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41. ひとやすみ

「……まだお昼にもなってないんだよなー」

「もう夕方みたいな感じねー」


 あの後、皆が祝いの言葉を述べ、赤ちゃんと一緒に場所を移動し、後片付けをして今に至る。

 赤ちゃんは銀髪だった。一段落した後、改めてそれを見つめたクルンディが、ケレヴィアと呟いて静かに涙を流していた。

 雅花は、クルンディと2人で最後まで戦った人の名前だと思い出した。


「そういえば、若木から採って来たんだけど、なんであの子はクルンディとケレヴィアの娘なの? なんか順番とかあるの? というか、ハイエルフって木から子供が産まれるんだね。なんか不思議、どんな感じなん?」

「えっ? あっ、その、マッサナ様、えーっと、ですね……」

「マッサナ様、今のを若い娘に聞くのはさすがにどうかと思うのですけど」

「え? ……あ、いや、そういう意味じゃなかったんだけど、ごめん!」


 雅花はただなんとなく世間話に聞いただけなのだが、要は子供はどうやって産まれるの? と聞いているわけなので、まぁ、セクハラ案件である。登志枝も首を傾げていたが、やっと気づいたらしく、慌ててアーシェラに謝った。私も気付いてなかった、と。


「では、私から説明しますわ」


 アーシェラと一緒に後片付けをしていたハエルミアが2人に向き直った。

 ちなみに、幹都と文葉はスーヴェラが散歩に連れてっている。


「そういう行為をした後、上手く行きますと100日前後で女性が種を産みます。その種を神聖で栄養豊富な場所に埋めますと、やがて芽吹いて、1年程で実がなります。正確には、大体4000日ぐらいですね。あの子はまだ3400日ぐらいしか経っていなかったので、ちょっと心配ではありますがあの様子ですと大丈夫かと思います」

「へー、種で産んでそれを植えるんだ。 ……大丈夫なの? 掘り出されるとか根腐れとか」

「もちろん、そういうのことが無い様に里全体で面倒を見ますわ」

「……種かー。いいなー」


 登志枝がはぁ、とため息をつく。アーシェラとハエルミアが首を傾げる。


「あー、ヒューマンの子供の産み方は知ってる?」

「……聞いたことがありますわ。確か、お腹で大きくなって赤子の大きさで産むだとか?」


 えっ!? とアーシェラが驚きの声を上げた。


「そうなの。産む時すっごい大変でしんどいの。だから、種で産んで外で大きく出来たらいいのに、ってずっとお母さん友達と言ってたから、いいなー、って」

「そういえば種ってどのくらいの大きさなの?」

「人差し指の爪ぐらいですわ」


 種としては大きい気もするが、樹木の種を雅花も登志枝も見たことが無いので、どうなのかは良くわからないが、子供を産むよりは断然楽だな、とは思った。


「あの場所には一本しか若木はなかったけど、他にも木はあるの?」

「いいえ、最近はあの2人の子供だけでしたから、今は一本もありませんわ」

「えっ? そんなに少なくて大丈夫なの?」

「そうですねー。里の人数も減りましたし、子供も増やさないとしんどいですわねー。でも、こういうのはタイミングですし」

「……うーん、私もそういう『期』がまだ来たことないので、なんともですね。かわいかったので、子供は欲しいなー、とは思いますが」

「そうねぇ。今回の件が呼び水になって、出産が増えるといいのですけど」

「まぁ、でも少なくともこの先12年ぐらいは産まれないわけかー。あ、ごめん、うちらの年換算ね。うちらは、365日で1年だから」

「それは、めまぐるしいですわねぇ」


 その後、片付けも一段落したのでハエルミアは帰り、三人は子供たちに合流した。



  *****



 散歩、昼食、と来て、雅花達は今お風呂に入っていた。

 今回は女性陣が水浴びで男性陣がお風呂である。

 女性陣は夕食過ぎにお風呂の方に来るかもしれないが。


「そういえばさー、今、里にカップルとかっているの?」

「カップルですか? そうですね、居た、ですね」

「そっかー。ごめん」

「……大丈夫、今ここにいるやつらは関係ない」

「ギルロント含めて?」

「……私、含めて」


 今日はお風呂はそこそこ盛況だった。

 朝からの出産の件で色々とバタバタしていたのが落ち着いて、汗を流そうとなったらしい。

 片山一家が風呂の前を通りかかった時、すでにそこそこの男女が風呂を利用していた。

 これは出直すか、となったのだが、丁度出てきたピローテスが中に声をかけ、女性陣がまとめて水浴びに移動することになった。

 気にしないで、と言ったのだが、女性陣はせっかくだから聖母様とお話したい、ということらしい。

 5分後、パッと体を拭いて出てきたらしい女性陣3,4名ほどと一緒に登志枝たちは水浴びの方に向かった。

 混浴は気にしないのに、移動の時はちゃんと服を着るんだなー、と雅花は思っていたが、冷静に考えれば当たり前だわな、と納得していた。自分も家族と一緒にお風呂は入るが、今や飯を食べる時は服を着るんだし、と。気にしないのは裸族かそういう性癖の人ぐらいだろう、と。


「夫婦とかもいないん?」

「んー、そこはヒューマンと比べると違うらしいです。子供が独り立ち出来るようになったら、夫婦も解散です」

「へー、そういうもんなんだ。まぁ、1人1家だもんね」


 ちょっとプライベートに踏み込んだ話になってきたので、そろそろ止めるか、と雅花は考えた。

 まぁ、神獣が帰ってきて、この先の滞在期間によっては、もっとしっかり聞かないとダメかも知れないな、とは考えていたが。

 その時は、雅花もやれることを考えないとなー、とも。


(よくある内政チートとか無理だしなー。電気無いと何も出来ん。あ、野菜とか探してきて育てるのぐらいはした方がいいな。果物だけだと、多分うちらはそのうち倒れる。……米か粉もん食いてぇなー)


 あ、ソースないから粉モンはダメか、などと雅花は湯船で顔を洗いながら考えていた。

 その後、幹都とぷースケと一緒に水鉄砲や顔付けなどで遊んでいると、クルンディとファーロドも入ってきた。

 水浴びをしていたのだが、追い出されたらしい。

 ごめん、と謝るが聖母様にも謝られたけど気にしないでください、と笑っていた。

 改めて、おめでとうと雅花と幹都は伝えた。

 今、赤ん坊は眠っているらしい。ハエルミアが横に付いているので、クルンディとファーロドは一休みしていたそうだ。

 そろそろ大森林の見回りも再開しないといけないところに赤ん坊が産まれて、里の人手が更に必要になってしまった、とクルンディは申し訳なさそうに言っていたが、その場に居たハイエルフ皆に水をぶつけられていた。

 雅花たちみたいに手で作った水鉄砲なんて生易しいものではなく、魔法で作った水球をぶつけられていた。


「オレたちも見回りに付いていってやってもいいぜー」


 水球の攻撃が一段落した時、ぷースケがそんなことを言い出した。


「いえ、皆様にそんなことはお願いません」

「気にしないでいいぜー。オレとぷー子は寝ないし食事の時間とかは暇だし。早朝とかなら全然大丈夫だぜー」

「とはいえ、さすがに……」

「1人で見廻りは無理だが、ポケットとかに入れといてもらえれば一緒に行くの、そんな手間でもねーだろ? オレもぷー子も結構便利だぜー」

「いいの? ぷースケ?」

「お願いしたいぐらいだぜ。なんか面白いことがあったら、父様や幹都にも教えてやるぜ」

「あ、それいいなー。本当に大丈夫?」

「危なそうならすぐに逃げるぜ」

「うん、じゃ、危険そうならすぐ逃げる、ってことなら。どぉ? うちらもお世話になってるし、お昼なら父もウィルと一緒に見廻ってもいいよ。としえさんや幹都とおふみは、赤ん坊の面倒のほうかなー」

「いえ、やはり皆様にお世話になるわけには――」

「どっちかって言うと、うちらがやらして欲しい、ってお願いしてる立場かなー。もちろん、一日べったり出なくて交代要員として、だからそれはそれで迷惑かけるかもしれないけど。あと赤ん坊に関してはとしえさんも育児経験あるし、ってその知識は役に立つのかな?」


 もうしばらく押し問答をしたが、結局赤ちゃんみたい! ってことで、赤ん坊の世話と見廻りについては参加させてもらうことになった。ただ、やり方とかは考えるから見廻りについてはもうちょっと待って欲しいとのことだった。

 赤ちゃんは、いつでも見に来てください、とのことで、とりあえず風呂から上がることにした。

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