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33. ハイエルフの衣装

今日は旧正月ですので、二回目の更新です。

なんとなくですw


 ぷー子に水を出してもらい、皆でわしゃわしゃとウィリアムの車体を濡れたてぬぐいで拭いていく。

 中が濡れると困るので、窓ガラスは閉めたままだ。なので、何かしゃべっているようなのだがよく聞こえなかった。


「ごめんウィル、よく聞こえないからちょっと待ってー、今開ける。……つーか、こっちの声は聞こえてるのかね?」


 一度ぷー子に水を止めてもらい、流れる水を拭き払う。子供達は反対側ではしゃぎながら引き続き拭き掃除を続けている。

 軽く手ぬぐいを絞ってから、運転席のドアを開けた。


「ごめん、お待たせ、どうした、痛いとか拭いてほしいとことかある? あと、聞こえてた?」

「すいません、マスター。お礼を言ってただけです。あと、外の声は良く聞こえます。もうちょっと音量を上げれば聞こえますでしょうか?」

「うーん、結構ぷー子の水の音が響いてたからなー。……そういえば、ブルートゥースとの接続って出来るん?」

「っ! いけるはずです!」

「じゃ、トランシーバーアプリ入れてるからそれで…… って、ウィルの方に入ってないから無理かな?」

「いえ、ちょっと色々と試し見てます。アプリを起動しておいて貰えないでしょうか?」


 はいはいー、と返事してドアを閉めて起動する。とりあえず、ぷースケに持ってもらって確認しといてもらうことにし、拭き掃除を継続した。


「父様、電池少ないみたいだけど、大丈夫か、これ?」

「ん? あー、充電全然してないもんな。つーか、ゲームしなかったら二日ぐらい充電しなくても電池持つのね。ケーブル持ってくるから、ウィルの中で充電しながら試してみて。取って来る」


 ちょっとよろしく、と言って雅花が家の中に駆けて行く。

 もちろんゲームしなかったのは、通信出来ないので起動出来なかったからだ。ゲームもWebマンガも小説も読めない今、雅花にとって携帯はただの板だった。これでウィルと通話が出来れば、もうちょい役に立つことになるが。

 家の中からケーブルを持って外に出ると、スーヴェラが丁度来たところのようだった。


「マッサナ様、こんにちは。挨拶遅れましてすいません」

「こんにちはー、これからよろしくお願いいたします。いいよ、なんか連れて行かれたんでしょ?」

「あのね、ふみはしってるよ。ようじがあるから、ってつれていかれたの」

「うん、その通り! で、とりあえず一段落したので交代に来ました」

「すいません。ということで、ちょと私も行ってきます。すぐ戻ってきますから!」

「いや、ちゃんとあわせてきてよ? 特に今回は聖母様たちの前でするんだからね?」

「わかってる!」


 そういってアーシェラは一礼すると駆けて行った。見送った後、洗車を継続する。スーヴェラも手伝ってくれた。


「そういえば、あわせるって何を?」

「後夜祭の衣装です。結構枚数がありますし、前に使ったのがずいぶん前ですから直さないといけないかもしれませんしねー」

「へー、どんなの?」

「としえさん、それは見てからのお楽しみの方がいいんじゃない?」

「僕たちも着るの?」


 幹都に言われ、大人2人がハッとなる。全然気にしていなかったようだ。


「ホントだ、礼装用の服なんて何も持ってきてない!」


 旅行に行くところだったのだ、当たり前である。


「いえいえ、皆さんはそのままの格好で構いませんよ。一応前例もありますし」

「よかったー。でも、ハイエルフの衣装もちょっと興味あったなー」

「あー、遺品でよろしければ、誰かのヤツが使えるかもしれませんね。あ、でもミキトとオフミは無理かな? 三人娘の昔のヤツが残ってたかなー?」

「ううん、ごめんなさい、気にしないで。みんなが着てるのを楽しみに見とく」

「そもそも、うちらが着ていいものなの? 良ければ客人用のとかがあるもんじゃない?」

「そうですねー、上の判断かなー?」

「あっ! そういえばとしえさんたち、長的な偉い人に挨拶した? よく考えたらそっち先にしないとだめなんじゃないの?!」

「あっ、ごめんっ、してない! というか、紹介もされてないから、そういう人いるのかとか考えてなかった」

「里長ですか? 今晩決まりますからその時でいいんじゃないですかね?」

「え? 今まで居なかったの?」

「いえ、今回の件で亡くなりましたので」


 そりゃそうか、と雅花は失言を反省した。


「ごめん、そうだよな。申し訳ない」

「大丈夫です、気にしないでください。今晩は、別れまた戻ってくるための祭りですから。一緒に見届けてください」


 と、スーヴェラがにっこり笑う。イケメンだなこいつ、と雅花は思った。


「私、アグリンディアさんが里長なのかなー、って思ってた」

「あ、わかる」

「いえ、アグリンディアは老の1人ではありますけど」

「老? 相談役とかそれとも別の役職?」

「本人たちは年寄りが下の面倒見てるだけ、って言ってますけどね。里長と4人の老が里に何かあった時に判断することになってます。とは言っても、うちらも意見だしますけどね」

「なんかあの見た目で年寄りとか言われても違和感しかない」

「私たちよりも若いようにしか見えないもんね」

「ヒューマンとハイエルフですからね。私達の感覚では、10年も生きていないそうですからね、不思議です」

「そうだよなー、スーヴェラも純粋に時間的にみたらうちらより年上なんだろうなー。そういえば、ハイエルフの一年って何日なの?」

「4380回夜が来たらですね。正確には、影の日があるので、4383回ですけど」

「えーっと、438として1の7の3で73と3だから733で365の2で12と3余りか。うちらでいう12年とちょっとが1年なのか」

「うるう年が入るから、ちょうど12年じゃない?」

「あっ、そうだ!さすがとしえさん。つーか、公転とかも一緒なんかな。12倍の可能性もあるけど。こう考えるとパラレルワールド説の可能性が強まるなー」

「ぱられるわーるど?」

「うちらがいた世界と、ここの世界が実はすぐそこにあるお隣さんみたいなもんで、たまたますれ違ってただけで見えなかったっていうお話のこと。まぁ、どうでもいいかな?」


 と、わっはっは、と雅花が笑う。

 ウィルの水洗いは終わり、次は乾いた手ぬぐいで乾拭きをするところである。

 ちなみに、ウィルとぷースケはまだ中で色々とやっているようだ。残念ながら、まだ通信は出来ていないようだった。



  *****



 ウィルを綺麗に洗い、家の中でゆっくりし、お昼ということで三人娘が木の大皿いっぱいに色んな果物を持って来てくれた。

 準備を終えたという三人娘も交え、一緒にお昼を食べ、散歩でも行こうか、という時にアーシェラがやっと帰ってきた。

 神獣が顔を出さぬか、と呼んでいるそうなので、皆でお風呂に向かうことにした。


 せっかくなので、片山一家全員で入っていいか神獣に聞いたところ、逆に良いのか聞かれた。

 ハイエルフも入りたがったが、家族以外は混浴無し、ということで諦めてもらった。色々大変だったが……

 神獣+片山一家6人でのんびりしていると、ハエルミアが神獣を呼びに来た。一応、神獣も衣装があるそうなので、それを付けに行かねばいけないそうだ。

 ということで、神獣は先に出て、ハエルミアと準備に向かった。

 片山一家はゆっくり着替え、一旦家で待っておこうか、とお風呂から出たところ、そこには先ほどと装いを変えたスーヴェラが微笑んで立っていた。

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