37. 6匹目はダメよ?
「マッサナ様、そろそろ良いのではないでしょうか?」
ピローテスが少し頬を上気させながら、雅花ににじり寄って来た。
「……する?」
雅花がピローテスを見つめ、ニヤリと微笑む。
ピローテスがうれしそうに微笑み、コクリとうなづいた。
「父、なにするの?」
「何の話ですか?」
文葉や他のハイエルフ達が2人に問いかけてくる。
「ちょっと待っててね!」
と声をかけてから、雅花がメインベッドルームへと入っていった。
少し話はさかのぼって。
川で十分遊んだ後、里に戻り少し昼寝した。
目を覚ましてしばらくしたところで、ピローテスと三人娘が夕飯の果物を持って来た。
三人娘はフルーツサラダです、と大皿にカットフルーツとドレッシングらしきものを持ってきてくれていた。ハエルミア作だそうだ。
「そういえば、三人娘となの? てっきり、前の『いっせーのーせ』のメンツかと」
「ファーロドは老の件で忙しいそうです。残念だ、と言っていましたが。メルディルとギルロントは仕事が終わってないので無理みたいです。で、ハエルミアを誘おうと思ったのですが、ハエルミアもファーロドとクルンディの教育があるので今日は無理、とのことでした。で、その場にいた三人娘を連れてきました」
「どうでもいいですけど、私たち、三人娘で一括りにされるので決定なんでしょうか?」
「出来ればちゃんと名前を呼んでほしいです……」
「そもそも何の話なんでしょうか? ご飯一緒に食べるって話ですよね?」
三人娘の発言は無視された。
ということで、食事が終わりかけていた今、ピローテスが待ちきれない、と言った感じで雅花に声をかけたのだ。
そこに色気は微塵も無い。
「食事の前の会話もそうだけどさ、もしかして、新しいゲームかなんか? それとも、『いっせーのーせ』のなんか?」
「ふむ、さすがスーヴェラなかなか鋭いですね」
文葉に木登りの木にされた状態でスーヴェラが声をかけた。ピローテスが満足げにうなづくが、答えは言わない。
と、雅花が帰ってきた。
「おまたせー。の前に、テーブル綺麗にしようか?」
「後片付けしときますので、お話進めておいてくださって構いませんよ?」
「いや、アーシェラも参加して欲しいから、全部済んでからの方がいいかな」
「では、急ぎで片付けます」
そういって、ピローテスとアーシェラがテキパキとお皿やコップを洗い片付け、三人娘が拭き掃除を手伝った。
スーヴェラは文葉の相手を続行しており、幹都と登志枝は雅花の持って来たものを見て、持って来てたんだ、と興奮している。
そうこうしている内に片付けも終わり、皆ちゃぶ台の方に集まった。
「ハイ、では、今回紹介するのはこれ、『6ニムト!』になります」
と言って、ちゃぶ台の上にカードを広げる。
カードの裏にはデフォルメされた牛の絵が描いてあった。表側を見ると、デフォルメされた牛の上に数字が振ってあり、カードの上下にこれまたデフォルメされた牛の絵が小さく描かれていた。よく見ると、カードによって小さな牛の数が違ったり、色がついていたりする。基本は白なのだが、青やオレンジ、赤などがある。
「カードを使ってのゲームなのですね?」
「ふみはしってる、やったことあるよ」
「僕も。楽しいよ、やろう!」
「うん、でも先に説明するからもうちょっと待ってね」
文葉、幹都の子供組みとピローテスが興奮している。他のハイエルフ達も興味津々と言った感じだ。
「で、まず言葉の意味だけど、6匹目で受け取れ! ってことです。ちなみに父はずっと、『6ニヒト!』で6匹目はダメよ! って意味かと思っていました。まぁ、要は6枚目を取らないといけない、ということです」
と言って、カードをさらに広げて見やすくする。
「では、ルールの説明ね。このカードは104枚あります。で、1から104の数字が書かれています。まずみんなに10枚ずつ手札を配ります。なので、10人まではこのゲームをプレイ出来ます。で、10枚配り終わったら、場、この中央ね。ここに4枚カードを出します。ちょっと場にカードだけ出してみようか」
そういって広げたカードから、4枚適当に抜いて場に並べる。
27
37
60
92
「でね、いっせーのーせ、でも、せーの、でもいいんだけど、みんな一緒に手札から一枚カードを出します。だから、このゲームは順番がありません。で、出されたカードを小さい順に並べていくの。例えば、」
そういって適当にカードを抜き出してポン、と皆に見せる。
68 56 82 86 46
「説明だからこの5枚だけにするね。で、このカードの中で一番小さな数は46だから、46から順にカードを並べていきます。並べ方だけど、場のカードの横に順番に並べます」
と言って、46、56と順番にカードを並べていく。
27
37 46 56
60
92
「次は68だけど、ここで大事なのが、近いほうに順番に並べるってことね。だからこの場合、56よりも60の方が68に近いよね。だから、68は56の隣じゃなくて、60の隣に並べることになります」
27
37 46 56
60 68
92
「で、残りの二枚はそのまま68のとなりだね」
27
37 46 56
60 68 82 86
92
「で、次のターンね。また手札から一枚ずつカードを出したとします。で、例えば…… あった、88と90が出たとするね。で、これを並べるとこうなるよね」
27
37 46 56
60 68 82 86 88 90
92
「で、90を出した人は6枚目になるわけです。すると、名前の通り、6枚目を出した人は出したカードの前の5枚を受け取らないといけません。あ、受け取ったカードは手札に戻しちゃダメよ、自分の前にでも置いといてください」
27
37 46 56
90
92
「こうやってカードを皆で出していって、手札が無くなったら終了です。で、終わった時に、牛を一番持っていなかった人が勝ちです」
「あれ? 持っていない人が勝ちなんですか?」
「うん、だから最初、6匹目はダメよ、って勘違いしてたのよねー。取っちゃったカードが得点になって、その得点が少ない人が勝ちです。で、その得点なんだけど、ここを見て」
と言って、皆にカードの上下部分に書かれた小さなデフォルメされた牛のマークを見せる。
「ここの数が得点になるの。例えばさっきだと、68、82、86は牛のマークは1匹だけよね。だからそれぞれ1点。でも、60は3匹描かれてる。だから3点。88は5匹も描かれてるから5点。合計で11点も増えちゃったわけです」
1点の三枚が白地なのに対し、60はオレンジ、88は赤で、見た目にもえぐそうである。
「あと、例えばこういう風に10を出したとするね。でも、場で一番小さいのは27よね? この場合、好きなところのカードを一列取って、代わりに出したカードを置くの。で、ここでも得点が大事なんだけど、1段目と4段目は牛のマークは1匹だけど、2段目は3枚あるから3点、三段目は90で3匹描かれてるから3点になります。だからこの場合、27か92と交換するのが賢いことになるね」
そういって雅花が92を除けて、10を置いた。
27
37 46 56
90
10
「どう? 大体わかった? 多分、一度やった方がわかりやすいと思うけど」
「はい、大丈夫、わかりました。早速やりましょう」
「うん、面白そうだねー。これはなかなか盛り上がりそうだ」
「よくわからないけど、やってみます」
「え? わかりやすかったと思うけど?」
「いいから、やろうよ!」
「ふみはもするー」
「僕もー」
「私もー。10人でやるのは初めてねー」
「面白そうですが、カードが大きいので私は見学しますわ」
皆がワイワイといいながらカードを手にとって眺めたり、雅花に早く早くと詰め寄ったりしている。
「はいはい、じゃ、カード配るからカード置いてー。あ、あとごめん。カード持ちづらいだろうし、ぷー子とぷースケは見学ね。それか俺がカードだけ持つから、どっちかプレイする?」
「いえ、構いませんわ。見てるだけでも楽しそうですし」
「オレも、見てるので構わないぜー」
「ありがとう、じゃ、カード配るね」
カードを切った後、雅花が皆にカードを配りだした。
明日は6ニムト、プレイ編になります。
つーか、リプレイみたいなもんになるのですが、大丈夫ですかね?




