3.選択
あと少しで一段落です。
「選択」だなんて大したことではないかもしれなせんが自分に置き換えて考えると、割と悩むことではないかなと思ったのでこのタイトルをつけさせていただきました。
前話より原稿用紙1枚分多いらしいです。
どうぞ!
「ん……。なんかよく気絶する日だな。」
目を覚ました零はゆっくりと上体を起こす。
「うん。ずっと気になってたけど、君の素はそっちの方だよね。それで喋ってよ。心の中で喋る時と違うとなんか変な感じがするからね。」
口を膨らませる神様。
「あー。いえ、できればこのままにしたいです。自分を偽るとかじゃないですけどね。それに…楽しい時とかは自然と元に戻ります。」
少し苦笑いをする。すると、
「なるほどね。今は楽しくないと、そういうことだね?」
そう言い神様は急に表情を無にし、少し黒いオーラを出してきた。
(こわっ、、、くない?怖くないぞ!?それより楽しい要素の1つでもあったっけ?)
「ちえっ。潜在能力的には僕よりも強くなったみたいだね。以前の君ならさっきのでビビって思わず本音を言うはずなのにね。それにどうやら君の心を読むことができなくなってしまったみたいだ。これが君の方が潜在能力的に強い何よりの証拠だよ。」
若干イライラ声で不機嫌さMAXな様子だ。
(え、、、マジで?今俺神様よりも強いの?はい?さっきまで気絶してたやつなのに?)
「潜在能力的に強いってどういう事ですか?」
「フッ、それはただ単純に僕の方が君よりも戦闘に関する経験、技術などの面において格上だということだよ。」
チッチッチッと指を立てながらドヤ顔で自慢?してくる。
「なるほど。そうですか。では僕が経験を積めば積むだけ神様よりも技術的にも強くなるわけですか。」
そう言った零の顔は少しニヤついているように見える。
「そ、そうだけど普通の人間は世界の創成からすぐに生まれたこの僕に努力だけでは勝てないんだよ。」
「しかし僕はもう普通の人間ではないような気がしてならないのですが。」
「確かに。神様にあったことのある人間はまずいないだろうね。死んで魂の状態になってしまったのならまだしも生きている人間をそれも神々のNO.1である僕に会うなど記憶の限りでは君の両親と君だけだよ。」
(そこは俺だけじゃないのかよ。それになんか神様の口調やらなんやら変わったような変わってないような。いやそれよりも、)
「今僕の両親って言いました?どういう事ですか?1か月前に行方不明となったことに関係があるんですね?」
零は少し速い口調になり一息で言い切った。すると神様は困った表情になりしばらく沈黙をした。
(なんだ?そんなに言いにくいことなのか?ていうか聞きたいことが山沢山過ぎて頭がパンクしそうだな。)
零が聞きたいことを頭の中で整理していると、ようやく神様が口を開いた。
「君の両親は旅行中に世界と世界の狭間に落ちてしまったんだ。これは僕の部下の中でも下の方の神が不用意に二つの世界を繋げたためであってね。本来ならそれはもっと上の神たちがやるべきだったんだけど、僕が管理を怠ってしまったんだ。本当に済まないと思っている。ごめん。」
そう言い終わった瞬間、膝から床について土下座をした。
「あ、いえ。お構いなく。」
苦笑いしつつ急いで手を振って土下座をやめさせる。
(神様に土下座されるなんてそれこそ俺が初めての人間じゃないか?)
「いやそれでも、、。」
「ここ4,5年はろくに会話もできてなかったですし。僕も話そうとしなかった上に両親は常に片方出張やらなんやらでまともに家にいたことなどほぼ無かったんです。それでその後どうなったのですか?」
土下座をやめた神様はその場で立った。
「ああ、なんとか僕が助け出したのはいいんだけどね。体を軽く直すためにそれぞれの遺伝子が必要になった。君の両親の体は細胞という細胞が傷ついてしまって遺伝子が取り出せなくなってしまった。そこで息子である君の体から少し頂いたわけだ。ここで問題が発生したんだ。僕の力で君の体に入った時に、今度は僕のミスで神の力のほんの一部が君に残ってしまったのさ。人間ではほんの少しの神の力でさえも時間をかけてその体を蝕む。ここまで聞けば君の体を造らなければならなかった理由がわかったかい?」
(な、なるほど。つまり知らない間に俺は死に近づいていたということか。怖いなそれは…。)
零の背中に汗が伝った。普通に生きていて実は死と隣合わせでした、ではドッキリでも嫌なものだ。
「その顔は理解したようだね。では君の両親のその後を話そう。体を直したあとは僕が造った世界に案内したんだよ。」
「なら、その世界に行けば僕は両親に会えるってことですか?」
「いや、、それがね。無理に世界を繋いだせいで、2つの世界の時間軸がズレてしまったのさ。幸い地球がある方の世界では変化がなかったんだけど、僕の造った世界は大きく狂ってしまってね。そっちの1日はこっちの1年となってしまった。つまり……君の両親はもう寿命で死んでしまったのさ。」
最後の方は顔を伏せ、声は申し訳なさそうに少し力弱くなっていった。
「老衰なら幸せじゃないですか。悲しいといえば悲しいですけど、大丈夫です!そこまで心にきてませんから。まぁ、実感がないだけかも知れませんけどね。」
少し笑って頭を掻きながら言う。
「ああ、ありがとう。それでね。君を両親のいる世界に連れて行くこともできるんだ。どうしたい?」
(どうしたい?かぁ。今の友達と過ごすのも楽しいし、異世界でいろんな街を巡ってみるのも楽しそうだなぁ。あ!)
「もしかしてそこの世界って魔法とかあったりします?」
「ああ!もちろん!RPGを参考にしたからモンスターもいるし冒険者という職業もある。地球とどっちが平和かと問われればそれは地球の方が安全だよ。でも地球ではできないことがたっくさん異世界ではできる!」
さっきとは違い明るい笑顔で説明する。
(お、おう。ついさっきまで重い空気だったのに…。今までないくらいのテンションじゃないか?でも、そっかぁ。魔法が使えるのか…。)
「魔法って僕でも使えるんですか?違う世界から来ることになりますけど。」
「問題ない!僕が貯めることができる限界のエネルギーを君に詰め込んだんだ。魔法が使えないわけがない!それに君は特殊になった。それは行けばわかるけど普通とは扱える種類が違う。試しに1年間異世界で過ごしてみるかい?僕が頑張ってそっちの時間を止めておいてあげるよ。」
そう言いウインクをしながらピースをした。
(時間を世界ごと止めるってそんな簡単な事だったのか?)
神様は軽く目をつぶりゆっくりと開けて、
「さぁ君の答えを聞かせてくれ。」