9 学び舎と神殿
学び舎の教官室に向かう。
コンコン、と2回ノックすると、中からどうぞ、と声が聞こえた。
失礼します…、と言いながら扉を開けると、中には、
赤茶っぽい髪を背中の真ん中くらいにまで伸ばした、緑目の女の人がいた。
「初めまして、貴方達が愛し子ね?」
話はスレートさんの精霊伝いに聞いてるわ、と言った。
「私はメアリー・アンシャンテ。
メアリーとでもマリーとでも好きに呼んでも構いませんが、私はあくまで教官ですからね。」
と、何故か忠告された。
はい、と返事すると、いい子ね、と頭を撫でられた。
スーベリィの指定服に着替えた後、メアリーさんと一緒に学び舎を見学していた。
簡単に言うと学び舎は、小学校と中学校が複合したような建物だった。
小さい子なら4歳くらいの子から、上は私達と同じか1つ年上か、と言った具合に。
だけど、部屋の数は多くない。
それだけ青眼は珍しいのだろうか。
「今日は授業ではなく、ただの見学になりますが、
1週間もすればすぐに授業が始まりますからね。」
ビシバシいきますよ、とメアリーさんはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
学び舎の見学があらかた終わり、宿舎の前に近くの神殿へ来た。
先程の神殿と雰囲気が全く違う。
わりと人がいるし、奥に部屋もあるのだろうか、通路があった。
メアリーさんが何かを説明してたけど、奥へと続く通路が気になって私は引き寄せられるように通路へ足を踏み入れた。
同じ扉が多く並ぶ。
歩きながら扉を見ていると、ひとつの扉だけ雰囲気が違った。
扉の形は一緒なんだけど、なんというか、中から漏れる空気が違った。
私はその部屋に入った。
暗い。
まだ太陽がある時間で、窓があるはずなのに、部屋がとても暗かった。
ハクジに頼めばどうにかしてくれるかな、と考えて歩みを進める。
「ん?」
カタン、と何かの音が聞こえた。
扉の方へ振り返るが何も無い。
気のせいか、と思い足を出す。
「ぅわっ!?」
どす、と何かが突っ込んできて、そのまま私は倒れた。
咄嗟すぎて背中と頭を思い切り打ち付けてしまった…、痛い。
「何してる」
その声で初めて私は人が突っ込んできたことを理解した。
そしてその人が私に覆い被さるように押し倒してることも。
「えっ…と。」
この世界で初めて見る、暗闇の中でも分かる髪の黒と、
「何でこの部屋に入ってきた?」
感情が見え隠れする、真っ黒な瞳を。