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8. 鑑定結果発表

「ハイ、ポノサマ! 解説の方をお願いします。それとも、やっぱり何も見えなかったとか読めなかったとかですか?」


 雅花が手を上げて発言する。


「いや、読めたのは読めた。じゃが、我も一度見たことがある程度のクラスじゃったり、聞いた事すら無いものじゃったり…… まぁ、聞いてもらった方が早いの。トッシェよ、まずそなたのクラスは『聖母』じゃ」


 聖母っ!? と雅花と登志枝の声が重なる。子供達は良くわかっていないようで、ニコニコと神獣を見つめている。


「えっ? じゃ、幹都かおふみのどちらかが勇者とかだったり神の子だったりするんですか?」

「いや、ミキトは『神獣使い』、オフミは『歌姫』じゃ」

「……それは、ポノサマが幹都にほの字とか篭絡されたとかそういう意味ですか?」

「我は小娘か。確かにミキトに感謝はしておるが、そういうものではないわ。そもそも神の使いでもあり神でもある神獣がヒューマンに遣われるわけにはいかぬし、遣われた時点で神獣ではなくなるじゃろう」

「……ん? じゃ、幹都が神であったなら問題ないということですか?」

「うーむ…… 理屈上ではそうじゃな。ただ、ミキトは神ではないぞ、間違いなくヒューマンじゃ。鑑定でもそう出ておる」

「……どういうことだってばよ?」

「なんじゃ、その語尾は? まぁ、なので多分実際に神獣を使うのではなく、そのくらい上位だという意味じゃと思うのじゃが…… 正直、我も聞いたことがないからのお?」

「上位って言いますと、動物使いとか魔獣使いの上ってことですか?」

「そうじゃな。魔獣使いは聞いたことが無いがの。魔獣は神獣と対を成すもので、これを使うのは神獣と一緒で無理なはず、なのじゃがのう?」


 ふーむ、と雅花と神獣はそれぞれ腕を組んで考え込む。


「……幹都、ポノサマにお手って言ってみて?」

「そなた、いい加減天罰を落とすぞ?」

「いえ、これで我慢できなければ、本当に動物使いの神獣版なのかなー、と思いまして」

「まぁ、お手ぐらいしてやってもかまわぬが。この場合、お手をせんようにすればよいのじゃな」

「はい。出来れば抵抗や我慢が必要だったとか、なんかしてあげたくなるなー、とか意識して我慢しないとダメ、とか教えてくだされば」

「ふむ、わかった。試してみよう」


 神獣がのそっと幹都の正面に座りなおす。

 幹都はいいの? という視線で神獣を見つめる。神獣がうなづくのを見て、お手、と言い右手をしゅっと差し出す。

 神獣はじっとその手をみつめる。


「……特になんとも無いの。かわいい手じゃな、と思うぐらいか」

「本気でなんなんでしょうね?」


 雅花と神獣が首を傾げる。神獣はすっと幹都に右前足を差し出す。

 幹都が笑顔でお手をするように手を重ね、ふみはもするー、と文葉もそこに手をぺたぺたと重ねる。

 天使!


「そういえば、文葉の『歌姫』とは?」

「あぁ、そっちも珍しいが一応我も出会ったことがあるので、まったくわからぬわけではない。その名の通り、歌で奇跡を起こす者のことじゃ」

「私達の常識で言えば、意味がわからないんですけどね」

「一度、我らはゆっくりと話し合う必要があるのお。あと、その二匹は『森の賢者』と『森の聖騎士』となっておるの」

「……ん? 私じゃなくてですか?」

「いや、ミキトとオフミが手に抱いておるその二匹のことじゃ」


 オフミとミキトは神獣の右前足の肉球の上でぷースケとぷー子を跳ねさせて遊んでいた。いつの間にか登志枝も一緒に遊んでいる。


「……ポノサマ、怪我は治ったようですが、まだ体の調子は戻っていないのですか?」

「そういえばそなた、さっきも我が戯言を言うておると誤解しておらんかったか? そなたとは礼儀についてもしっかりと話し合う必要があるようじゃな」

「いやいや、ポノサマさっきまで死に掛けてたし、目もひどい怪我であまり見えてなさそうだったじゃないですか。その状態で人形指してクラスとか魔力とか言われても…… 今も、引っ込みがつかなくなって誤魔化してるのかなー、と」

「そこの二匹! 我が馬鹿にされとるぞ、眷属として協力せんか!」


 苛立ちを隠そうとせず、未だに神獣の肉球の上で遊ぶぷースケとぷー子に向かって声をかける。

 ハーイ、と2種類の可愛らしい声が響き、ぷースケとぷー子の右腕がシュタッと上に伸びる。


「改めまして、ぷー子ですわ。皆様とお話出来る事、大変光栄に思っておりますわ」

「ぷースケだぜー。みんなと話せるなんて、ホントにうれしいぜ」

「「よろしく(お願いしますわ)!」」


 ぷースケぇっ!? と幹都が大きな目を一層大きくくりくりとさせながら大きな声を上げる。その顔には満面の笑みが花咲いている。文葉もぷー子! と同じく満面の笑みでぷー子を抱きしめ頬ずりしてる。登志枝は、えっ、うそ、すごい! と興奮しながら4人の様子をスマホでパシャパシャ撮っていた。雅花は細めの目を大きく見開き、そんな5人を凝視していた。

 神獣が、ふんす、と鼻息荒く胸を張る。

 雅花はしばらく呆然としていたが、そういえばさっきこの声、ぷー子の声を聞いた気がする、と考えていた。そして、神獣の方を向いて姿勢を正すと頭を下げた。


「重ね重ね失礼いたしました」

「うむ、謝罪を受け入れよう。で、そなたじゃが……」


 神獣は機嫌良さそうに雅花を見つめた。が、すぐにその雰囲気が変わったように雅花は感じた。


「……そなた、偽名を使っておったな? チチという名前では無いではないか。なんじゃ、読みづらい名前じゃのう」


 そっちか! と雅花はちょっと後悔した。そして名前もわかるんだなー、下手に偽名を使わない方がいいなー、とも考えていた。


「あー、その節はまことにすいませんでした。そういえばすっかり忘れていました。まぁ、ほら、事情が事情でしたから」

「というか、そなた以外は素直に名前を教えてくれているではないか。 ……まったく、そなたは、本当にっ」

「本当にすいませんでした。もう疑っていませんから。というか、やけにこだわっている気がしますが、本当に今まで疑われたことがないんですね」

「当たり前じゃ。神たる我を疑うなどありえぬわ! 我は温厚じゃから許しておるが、神によっては天罰ものぞっ」


(うーん。確かにやばかったかなー? いや、死にかけてたし、そんな力なかったろうしなー。でも治った時のこと考えてなかったな、気をつけよ。ポノサマにこの世界のことを詳しく教えてもらわんとなー、でもその前に)


「まぁまぁ、ここは寛大な御心で許していただくとして、私はなんてなってます?」

「許すつもりではおるが、そなたが言うな! まったく、今回は不問とするが、今後はしかと敬うのじゃぞ? して、そなたじゃが……『父』、じゃな」


 ん? 何が? と雅花は思った。


「何のことですか?」

「いや、じゃからそなたのクラスは『父』となっておる。正直、これも見たこと無いのじゃが…… ちなみに、スキルに『親父』というのを持っておる。これも当然見たことも聞いたことも無い。そもそもこれは本当にクラスやスキルなのかの?」


 ん? 何が? と雅花は口に出した。


「……クラスが『父』なら、世の中のお父さん方はみんなそのクラスになるのでは?」

「そんなことがあるか。そもそも父なんてものは相対的な話であろうが。そなたもミキトやオフミからすれば父じゃが、トッシェから見れば夫であろう」

「……どういうことだってばよ?」

「だからなんじゃ、その語尾は? まぁ、正直我もわからぬ。詳細を読み取ろうにも、父親としか読み取れぬ」

「……あ、実際にみんなの父親であるという設定はどうでしょう? この世界最初の生物の生まれ変わりだとか同等の能力を持っているとか」

「そなた、なんと言うか、いっそ怒る気も失せるのぉ」

「パパと呼んでもいいんですよ」

「……本当に我がのしかかって甘えるが良いかの?」

「すいませんでした」


 両手を広げ慈しみを浮かべた表情から一転、スムーズに土下座に移行する。

 そんな二人をほっといて、登志枝たち5人は楽しそうに談笑していた。

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