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52. 発想が古いのは年齢的に仕方が無いんです

 次の日、朝食を食べて早々に出発することにした。

 今回、双子は留守番でピローテスが助手席に座っている。


「どう? いけそう?」

「ハイ、ギリギリいけそうです。ハンドルとアクセル操作は私の方に任せてもらえますか? 手だけ添えておいて下さい」


 最初はそこそこ順調だったのだが、途中から木々の間隔が狭いところが増えてきて、回り道をしてはいるが車幅ギリギリになってきていた。


「了解、よろしく」


 ウィリアムの微調整により、車体を揺らしながらギリギリのところを潜り抜けていく。

 これだけギリギリだとどうして根元を踏んでしまうので、車体を結構ガクンガクンと揺らしながら進んでいく。登志枝の顔色が少々悪い。他の4人は平気そうだ。


「しっかし、ポノサマがうろつくぐらいだからもっと広いと思ったけど、結構厳しいね」

「神獣様は伸びたりひねったり出来ますから、結構細いところも通られますよ」

「へー」

「……なんか、猫みたい」

「あはは、ホントだ。見てみたいなー」

「ふみはもみる! それでね、いっしょにぐーっとするの!」

「うーん…… 猫、ですか?」

「あ、ごめん、止めてもらってもいい?」


 慌てて雅花が車を停める。急ブレーキは危険なので、決して走らず急いで歩いてきて、の精神であせらずゆっくり揺らすことの無いようにしながら急ぐ感じで。

 車が停まると、登志枝は転がるように車から出て、少し奥の木の陰に倒れこむように進んでいった。

 ピローテスが慌てて追いかけようとしたが、雅花が止めて代わりに子供達の面倒を見ているように頼んでから、登志枝を追いかけていった。


「えーっと、どうしましょうか? あ、あちら側にちょうど花が咲いている木がありますから、そちらで花でも摘みますか?」

「ふみは、おはなとって母にあげる」

「んー、何か動物いる?」

「ハイ。では、向かいましょうか。すぐそこです」

「いってらっしゃいませ。私はここでお二人の様子を見ておきます」


 ピローテスと幹都、文葉、ぷー子とぷースケの5人で進行方向の少し先に進むことにした。

 何やらうめき声のようなものが聞こえたため、ピローテスが進みながら後ろを振り返ると雅花がしゃがみこんで登志枝の背中をさすっているのが見えた。



  *****



 少し進むと、一部の木が綺麗な桃色をまとっているのが見えた。その場所は、木の感覚が少々狭いので、車で進むのは厳しそうなところだった。

 見た感じ、少し大振りな桃の木のような木であった。満開というほどではないが、一部の枝にワサワサとピンク色の衣をまとっている様子はなかなかに美しかった。


「きれい! とっていいの?」

「ハイ、大丈夫ですよ。この木はごらんのように枝が多いですし、病気にも強いので、多少折っても問題ありません。この前の祭りの時にも、私はこれをつけていたのですよ」


 そういって枝を掴むとナイフでスパッと枝を切った。断面も綺麗なものである。

 そのまま鋭利な部分をナイフを使って丸めると、ハイ、と文葉に手渡した。ありがとう! と元気な声が上がる。

 ピローテスはそのまま次の枝に手をかけると、同じように枝を切って断面を整えて、幹都に手渡した。幹都もお礼を言って花のにおいをかいでうれしそうにしている。


「甘い良いにおい」

「……うん、いいにおい!」

「もう少し落としていきましょうか。聖母様が気に入られると良いのですが」


 酔った時に甘い匂いは、人によっては厳しい気がする。登志枝が平気でありますように。

 あっちの枝が良い、こっちの方が花が綺麗、と枝を指定していると、キーキーという小猿のような甲高い声が聞こえた。

 何事かと幹都と文葉がそちらを見やると、小鳥が数羽木に止まっていた。小鳥は鳩ぐらいの大きさだが、十姉妹(じゅうしまつ)とオウムをあわせたような姿で、綺麗な色合いの姿をさらしていた。ただし、泣き声は微妙であった。


「あれはボーパルバードですね。くちばしが結構鋭くて、油断してると切れちゃいますので気をつけてくださいね」


 ピローテスが説明していると、小鳥たちが一斉に飛び立ち幹都達の手前まで飛んできて地面に降り立った。

 ぷースケがいつの間にか、小鳥達と幹都達の間で仁王立ちしていた。ピローテスも魔力を右手にまとっていた。

 小鳥たちは慌てたようにキーキーと先ほどよりは弱々しく鳴いたかと思うと、ピョンピョンと飛び跳ねるように幹都達に近づいては離れ、近づいては離れを繰り返し、時折幹都の方に顔を向け、クリクリと顔や目を動かして何やらアピールしていた。


「……撫でて欲しいのかな?」

「大丈夫なのですかですわ?」

「……まぁ、何かしようとしても止めれますし、大丈夫だと思いますよ」

「うん、オレもいるから大丈夫だと思うぜ」

「じゃ、ふみはもなでる!」


 文葉がタタッと小鳥たちに駆け寄ろうとした。小鳥たちが少し驚いたように距離をとる。

 文葉の肩を幹都が慌てて掴んで止め、まずは僕が大丈夫か見るからね、というと、ゆっくり小鳥たちに近づいた。

 小鳥達の目の前でしゃがんで、ハイ、と手のひらを上にして両手を差し出す。

 ぷースケがその横で睨みを利かせていた。

 小鳥たちはしばらく周りをピョンピョンと飛び跳ねていたが、一羽がぷースケを警戒しながら幹都の手に近づき、頭をこすり付けてきた。そのまま目を閉じながらも頭をこすり付ける。

 それを見て、他の小鳥たちも幹都に寄ってきた。


「ミキト様、すごいですね。この鳥がここまで人懐っこくなるのは初めて見ました」

「ふみはもさわるー」


 優しく頭を撫でながら、一羽をそっと両手のひらで包み込み、そっと文葉の方に差し出す。

 ヨシヨシ、といいながら文葉が人差し指で小鳥の頭をなで上げた。

 小鳥は一瞬目を開けたが、また目を瞑りされるがままになっていた。さりげなく、幹都が包んだ両手で小鳥の体を撫でていた。



  *****



「あれかな?」


 登志枝の体調が回復したので、雅花と登志枝はウィリアムに言われた方向に歩いてきていた。

 少し進むと、綺麗な桃色をまとっている木が見えた。

 2人は手を繋いで木々の間を進む。木の陰からひょい、と顔を出すと小鳥たちやうさぎっぽいのやリスっぽいのに囲まれている一同の姿が目に入った。


「うわー、○ボンの騎士みたい!」

「○ファイアなつかしっ!」


 思わず声を上げ、二人ともスマホを取り出しパシャパシャと写真を撮り出した。

 文葉が二人に気付き、父ー母ー、と声を上げながら手を振ってくる。

 幹都もはにかんだ笑顔を二人に向け、ピローテスも振り返って笑顔で会釈を返してくる。

 2人はより一層シャッターを切り出した。

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