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9. なんというか心の余裕って大事よね

「……では、まじめな話をするとして」


 雅花がすっと立ち上がり真剣な目で神獣を見つめる。神獣もじっと雅花を見つめる。


「……実際のところ、私はなんなんでしょうか?」

「……何がじゃ?」

「いえ、クラスとかスキルとか」

「『父』じゃ。言うておくが、我は冗談や嘘など言うておらぬぞ。そこのぷー子じゃったか? そやつも優秀な鑑定スキルを持っておるから見てもらうがよい」


 ばっと雅花がぷー子に体を向ける。

 ぷー子が優雅なしぐさで雅花に向き直る。


「……はい、神獣様の言うとおり、父様は『父』となっておりますわ」

「……マジ? え? それは偉大なる神という意味の父?」

「いえ、父親という意味の『父』です。私もこの世界のことは良くわかりませんので、正直まったくわかりませんわ。今までの場所では皆様のクラスを見たりこのようにしゃべったりも出来ませんでしたし」

「なーなー、さっきから不思議なんだけど、なんで父様は神獣様のこと疑ってるんだ? 神獣様は父様と違って嘘とかつかないぜ?」

「おぅ、ぷースケ、きっついなー」


 雅花は結構嘘や冗談が好きだ。嘘と言ってもからかう類のもので、真顔ですらすらと適当な事を言って、関心したり実行しようとしたところで、嘘だよ、と明かす。登志枝がからかわれて怒るのは、片山家ではよくある光景だ。

 その頃から二匹は意識があったのか、それとも全部思い出されたりしたのだろうか?


「うーん、疑っているというよりはあまりにも予想外過ぎて、からかわれてるんじゃないかと」

「まさはなくん、自分がそうだからって他人もそうじゃないのよ」

「あれ? いつの間にか単独潜入? 孤立無援?」

「こりつむえん?」

「はっ!? おふみは父の味方だよねー?」


 雅花が両手を広げて笑顔を向ける。文葉も笑顔で駆け寄ってぎゅっと抱きしめてくれた。

 ずるい、と登志枝も文葉に向かって、ぎゅーっと声をかける。文葉が今度は登志枝に笑顔を向けて抱きつく。

 ぎゅーっと言いつつ、雅花が文葉の後ろから登志枝ごと二人を抱きしめる。幹都はそんな三人に苦笑を向けていたが、登志枝が「幹都ー」、と声をかけると、照れたような苦笑を浮かべながら横から三人をぎゅっと抱きしめてくれた。

 片山一家が4人でラブラブしていると、ぷー子とぷースケも「私もー」「オレもー」、と寄って来る。二人を幹都が持ち上げ、文葉の肩に優しく乗せる。6人でしばらく思い思いに抱きしめあった。


「……すいません、ポノサマ。お待たせしました」

「構わぬ。仲良きことは善きことじゃ」

「そこは、美しき(かな)、じゃないんですか?」

「武者小路実篤は知らないんじゃないかな?」

「誰じゃ、それは? まぁ、とりあえず次にどうするかの話なのじゃが――」

「あっ、とりあえず、私のクラスは『父』で確定なんですよね? なんか私だけ別のベクトルなのがすごく気持ち悪いのですが」

「まぁ、そなたのは明らかにおかしいのじゃが、他の皆もなかなかおかしいからの? 賢者や聖騎士も珍しいし歌姫は我も一度しか見たことがない。神獣使いや聖母なぞ聞いたことも無いわ」

「確かに、聖女とかはこういう時の定番ですが、聖母ってなんでしょね? 怒られませんかね?」

「こういう時って何のことじゃ? そもそもそなたたちが何者か、という話が終わってなかったの。一度腰を据えて話したいが、後片付けを済ませてからの方が良いの。……すまぬが手伝ってくれぬか? そろそろ弔ってやりたいのじゃ」


 弔う? 魔獣を? あ、ハイエルフか。と連想した後、雅花が大声を上げた。


「あーっ!! 忘れてた! としえさん、急いで戻ろう! あの二人、もしかしたらまだ助かるかも!」

「えっ? あっ、そうだ、治せるかも! まさはなくん、急がなきゃ!」

「すいません、ポノサマ、助けて帰って来るので、幹都とおふみのこと見といてもらえますか? 二人とも、ポノサマとここにいてね。幹都は、まだポノサマしんどいかもしれないから、色々面倒見てやってね。ぷースケとぷー子もお願いね」


 そういって雅花は登志枝の手をとって小走りに駆け出した。いってらっしゃーい、と文葉が二人に手を振る。

 神獣が何かを言う間もなく、二人の姿は木々の間に消えて行った。


「……何と言うか、慌ただしいのお」


 神獣が大きくため息をつき、幹都が苦笑を返した。



  *****



「……ですよねー」


 残念ながらハイエルフの二人の脈はもう無くなっていた。顔も更に青白くなっており、息もしていない。

 登志枝が二人の横に膝をつき、そっと体を触っていた。雅花は登志枝のその背中を優しく撫でる。

 ちなみに、臭いはもう治まっている。帰ってきた時はなかなかにえぐい匂いになっていたのだが、登志枝がなんとかなりそうな気がするとつぶやくと、魔力を放出した。

 登志枝から光が広場に流れていったかと思うと、なんと言うか、さわやかな感じになったと雅花は感じた。そして臭いは消えていた。

 いわゆる『浄化』ってやつかなー、と雅花は考えていた。あと、もうファ○リーズいらないなーとも考えていた。


「ねぇ、まさはなくん。こっちの人はなんとかなるかもしれない」


 登志枝が、雅花が最初に見つけた右手と右脚が千切れかかっている死体の方を優しく撫で上げた。


「としえさん、もう何でもアリやね。さすが聖母様」

「ねぇ。ホント、魔法って何でも出来るのね」

「で、なんでこの方だけなの?」


 出来るんならやってあげればいいかー、と雅花はありのまま受け入れることにした。もともとあまり考える方ではない。

 さっきあれだけ神獣を疑っていたのはなんだったのか。反動が来たのかも知れない。


「うーん、多分、こっちの方も治せると思うし、生き返ると思う。でもね、こっちの人足が無いでしょ? このまま治しても歩けなくなるかな、って」

「さっきポノサマにしたみたいに、継ぎ足すなり補うことは出来ないん?」

「あれは途中だったから綺麗にすればいいかなって。なんていうんだろ、もしかしたら心配ないかもしれないんだけど、例えばまさはなくんが、目覚めていきなり足のサイズが変わってたらどう思う?」

「……あー、なるほど。途中ならちょっと補うだけでなんとかなるけど、完全に足がなくなってるもんねー。としえさんの想像で作っちゃうかもしれないのか。俺、起きていきなり足のサイズが26cmとかになってたらこけるだろうなー。感覚も大分変わるだろうしねー」


 ちなみに雅花の足のサイズは28cmである。


「もしかしたら、前と同じのが生えるかもしれないけど、ポノサマと違って意識が無いし、そもそも死んでるしで、そういう情報もちゃんともらえるか心配だし」

「DNAとかアカシックレコード、は違うか? まぁ、そんな設計図的なのが都合よくあればいいけどねー。まぁわかった。とりあえず、どうしよう? こっちの方治すまで一緒にいた方がいい? それとも、さっさとこの人の足を捜しに行った方がいい?」


 登志枝は少し考えるそぶりを見せたが、雅花の手をきゅっと握って、出来ればそばにいて欲しいかな、と告げた。

 雅花はにっこり笑って握った手を持ち上げ登志枝を立ち上がらせる。そのままぎゅっと登志枝を抱きしめ、ポンポンと背中を優しく叩く。登志枝もぎゅっと強く抱きしめ返す。


「……よし、じゃ、とりあえずやっちゃおっか。そういえば、魂的なやつは大丈夫なん?」

「……うん。えーっと、魂的なやつは、なんか魔力的なやつが見えるから、それを引っ張って戻せば大丈夫じゃないかな?」


 登志枝が体を離して、改めて二人の側に膝をつく。

 雅花が登志枝の後ろからぴったり体をくっつけて抱きしめてくる。両手を体の前で交差させ、ついでにワシワシとおっぱいを揉む。登志枝がじとっとした目で雅花を睨む。雅花はニッコリと微笑を向ける。


「まさはなくんのそういうとこ嫌い。ニヤニヤしないで!」

「えー? ニヤニヤじゃなくてさわやかな笑顔のつもりやねんけどなー?」


 懲りずにワシワシと揉んでくるので、登志枝がパチンと手を叩く。「はーい、ごめんなさーい」、と言って胸の下で両手を交差させ、おっぱいを持ち上げるように抱きしめる。

 登志枝は、はー、とわざとらしく大きなため息をつくと、そのまま目の前の死体に集中した。

 死体の右側に視線をやると、千切れかけた色々が見えて少し、いや大分気持ち悪くなってきた。


「ヨシヨシ」


 そういいながら、雅花が右手で頭を撫でてくる。頭を登志枝の左側に寄せ、ほっぺたもこすりつけてくる。

 登志枝は、単純だなー、と落ち着いてきた自分のことをそう思った。

 ありがと、とつぶやくと、登志枝は集中して魔力を練り出した。

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