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7. 魔法キターーッ!!

 本日二話目です。私のお正月は終わったので、明日から一話ずつになるかと思います。

「そなた、また変なことを考えているのであろう」


 神獣が雅花に向けて呆れたような声をかける。なんとなく、半眼でにらみつけているような気もする。

 あれ? 意外に見えてる? と雅花はそっと涙をぬぐった。


「なんとなく何を考えているかわかるのじゃが、時間が勿体無いから今は良い。そなたも一応我に触れるが良い。そなたからはあまり感じぬが、魔法のコツぐらい感じることが出来るじゃろうて」


 雅花も神獣の右上腕辺りをペタンと触る。もう少し近いところにしてくれ、と言われ、さすがに腹は失礼かと考え後ろに回り、登志枝が添えている手の近くに手を置く。


「……今、そなたらの触っているところに魔力を重点的に置いて見た。先ほどまでとの違いがわかるかの? 次はそれを巡回してみる。 ……どうじゃ?」


(……うむ、わからん)


 雅花にはつかめなかったようだ。幹都はコクコクとうなづいているので、何かわかってはいるようだ。文葉の方からはあったかーい、と言う声が聞こえてくる。魔力なのか神獣の体が暖かいのか判断が難しい。登志枝は目を瞑り真剣な表情で両手を神獣の表面に這わせている。


「……ポノサマ、何かコリみたいなゴリッと言うかでもなんかドロッとした感じのものもあるのですが、これはなんでしょう?」

「ポ……。それは呪いじゃな。魔獣のヤツにやられたのじゃが、それを駆除しておる」

「……ありがとうございます、なんとなくつかめました。私の中にあるのもわかりましたけど、これをどうすれば良いですか?」

「うむ、そこまでつかめているのならば問題ない。魔力を動かし一箇所に集めてそれをそのまま外に出せば良い。出すときに、その魔力を使ってどのようにしたいのかを想うのじゃ。今回の場合は、魔力を動かして我の傷をその魔力で癒すまたは補う、などと想像すれば良いかのう。最初は出来る範囲でよいからの。魔力は集めれば集めるほど大きなことが出来るが、その分魔力が放出してしまうからの。無理の無い範囲で、決して集めすぎぬようにの。まぁ、最初だと拳の中に握りこめる程度の玉を考えると良いのではないかの」


 登志枝は自分の中の魔力らしき流れの一部から、団子を作るようなイメージで小さな丸を作る。それを両手で一つずつ握りこむイメージで手のひらに集中する。そのままそっと神獣の傷跡を撫でるように魔力を放出する。二つでは足りなかったので、次々と傷を団子で覆い塞ぐようなイメージで。

 団子大の大きさならばまだまだ余裕で作れる。

 登志枝は神獣の体のコリをほぐすように、リンパから老廃物を拡散させるように、呪いといわれたものを拡散させるよう神獣の体を優しく解しながら自分の魔力で満たしていく。


「……わーぉ」


 雅花がどこか抜けた声を上げる。隣にいた登志枝が淡く輝いたかと思うと、その光が神獣に流れ全身に行き渡り、見る見る間に神獣の怪我が治っていった。幹都も目を丸くしている。文葉は、すごーい、もっとあたたかーい、と楽しそうに魔力を追って手を動かしはしゃいでいる。

 神獣もしばらくボーっとしてたかと思うと、慌てた様子で首や腕を動かした。


「待てっ、無理をするで無い! ゆっくりでいいのじゃ、無理して全部治さんで良いのじゃ! そなたが倒れるぞ!」

「……大丈夫です、まだまだ余裕ですから、じっとしていて下さい。動かれるとやりづらいです」


 雅花が神獣の声にギョッとして登志枝を見るが、登志枝は確かに余裕そうだった。

 神獣も慌てて動こうとするが、登志枝が落ち着かすようにちょっと強めに体を抑えにかかる。

 大丈夫です、リラックスしてください、とささやきながら体を優しく解していく。幹都もそれに合わせるように神獣の体を撫でていく。文葉の方からは、さすがですわ勉強になります、という声が聞こえた。


「……まさはなくん、ポノサマの左手を持って来れる?」

「えーっと…… ちょっと待ってね」


 幹都と2人で来ていた時にすでに左前足が転がっている場所はわかっていたので、雅花は神獣の左前足があるところに駆け寄るとよいしょと両手で左前足を抱えあげた。腰に来ないように、ひざを突いて垂直に抱き上げる。

 でけぇよ、などと思いながら神獣の下に駆け戻り、多分そうなんだろうなーと思いながら左前足の切断面に左前足を添える。

 ありがとう、と言ってから登志枝は切断面の両側に手を添え、両側から撫で上げた。

 団子を落としていくのでは大変だったので、魔力を固定してブロックのようにつなげるイメージで。


(……団子からだから、クエラピスとかのイメージの方がいいかな?)


 ちなみに、クエラピスとは東南アジアではメジャーな、ういろう的なものを菱餅の層をミルフィーユみたいにもっと細かくしたお菓子のことである。

 ブロックではなく、魔力を薄くして階層のように重ねて繋げるイメージに変える。なんとなく足りないなと思ったところは魔力を継ぎ足すイメージで。ぴったりとくっつくイメージで。

 ふぅ、と一つ息を吐いて登志枝がゆっくりと手を離し後ろに下がる。幹都も一緒に後ろに下がる。それをみて雅花も左前足から手を離し、文葉を促して一歩後ろに下がった。

 神獣が両前足を使い体をゆっくりと起こす。前足を動かしてぺたぺたと体を触っていく。傷は綺麗に癒えていた。

 文葉が、○トロー!、と声を上げながら神獣のお腹に突進しようとしたが、雅花が慌てて止めた。まだ血がついてるから汚れるでしょ綺麗にしてから、と言いながら。

 

「……信じられん。あの怪我を治し腕をつなげ、呪いも癒すなど…」


 むふー、と登志枝が胸を反らして微笑む。デカイ。

 母すごーい、と二人の子供と雅花も笑顔で拍手する。


「トッシェよ、そなたを我のスキルで鑑定させてもらっても良いか?」

「鑑定、ですか?」


 おっと、定番来たー! と雅花は心の中で叫んでいた。

 わざわざ聞くと言うことは、気持ち悪くなるタイプのヤツか? と考えて一応確認してみることにする。


「わざわざ聞くと言うことは、なんか痛かったり気持ち悪かったり、または同意が必要だったりするのですか?」

「いや、特に何も感じぬはずじゃ。同意なども特に必要は無い。ただ、先に断っておかねば、またそなたが邪推するであろうが」

「あ、はい、すいません」


 相当警戒されているようだ。雅花も反省して、深く頭を下げて謝罪する。


「えーっと、すいません、具体的にどういうことなのでしょうか? 私の価値がわかるのですか?」


 鑑定の意味がわからず、登志枝が首を傾げる。


「うむ。そなたの価値じゃな。具体的には、クラスやスキル、ステータスなどがわかる」

「クラスにスキルにステータスですか? なんか、ゲームみたいですね」

「ん? なんぞゲーム的な話があったかの?」

「クラスとかスキルとか。テレビゲームみたいだなー、って」

「てれび? そなたたちの言葉はたまにわからぬの。あとで詳しく話してくれぬか? まぁ、今はとりあえず鑑定をさせてもらっていいかの?」

「あ、はい、よくわかりませんが。よろしければ、私達にも結果を教えてもらえませんか?」

「……? もしかして、そなたたちスキルやステータスのことがわかってないのか?」

「あ、言葉の意味はわかりますが、それが見える、という意味がわかりません」

「そなたたちの国では、成人の折などにスキルを鑑定したりはせんのか?」

「ないですし、やり方も知りません。なので、もしかしたら何も見えないかもしれません」


 雅花もコクコクと無言でうなづく。ちなみにさっきまで、クラスにスキルキター! と心の中で叫んでいた。


「……そういえば、魔法の使い方も知らなんだしの。そなたたちのこと、ゆっくり聞くことにしよう。では、まずは鑑定をさせてもらうぞ。そなたたちもかまわぬかの?」


 そういって神獣が幹都と文葉、あと雅花の方を見る。二人はいいよ、と元気良くうなづき、雅花もお願いします、と素直にうなづく。さすがにもう疑うつもりは無いようだ。

 改めて、神獣がじっと登志枝の目を見つめた。登志枝も見つめ返す。クマだけど、美人さんの顔だなー、と思いながら。美猫とか美犬とかそういう感じで、美熊だなー、と考えていた。


「……そなた、本当に何者なのじゃ? いや、待て」


 そういって、神獣は幹都や文葉の方も見つめる。


「……そなたら、いったい何者なのじゃ?」


 神獣が明らかに驚いているのがわかった。片山一家は何のことかわからず、お互いの顔を見つめて仲良く同時に首を傾げた。

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