け落ちなのではと言われた。


まぁ、天涯孤独の身となってしまったのはしょうがないけど

あんなに色々な事があるんだと思わなかったから、

悲しむ暇もなかったな。



家は小さめだったけど、1人で住むには大きすぎるし、

相続とか税金とかで面倒な感じがしたので、

思い切って売り払うことにして、

小さなアパートに引っ越すことにした。


最低限必要な生活家電と用品、服は持ってきていたから

特に買い足すものもなく、不自由しない感じだった。



問題は仕事の方だった。

急募の求人を見て入った町工場だったけど、

全然人が足りていなかった。

工場を選んだ理由は一つ、

俺が人付き合いが苦手だからだ。


自慢じゃ無いがこの20年間で人を好きになる事も

嫌いになることもなかったくらいクラスの中でも

空気の存在に徹して孤独を通して来た。

機械を使った加工の仕事と聞いて

それなら機械相手にするだけだから

気が楽だと即決した。



社長も職人さん達もいい人達ばかりだったけど、

仕事の方が多すぎて、こなしきれない日々が続いた。

加工機械をひたすら朝から深夜まで回し続ける日々だった。


今時なんだけど土曜日は普通に仕事だったよ。

まともに休めるのは日曜だけで、

ほぼ死んだ様に眠る日曜日だった。

そんな感じの生活なので、

毎日コンビニで買い物して帰って

スマホでネット見て、シャワー浴びて寝るだけの生活だった。



それが先々週のことだけど、工場でお昼休みに

いつのようにコンビニ弁当食べて

お昼寝しようと立ち上がった途端、

意識を失ったらしい。

そのまま入院してたみたいで気がついたら点滴が突き刺さってた。

しかも、少し外れて痛かったから目が覚めるという

謎の罰ゲーム付きだ。


目が覚めたことに気づいて工場長とか来てくれたけど、

ゆっくり休んでくれと心なしか冷たい感じの反応だった。

体力の無い奴はダメだとよく口にしていたから、

がっかりされたのかもしれないな。



原因は過労だそうだ。

勤務状況を話しても先生は苦い顔をするだけだったよ。

その先生はインターンらしくて愚痴り合いになって

ちょっと仲間意識ができてしまった。

俺ほど深夜勤務にはならないけど、不規則で夜勤が入って、

土日もないそうだ。

どう聞いても俺より過労になりそうだった。




そんな俺だけど、働き出してすぐに特に使い道も無いからと

今時貯金してても増えないし、何かしようと思っていたら、

ネットサイトで宝くじの定期購入が出来る事を知った。

思わず、これだってなって

無理のないレベルで定期購入しておいた。


それがついに今日大当たりを引いた。

数字を組み合わせるタイプだったので何種類か買っていて、

1等と2等も当たっていて、4億円越えの金持ちになったよ。



前に税金の相談を役場でしていた時に、山の方だったら

年間の税金が数千円のところがあるって聞いていたから、

そう言うところを買えば、贅沢しなければ

生きていけるのではと思っていた。


幸い高校卒業前にこっそり運転免許取ってたから、

ペーパーだけど車も乗れる。

なら、野菜とか作って自給自足に近い生活して

のんびり生きていければいいなと思ったら、

そうする為にネットで色々検索を始めることにした。



まず場所だ。

最近始まったネット通販のドローン配達は、

山間の村にも対応を始めていて、対応地域が掲載されている。


よし、この街向こうの奥の方の山間も対応可能になってる!

この配達範囲内で土地を手に入れられたら勝てる。


次は土地選びだな。

不動産のサイトを検索。


いいのがあった。

元キャンプサイトの管理棟付きでキャンプサイトごと売りに出てる。

即入居可で、最近流行りの諸手続きも必要生活用品も引越し手配も

フルサポートがついてる。

これで標準価格200万が安いかどうか分からないけど、電気が通ってて

水道は湧き水の引き込みタンクがあるけど、ガスはなしか。

まぁ、オール電化系にすれば問題ないな。

早速購入希望ボタンをタップして手続きした。


少しぼんやりとしていたら、メールが来た。

不動産サイトからだ。

一度現地を見に行きませんかと言うお誘いだった。


明日退院だから午後からなら見に行けると返事して、

何度かやり取りして、近くのコンビニ前で待ち合わせになった。

メールのやり取りだけだったから、てっきり丁寧な対応ができる

おじさんだろうなと思って周りを見ていたら、

スーツ姿の綺麗なお姉さんがお迎えに来てくれた。


話しやすいおじさんだと思っていた俺はとてつもなく緊張した。

役場やコンビニ以外で女の人と接する機会なんてなかったからね。

工場にはおじさん、おじいさんしかいなかったからね。



お姉さんとはその場所について説明を受けながら

山道を登っていくと、途中から未舗装の林道になっていた。

といっても数百m程度だったよ。


管理棟は林道のすぐ脇に建っていた。

奥には背丈くらいの草原が広がっていた。

うん、あれはすぐどうする気にもなれないな。

気長に畑にでもしようかな。


ここは元々このお姉さんの叔母さんが

趣味で経営していたのだそうで、

腰を悪くしたのを機に閉鎖されたそうだ。


管理棟内もトイレ周りもお花模様とかの壁紙で

何となく女の人の部屋のような雰囲気がしていた。


管理棟の奥には救護室の様な部屋もあって

何人か遊びに来ても寝泊まりできる広さがあった。

お姉さんもここに寝泊まりした記憶があるので

とても懐かしいと言っていた。


 「ここにします。買います。」


 「ありがとうございます。

  では、事務所の方に戻って

  説明事項とか色々ありますので

  お時間かかりますが

  この後もご都合はよろしいですか?」


問題無いですと話をして、お姉さんの事務所に連れて行って貰った。


・・・長かった、途中よく分からない説明とかあったけど、

別に支障がある訳でもなさそうなので愛想笑いで聞き流したのは秘密です。


設備も追加してもらう事にしたから余計に時間がかかったよ。


IH調理器と一緒にエアコンも新調してもらって、

大容量の蓄電池キャンペーンも太陽光パネルとセットで買った。

さらに最新式の流水を使った小型発電ユニットも売っていた。

湧き水があるからそこに設置してもらう事にした。


工事の日程を聞くと屋内に設置できるスペースもあるので

2日ほどで出来るそうだ。

無事に契約と諸手続きをして、

後はネットバンクからの自動引き落としで

税金系も自動で対応される。

便利になったと思う。


全部込みで400万超えたけど、

この先煩わしいことから解放されるから

必要経費だって思うんだ。


帰りも近くのコンビニまでお姉さんに送ってもらった。

綺麗なお姉さんのいい匂いにドキドキしたのは内緒。


コンビニで晩御飯と明日の朝のパンを

いつものように買って帰って、

夜にネットを見ていて、ふと思いついて

電気自転車を買う事にした。

近くのホームセンターでも売ってるから

明日買って現地に乗って行こうと思った。




翌日から設置工事が始まった。

立ち合いに行くのに電気自転車は大活躍してくれた。

山道が楽だ、楽すぎる。


既に作業車はついていて、たくさんの資材を

運び込むところだった。


工事の間は他にすることがなかったから、

届いた家電製品を繋げるのを手伝ったり、

ついでにモバイルWiFiも繋げて

快適ネットを確認してたりした。


管理棟の奥の倉庫から、不動産のお姉さんから聞いていた

草刈機と燃料の入った缶が出てきた。

自由に使ってくださいと言われていたので、

それを使って人生初の草刈りをする事にした。


やり始めてすぐにはっきり分かった事があるんだ。

これ2、3日で刈り切れないって事に。

広すぎるんだけど、ほんと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ