物語のはじまり
むかし、むかし、ある国の貴族の家に、それはそれは綺麗な女の子がいました。
まっすぐ輝く白金色の髪、サファイヤのように青く澄んだ目。
まるで人形のように整った顔。
きっと将来は立派な王子様と結婚するに違いない。
女の子の姿を見た誰もがそう思っていました。
13歳の誕生日、女の子は母親を病気でなくしました。
悲しむ間もなく、父親は新しい母親と姉を連れてきました。
継母となったその人は綺麗な女の子に嫉妬します。
一番美しいと思っていた自分の娘よりも、女の子の方が綺麗だったからです。
継母は女の子に辛く、辛く当たるのでした。
姉も女の子のことを妹とは思わずに意地悪をしてきます。
「ねぇ、あんたが洗濯しときなさいよ。使用人の仕事、少しは減らしてあげないと可哀想でしょ?」
ある日、姉は洗濯係の使用人から洗濯物を取り上げて、女の子に押しつけました。
冷たい水で慣れない手つきで洗濯をはじめる彼女に、洗濯係の使用人は苛立った声で怒鳴ります。
「これだから良いところのお嬢様は!!そんなんじゃろくに洗えやしないよ!!」
女の子は何度も何度も、手がかじかんでも、しもやけになっても洗濯物を洗わされました。
そして気づいたら洗濯係は自分になり、洗濯係だった女は自分の部屋でグウグウ寝るようになっていました。
「さぁさぁ、今度は料理をしておくれ。あたしと旦那は忙しいんだよ」
料理人夫婦は女の子に料理のやり方を教えてやると、最初は親切に接していました。
しかし彼女が一人前に料理ができるようになると、仕事を全て押しつけ、自分たちは遊びに出かけるようになりました。
夫婦は夕方になるまで戻ってきませんでした。
「これ、あんたが掃除しといてよ!しっかり綺麗に磨くんだよ!」
ある使用人はトイレ掃除を女の子に押しつけるようになりました。
女の子は雑用係として、使用人と同じ扱い……いいえ、使用人以下の扱いを受けるようになっていたのです。
使用人達も心得たかのように、掃除や洗濯、そして料理など全て押し付けるようになって、自分たちは楽をするようになっていました。
ごはんも一日一食しか食べさせてもらえません。
綺麗だったはずの女の子はみるみる痩せこけ、髪もざんばらになり、使用人達からは醜い、醜いと陰口をたたかれるようになりました。
肝心な父親も醜くなった女の子を嫌うようになり、継母と一緒になって女の子に辛く当たるようになります。
働かせるだけ働かせて、夜は屋敷から離れた物置小屋で寝るように言われました。
そして女の子は一人寂しく、寒さに耐えながら日々を過ごすようになります。