閑話. 子守唄
昨日、予約投稿ミスったせいで、日付だけ見ると連続更新途絶えた感があるので、急遽作成。
ホント、ただの閑話です。
痛くて暗くてすごく嫌なところにいた気がする。
とても辛くて苦しくて、誰も呼べなくて、誰を呼んだらいいのかもわからなくて。
考えもまとまらず、何も思い出せず、でもひたすら辛くて暗くて嫌な何かが絡んできて。
それが急に楽になった。
誰かに呼ばれた気がした。
だんだん考えがまとまってきた。自分の名前が、誰だったのかも思い出せるようになってきた。
そのまま、明るい方に進んでいった。
そんな感じだったような気がする。
目を開けた時、とても可愛らしいモノと目が合った。
何コレ、すごくかわいい。
ちっちゃな私たちみたい。でも微妙に違う。
全体的にコロコロ、クリクリとしてる。
耳は無いみたい。あ、違う。耳が短くてちっちゃいんだ。
なんだろう、子ザルみたい。髪は……黒い。黒は、嫌だ。
黒はすごい怖かった気がする。
『父ー、母ー、おめめがあいたよー。ヨシヨシ、だいじょぶですか?』
黒い何かが音を出した。全然わからない、嫌だ、怖い、逃げたい。 ……動かない。
「おふみー、すぐ行くからちょっと見といてー。あと、ポノサマと話すように話しかけてあげてー」
「ハイ! ヨシヨシ、だいじょぶですか?」
……今度はわかった。わかったら怖くなくなった。すごいかわいい声。落ち着く声。安心する声。
「ヨシヨシ、いたいいたいのとんでけー、だいじょぶですよー」
かわいいのが撫でてくれている。別にどこも痛くないのに。気持ちいいからもっとして欲しいから止めないけど。
かわいいのが、布を出して頬をふいてる。
……私、泣いてたんだ。
「いたーいいたーい、とんでけー♪ おそらのむこーにー、とんでけー♪」
……いたくない。こわくない。黒は、怖くない。
安心する。痛くないけど、眠くなる。
目を瞑る。暗い、でも怖くない。歌が聞こえるから。
「ねーんねー、ねーんねー、んーんーんーねんねー♪」
途中で鼻歌が入る。そういう歌なんだろうか? 忘れちゃったんだろうか?
でも、すごくかわいい。
「お待たせ! あ、おふみお歌を歌ってあげてたの? すっごい上手ね」
別の声が聞こえる。
かわいいのより大きな何かが触れてくる。でも、怖くない。温かい。
……先ほど、呼んでくれた声な気がする。呼んでくれた、何かの気がする。
「……怪我はもう大丈夫だと思うけど、まだ疲れてるのかな?」
「おふみがなでてあげるの」
「うーん、じゃ、おねがい。もうちょっとしたら、起こしちゃわないとダメだし、それまでゆっくりさせてあげて」
「あい! はんぷてぃー だんぷてぃー さーとおーなー うぉー♪」
「なんでマザーグース?! まぁいっか」
笑い声が遠ざかる。
でも歌は聞こえる。ちっちゃな何かが私の髪を撫でてくれる。
「くーど ぷ はんぷてぃ とぅげざ あげー♪」
「……ん? 今のだとハンプティー蘇ってない?」
ここはもう、こわくない。
私は、生きている。




