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23. うちの掛け声はこうです

すいません、予約投稿ミスってました。完成前の原稿をアップしてしまっていました。 m(_ _)m

1/19 の 01:47 に完全版をアップしなおしました。

ちょっとだけオチが変わってます。不完全版のオチは、唐突だったので、後日別のところで自然に挟みます。


どおりで変な時間にアクセスあがったなぁ?と思った……

「……いっせーのーせ、5!」

「……いっせーのーせ、3!」

「……いっせーのーせ、3!」

「……いっせーのーせ、3! やった」

「えっ、まさかの3続き?」

「でも、抜けれましたよ」

「まぁよい。ではいくぞ。……いっせーのーせ、6! よしよし」


 神獣、雅花、ハイエルフ4人は昨晩寝ていた場所あたりに車座になっていた。

 ハイエルフ達を全員集め終わり、体も一通り綺麗にすることが出来た。あとは里からの到着待ちとなる。

 やはり皆、気持ちが沈んでいる感じだった。なので、雅花がハイエルフの里や皆のことを聞きたい、と一同を集めてお話することにした。

 最初はハイエルフのことや森のこと、魔獣や周りのモンスターのことを聞こうとしたのだが、内容によっては子供たちは隔離するとしても登志枝は一緒の方が良いのでは、ということになり、片山一家や雅花の世界の話になった。こちらも詳しくはあとで皆集まってからということになったので、家族旅行中だったことや向かおうとしていたところの話、ポレノー大森林の印象の話、建物や娯楽の話などあっちこっちに話が移り、気付けば皆で『いっせーのーせ』、をすることになっていた。

 いっせーのーせ、の掛け声で、親指を立てるか隠したままかを選択実行し、場に立っている親指の数が掛け声のあとに宣言した数と一緒なら、宣言した者は片手を下ろす。順番にそれを行い、両手を下ろす事が出来た者から上がりとなる遊びである。

 小学校などでよくやった遊びだが、意外に食いつきが良かった。皆、別の何かに集中したかったのかも知れない。何回かやっていく内に、だんだん熱中しだした。


「……いっせーのーせ、10! やった、1抜け!」

「ちょっ、マジか!?」

「……ここで10……」

「つい指を立ててしまったのお」

「はーい、これで私が神獣様を抜いて暫定一位になりました」

「2抜けですぐに抜いてやるわ」


 ちなみに、ただ順番を決めるのでは面白くないので、得点ルールを設けている。

 あがった人は、その時点で残っている親指の数を自分の得点とするというものである。

 今回の場合、ピローテスが最初に抜けて、残っている親指の数は神獣の1本とあとの男共4人は両方残っているので8本、合計して9点がピローテスの持ち点に加算される。点がもらえるのは3抜けまでである。3抜けが決まった時点で、最初からやり直しとなる。

 これを10回行い、合計点で順位をつける予定だ。

 現在、ピローテスが暫定1位に輝いた。二位は神獣である。少し離れてファーロド、メルディルと続き、ギルロントと雅花は0点であった。


「……いっせーのーせ、4! お先です、神獣様」

「むぅ、先に行かれたか」


 しばらく繰り返し、ファーロドが2抜けした。雅花以外はみんな指1本だったので、5点である。


「……いっせーのーせ、2! ……初」


 ギルロントが次に抜けた。ギルロント、初の3抜けで4点ゲットである。


「ぎゃー、0点仲間がー」

「むぅ、ピローテスに差をつけられてしもうたのお」

「マッサナ様、まだ一回も当ててませんよね?」

「ぎゃー、言葉のナイフがー」

「しかし、さっきのピローテスはすごかったな、ストレートで抜けたのは初めてじゃないか?」

「……次、行こうか」

「よーし、8回戦目ね。このまま逃げ切るわよー」


 ワイワイと感想を言い合い、次の戦いの準備を始める。

 ちなみに、1抜けからスタートで、1,2,3抜けの順に座りなおす。4-6は先ほどまでの順番を維持する。

 よって、今回の順番はピローテス、ファーロド、ギルロント、神獣、メルディル、雅花、となる。


 次は神獣が1抜けし、ファーロド2抜けのピローテス3抜けとなったところで、神獣がその音に気づいた。


「む? 車の音がするの? 魔道具組がもうすぐ着くみたいじゃ」

「思ってたより大分早いですね。じゃ、続きは後で。他の遊びも後日に試してみましょっか」

「そうですね、迎えの準備をしておきましょう」

「あ、この得点は写真に撮っときますねー」


 雅花が立ち上がり、地面に引いた線を写メる。メモするものが無かったので、地面に線を引いて得点をつけていたのだ。

 ちなみに、雅花は文字を読むことは出来なかった。声に出して読んで貰えば理解は出来る。

 なんかよくわかんないがそういうものか、と納得することにした。ということで、必要なら文字も教えてもらう約束は取り付けていた。


「……この程度の魔法でも、まだ使うのはしんどいですね」

「まぁ、ヒューマンや普通のエルフなんかは蘇生されても数日程度は寝たきりになったりするからの。トッシェの魔法がすごいというのもあるが、それでもここまで動けるようになっているのは大したものじゃからな? 魔法も、明日ぐらいから簡単なものは使えるようになるじゃろう。まぁ、しばらくはゆっくりするが良い」


 どうやらファーロドも記録の魔法を使おうとしたようだ。

 神獣がハイエルフ達を慰める。実際、蘇生後一晩寝たとはいえ、相当タフな話なのである。


「魔道具は、さっき言ってた辺りで良いですよね? もう一度確認してきます」

「……私達は、皆の様子を」


 皆気持ちを切り替え、各々移動して魔道具組が帰ってくる前に最後の点検のようなものを行う。

 神獣と雅花も、魔道具設置予定場所の方へ歩いていった。車からすぐに出して設置できるように。

 しばらくすると、車が木々の間から姿を現した。雅花が大きく手を振る。車はスピードを落として進み、神獣と雅花の前で停車した。


「としえさん、運転お疲れー。ウィルもお疲れ」


 エンジンが止まったのを確認してから、雅花が運転席の扉を開けて登志枝に声をかける。その後、ハンドルを撫でながらウィルを(ねぎら)う。

 オレもいるぜー、と登志枝のポケットからぷースケが声を上げてきたので、雅花はぷースケにもお疲れと伝える。


「……つかれたー。当分運転はいいや」


 登志枝がげんなりした顔でシートベルトを外し、車の外に出て来た。ヨシヨシ、と雅花が登志枝を抱きしめる。疲れているのか、登志枝も抵抗せず胸に顔を埋めていた。

 そんな二人を一旦置いておき、クルンディや他のハイエルフ達も車の外に出て、トランクを開け魔道具を取り出す。


「あれっ? 幹都と文葉は?」


 後部座席からは3人のハイエルフしか出てこなかった。そのハイエルフ達も、皆初めて見る顔だった。


「ハイエルフの里で留守番しとくって。アーシェラの弟さんのスーヴェラって人がいるんだけど、遊んでもらってたみたい。文葉も幹都もべったりよ」


 そういってクスクスと登志枝は笑いながら雅花から離れる。


「なるほど。まぁ、転送の魔道具が繋がればすぐ来れるんだし、車に乗ってる方が疲れるわなー。ぷー子は子供達と一緒?」


 そうだぜ、とぷースケが答える。

 なるほどなー、と呟いた後、雅花が少し声を小さくする。


「で、クルンディ以外知らない人ばかりなんだけど、どうかしたの?」

「魔道具を使うには魔力がいるからね。アーシェラとサーサリはまだ本調子じゃないから、魔法が使えるのが代わりに来たというわけですよ。初めまして、マッサナさん。アグリンディアといいます」


 後ろから声がかかり、振り返ると新しいハイエルフの一人が微笑みながら解説してくれた。自己紹介をしながら手を差し出されたので、雅花も手を握り返し、軽く挨拶をする。物腰、雰囲気、声。なんとなく雅花の好きなタイプだった。何故か、ここの夫婦はアグリンディアに甘い。

 握手を終えると、アグリンディアは神獣に向かい頭を下げた。


「神獣様、ご無事で何よりです」

「無事ではなかったのだがの。トッシェやミキトのおかげでこうして生きておるわ。こちらこそ、すまなかったの。多くの里の者を犠牲にしてしもうた」

「いえ、神獣様に付き従うことこそ、我らの使命ですから。 ……此度の件、神獣様の方が御辛いかと」


 ポノサマとアグリさんがシリアスな雰囲気出してるなー、と雅花はぼーっと見つめていた。


「おっと、そうだ。何か手伝えることがあったら手伝いますけど?」

「いえ、設置は私たちだけで大丈夫です。それより、トッシェさんを(いたわ)ってあげてくれませんか? 里の者を何人も癒してもらった上、休み無しでクルマの運転までさせてしまいました。本当に、すいませんでした」


 アグリンディアが登志枝に向かい頭を下げる。大丈夫ですよ、と登志枝が両手を振り、笑顔で答える。


「わっかりました。では、遠慮なくうちらは休ませてもらいますが、何かあったら声をかけてください」


 はい、とアグリンディアがうなづく。

 神獣とアグリンディアをその場において、雅花は登志枝の手を引いて、皆で遊んでいた場所まで連れて行った。とりあえず、まだ魔法シートがかかっているので。

 まずはぎゅっとして、それから肩か足でも揉みながら、向こうでの話を聞いたりやこっちでの話をしたりするか、と雅花は考えていた。『いっせーのーせ』のことはどうしようかなー、と考えながら。

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