7.準備
宿題進まないですね。でも頑張ります。趣味で書いているこの小説が息抜きです。
あまり先に進まないけどじっくり、じわじわ、のんびりやっていきたいです。
どうぞ!
「ふぁーあ。よく寝、、ん?この宿の周りに誰かいるみたいだな。昨日の騎士団長さんと同じ気配がする。建物の中には入ってないみたいだけど、、。ま、ご飯食べてから考えるかな。」
洗面台に行き顔を洗う。
「顔は変わってないか。ただあの神様が俺にはこの世界の姿ってのがあるとか言ってたな。世界の名前を念じるだったか?」
(『アルペン』)
その瞬間零の体は再構築されているような感覚に襲われる。傍から見ると足元から変化していく様子が分かるが、正直言って顔を見るまでは変化がないように思うだろう。
「わお、、。これは凄いイケメンだ。髪の黒の色素が全く残ってないや。銀というかなんというか。綺麗な色ってしか表現できないかな。目は青ってかっこいいな!」
鏡に映っていたのは背が縮み、先程とは別人の顔をもった零だった。顔のパーツは変わっているようでかなり元の面影が残っているようにも見える。唯一全く違うのは髪だろうか。一般的な長さだった黒髪は肩にかかってしまうぐらいの長さをもつ銀髪になってしまった。
「この顔なら髪がこんなに長くても違和感無いな。少し長髪に憧れてた部分はあったし、なんか切るのももったいないからこのままでいいや。」
鏡の前で髪をいじったり顔をじっくり見たりする行動は所謂ナルシストのようである。
(『アース』)
「宿のおばさんに見せたのはもとの方だし部屋に戻るまではこっちでいなきゃな。」
ここでぐぅ〜と大きい音が鳴った。
「あーお腹減った。街中だったらきっと周りの人に笑われちゃうよ。恥ずかしっ。」
零は早足で部屋を出て、昨晩食べた席と同じところに座った。既に空の食器がちらほらあるがまだ食べている人も3人いる。
(あれ?あんな子昨日見た覚えがないんだけど?ぱっと見は俺と同じ年頃かな。食器の片付けかぁ。手伝うなんて偉いなぁ。あ、注文頼まなきゃ。)
「す、すみませーん。」
手を少し上げながら女の子に向かって言う。
(はい!コミュ障発動!ま、これぐらいの態度が丁度いいと思っとこう。)
「はーい!少々お待ちくださーい!」
持っていた食器を奥にある調理室に持っていき、零の方に向かって少し走る。スリッパを履いているからかパタパタと音を立てている。
「お待たせしました!ご注文をお聞きします!」
「は、はい。注文したいんですけど何があるのかわからなくて、、。この宿の1番食べられているやつでいいです。」
(いやぁこの子絶対にあのおばさんの娘でしょ!ここで手伝っている時点でそんな気はしてたけどこの元気の良さで確信に変わったよ。元気の良さは遺伝ですか。)
「それでしたらニードルフィッシュのお刺身盛り合わせですね!この村の近くを流れる小川に沢山いるんです!しかもお刺身にすると美味しいんです!実は少し前まではあまり食べなかったんですけど、5年ほど前にどこかの国で召喚された勇者様のうちの1人が広めてくれたおかげで今では超人気料理です!ではお持ちしますね!」
来た時と同様にパタパタと音を立てて調理室に入っていく。
(昨日食べたトンカツも勇者が広めたとかあのおばさんが言ってたな。それにしても5年前に召喚か。あの感じからして勇者は何人かいたんだ。今はどうだか知らないけど。どこかの国での召喚ってことはあまり詳しいことは出回ってないんだな。そりゃそうか、神様曰く戦争準備中らしいしな。だとしたら勇者の存在がバレた時点で仕掛けないとダメだろ。それができないのだとしたらやはり小説通り勇者を鍛えてたりするのかもしれない。はぁ。この大陸でせっかく与えてくれた1年を過ごすのはもったいないな。これはほかの大陸に行くしかないか。あ、来た来た。)
「はい!こちらがお刺身です!こちらは白米。お醤油もついてます。この組み合わせも勇者様が考えてくれたらしいですよ!」
お皿を置きながら説明をしてくれるあたり慣れているようだ。
「えっとですね。聞きたいことがあるんですけど、“らしい”って事は君は勇者様に会ってないってことですか?」
「え!そんなの会えるわけないじゃないですか!そもそも勇者様から広まったっていうのもお世話になっている商人さんから聞いたからであって、伝説みたいにすごい人に会えるなんて簡単じゃないですよ!」
驚いた表情の後、笑って、少し真面目な顔になりながら話している。コロコロ表情が変わるというのは彼女のことかもしれない。
「召喚したのはこの国ではないんですね?」
「それは確信を持って違うと言えます!なにせ国を巡って旅をするあの商人さんが言っていたからです!確か噂が最初に広まったのはワン帝国だとか言っていました。」
「そうですか。ありがとうございます。ではいただきます。」
「はい!ごゆっくりどうぞ!あ、食器はそのまま置いといていただいていいですからね!」
今度はゆっくりと歩いていった。
(あ、この魚うまい。川で釣った魚で刺身とか食べた覚えがないけどよく考えれば鮭とかも川で産まれるもんな。、、だよな?)
確認のとれない知識が頭で反復されている。それはともかくでてきた魚は白身で、味はタイに似ている。しかし味がしっかりし過ぎているので醤油につけなくても美味しい。
「ごちそうさまでした。食器はこのままでよい、と。では部屋に戻りますかね。いやその前に宿から出る時どうすればいいのか聞かないと。あ、おばさん!」
カウンターにいたおばさんを見つけて近寄る。
「どうかしたかい?」
「そろそろ出なきゃいけなくてですね。部屋の鍵とかはどうすればいいのか聞きたかったんです。」
「ならあそこにある壁にかけておいておくれ。部屋番号も書いてあるからきちんとそこにお願いするよ!」
「分かりました。」
(すごいな。もうなんか慣れたよ。適応力が上がったのかも。)
などと思いながら部屋に戻る零。
「あれ?さっきまでいた騎士団長さんの気配が遠くに行っちゃった。俺じゃない人を待ってたのかな。ま、いっか。早く宿を出て、少し村を見て回ってみたいし。」
アイテムバックと鍵を持ち部屋から出て、言われた通りの壁に掛ける。
(ありがとうございましたーっと。さて、騎士団長さんは、、うん。この村からは出ていったみたいだ。なんか安心する。)
ドアを開け宿から出る。辺りは人がちらほら見える。鍬を持っている者、剣を持っているもの、子供や大人、家族まで様々だ。
(何かお店で色々見たいんだけど場所が全く分からない、、。あのグループについて行くか。)
零が目をつけたグループは杖を持った女に剣を持った女と男の合わせて3人だ。
(両手に華ですか。うらやましいねぇ。1年ですべての大陸を回るのであればやはりパーティを組んだ方がいいかもな。ん?この違和感は、、気づかれた?けど無視をしてるのか。えーと?そっちは誰もいないのに曲がるのね。いや、誰もいないから曲がるのか?ならここまでだなバイバーイ。)
零は3人グループが曲がったところで曲がらずにそのまま一直線で進む。
「あ、防具屋見っけ。隣には武器屋かな?あの3人について行ったのは間違いではなかったな。良かった良かった。」
外にも防具と剣がそれぞれ立て掛けてあり一目見て分かる。
「防具はいらないと思うけど何か無かったら怪しまれるのは確かだよね。入るか。」
ギィィとなるドアを開ける。入ると鎧がたくさん目につく。
(鎧っていわれても重くて動きにくそうだからやだなぁ。)
「へい、いらっしゃい。ってガキじゃねぇか!まぁいい、何か気になるもん見っけたら言ってくれよ?」
カウンターにいる男はかなり大きい。2mはあるようだ。ゴリゴリのマッチョから出る低い声は貫禄がある。
「あ、えっと、鎧は僕には合わないので軽いものが欲しいんですけど。」
「軽いものだ?んー、ここにある鎧は重いやつばっかりだぞ?強いていうなら肩当とかか?でも鎧が合わないのならどれも同じだろう。あとはマントがちらほら有るぐらいだな。おお!そういやこの前どっかの商人が譲ってくれた呪いのマントがあるぜ!ほらよ!」
「の、呪いのマント?」
(マントという考えはとてもいいのになぁ。呪いって、、。着る気なくなるぞ。)
「おう。何でも魔力を吸い尽くしちまうらしい。大枚をはたいて手に入れた迷宮の宝物なのに、とか言って泣き出しちまったよ。ガハハハハッ。」
口を大きく開けて笑うおじさんは悪役のように見える。
(笑うとこじゃねぇだろ!可哀想に。でも魔力を吸い尽くすのか。俺なら魔力が尽きそうにもないし、吸った後の効果が気になるから買ってみるか。)
「じゃあそれください!お金はどれぐらいですか?」
「あ?この邪魔ものを退かしてくれるのでありゃあ金は要らねぇぞ。」
「え、そうですか。ではお言葉に甘えさせてもらいます。」
「ガハハハハッ。お前おもしれぇやつだな!そこは遠慮する素振りぐらい見せろよな!まぁいいぜ、持ってけ持ってけ!じゃあな!」
また笑いながらカウンターの奥に入って行った。
(ひゃー。あのおじさん俺がまだいるのにいなくなっちゃったよ。盗まれたらどうするんだ?ま、盗まないけど。)
カウンターにあるマントを取って防具屋を出て、隣にある武器屋へと歩を進める。