85. 先遣隊が帰ってきた
すいません、84話の修正も完了しております。
先に84話を読み直していただけますようお願いいたします。
前回の更新は、1/3もいってませんでしたので。 m(_ _)m
ズンッ、という衝撃で雅花は目を覚ました。
上半身を起こして辺りを見渡すと、ウィリアムとガルディミアとアオアオがいた。
「あ、ごめん、起こしちゃった? 結構優しく下りたつもりだったんだけど」
「初めて会った時よりかは大分静かだったね。これならヒューマンも気付いてないんじゃないかい」
「あー、うん、おはよう、大丈夫。十分休んだし」
そういいながら雅花は一つ大きく伸びをした。改めて周りを見回す。
「あれ、まだみんな散歩中? いや、幹都いないしガルディミアに変わってるってことは、二回目?」
「その通りだよ、マッサナさんは良く眠っていたねぇ」
「そっかー。どのくらい経ったん? アオアオが来たってことは、先行組もそろそろ帰ってくる感じかな?」
「約束どおりの時間だと思うよ、ちょっと早く着いたかな? あたし用のスペース作っててくれたから、下りるのも楽だった」
「森のみなさんが快く協力してくれました」
ガルディミアの方からウィルの声が聞こえた。
携帯はガルディミアが持っているようだ。雅花が寝ているので、二人で何か話していたのだろう。
「んー、じゃ、そろそろ出かける準備しないとダメかな? つーか、そんな長い間散歩してて、肝心の村まで行けるのかね? 疲れたとか言い出さないかな?」
「そうなったらあたしが村まで連れて行くよ」
「ドラゴンに乗るのかー。かなり魅力的だけど、それは村人が怯えるだろうからダメ。あと、俺、高いところあんまり好きじゃないというか怖いんだよね」
「えー、気持ちいいのに。変なの」
「そんなの前からわかりきったことじゃないかい」
「あれ、ガルディミアさん、結構辛らつじゃないですか?」
「ごめん、本音が出ちまった。まぁ、聖母様からも色々聞いてるしね」
「マジっぽいからやめて。何、反省するからやばそうなの教えてくれる?」
冗談だよ、とガルディミアは笑っていた。変わってるのは本当だけど、とも付け加えていたが。
一応、本当に冗談っぽいので雅花も笑ってスルーすることにした。
「あ、帰ってきたみたいですよ」
ウィルの言う方を向くと、双子と片山一家が森から出てくるところだった。
皆がアオアオに向かって手を振りながら歩いてきている。
「お、タイミングいいなー。おかえりー、ってあれ?」
「ただいまー。幹都がアオアオが来たよって教えてくれたー」
声が届くところまで皆が近づいてきた。
そこまで来て、雅花は皆が里で貰ったお揃いの服に着替えていることに気づいた。
雅花はじーっと登志枝の胸を見詰める。里で作ったサイズぴったりの胸当てというかブラジャーを着けているので、それは見事な双丘になっているので。
「ちょっと、止めてください」
「あ、やっぱりわかる?」
「そんだけガン見しといて気付かないわけないでしょ。つーか、結構わかるよ、目線は」
ふーん、と言いながら雅花は皆に登志枝に近づくと胸に触ろうとして手をはたかれた。
さいてー、と登志枝から言われ、文葉にも、父めーよ、と窘められた。
「まぁ、冗談は置いといて」
「絶対本気だったでしょ」
「うん、帰ってからまたその服着て」
「絶対着ない」
などと二人が話している間に、子供達はさっさとアオアオのところに行って森での散歩について報告していた。
アオアオも子供達の報告を楽しそうに聞いていた。
*****
「もうすぐ帰ってくるみたいだよ。無事に話は出来たってさ」
雅花も服装を着替え、他の皆は持って来た果汁と水で一休みしていると、ガルディミアがそう告げてきた。
魔法で連絡が来たらしい。思ったより若干早く済んだようだ。
「詳しくは帰ってからか歩きながらするってさ」
「はーい。みんな、散歩から帰ってあんまり休めてないけど大丈夫?」
「んー、ふみはちょっとつかれた」
「ぼくも」
「予定通りの時間でいいんじゃない? 皆にも少し休んでもらって、ゆっくり話してもらってからでも」
「それもそうか。じゃ、予定通り早めのお昼取ってからにしよっか」
「それでいいと思いますよ」
「では、私たちは準備してきますね」
双子がすっと立ち上がりウィリアムのトランクを開ける。
お昼分も朝のうちに採っていたので。
そのまま果物を切ったり魔法で出した水で洗ったりしながら大皿に盛り付けていく。
盛り付けが終わると水差しを取り出し、魔法でその水を操り果物にピッピとかけていた。
雅花と登志枝はぼーっと鮮やかだなー、と思いながらそれを見つめていた。
水差しから魔法で操られた水が宙を舞う様はなかなかに美しかった。
「ん? そういえばなんで仕上げにその水かけてるの? さっき洗ってたし、そのまま水気も切ってたよね?」
「乾かないためにじゃないの?」
「なら、さっきと同じ魔法で出した水でいいんじゃないの?」
「あー、その滴じゃないと意味が無いんだよ。乾かさないためだけなら、そこらの水でも構わないけど」
「なんか違うの?」
「おや、言ってなかったっかい? アタシらは果物と水と日光だけで構わないが、ヒューマンはそれだけだと足りないみたいでね。ポノサマに聞いたら同じ処理で構わないということだったから、聖母様方の食事には毎回長老の木の滴をかけていたんだよ」
「あー、もしかしてピローテスが言ってたなんかしてるって奴かな? そうか、それで栄養足りてたのか」
「栄養足りてるどころか、大分調子いいと思う。少なくとも私はこっちに来てから色々と調子いいし」
「ふーん、すげぇな、長老の木」
「そりゃそうさ。アタシ達はポノサマと長老の木を守るために存在しているんだしね」
「ねぇねぇ、その長老の木って、もしかして世界樹のこと?」
アオアオが会話に入ってきた。
世界樹という単語を聞いて、雅花と登志枝が大きく驚いていた。
「あぁ、そうとも呼ばれているみたいだね」
「へー、どおりで美味しいと思った。そういう効果もあるんだねー」
「えっ、ちょっと待って、世界樹ってあの世界樹? つーか、HP全回効果っ!?」
「HPってなーに?」
「どの世界樹かわからないけど、そっちの世界と同じじゃないかい?」
「こっちの世界には世界樹なんてお話の世界にしかありません! ……無いよね?」
「無い、と思うけど、神様もいたしなぁ」
「ただいま戻りました」
「ちょっ、待って、混乱してきた」
イベントが起こりすぎである。
まぁ、きちんと確認していかない片山一家の問題も半分ぐらいあるが。いや、もっとか?
「あ、えーっと、とりあえずおつかれー、無事お話出来た?」
「あ、ポノサマがお会いしたと言うラニバは既に亡くなっていました」
「初っ端からあかんやーんっ!!」
やっぱあのクマ大分あかん奴や、と雅花はばれたら一発アウトなことを考えていた。
この場合、ポノサマも強くは言えないであろうが。




