表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/112

13. 果物狩りって時間を忘れるよね

 森の中を車が走っている。スピードはそれほど速くない。安全第一と、同行者の体調がよろしくないので。


「マッサナ様、もう少し左側に向かってください。あと少しでつくと思います」


 後部シートには幹都と文葉、あとぷー子が。そして助手席にはハイエルフの一人が乗っていた。

 最初の方にまだ息があった二人のうちの一人で、クルンディという。雅花がお姫様だっこで運んだ男性である。

 あと、マッサナは雅花のことだ。これだとまだ発音しやすいらしい。なんとなくカッコいいので、雅花は気に入っている。


「はいよー。ところで、クルンディ、具合は大丈夫?」

「はい、大丈夫です。乗っているだけですし、この椅子は大変すわり心地が良いですね。全然揺れませんし」

「足の方も?」

「はい、ゆっくりとですが、歩ける程度には回復しましたし、違和感もありませんでした」


 ちなみに、最初はさん付けで呼んでいたのだが、呼び捨てでかまわないということで、呼び捨てにしている。それでもさん付けにしようとしたところ、悲しい顔をされた上に、ハイエルフ皆で説得されたので。じゃぁ、様付けも止めてくれとは言ったのだが、そこも納得してもらえなかった。神獣を救い、魔獣を討ち、ハイエルフたちを救った。片山一家は英雄であり恩人扱いのようだ。


 しばらく運転した後、たどり着いた場所には一面赤紫色の果実が実っていた。あけびの群生地のようだ。

 片山一家とクルンディは外に出て、あけびをもぎ始めた。文葉は雅花に肩車をされ、ペン型のはさみを使って楽しそうにもいでいる。時折、ぷー子がアドバイスをしているようだ。

 幹都はクルンディのアドバイスを聞きながら、ハイエルフから借りたナイフを使ってもいでいる。

 ぷー子は鑑定のショックから回復していた。

 とりあえず、『勇車』については後で話を聞こうということになり、ハイエルフの一人に道案内を頼むことにした。

 案内人は男性に来てもらい、血などで汚れた服は雅花の服に着替えてもらうつもりだった。その旨を伝えると、神獣が魔法で綺麗に出来るぞ、と教えてくれた。ハイエルフ達は魔力が枯渇していたので、やり方をぷー子に伝えてもらったところ、あっさりと綺麗に汚れを落として乾かしてくれた。その時に皆から賞賛を浴び、復活したのだ。

 ちなみに、ハイエルフ達は貫頭衣みたいな上着と下にズボンをはいていた。色は緑や茶色で、不思議な感じの布だが結構丈夫そうだった。

 雅花たちが出発したあと、広場ではぷー子と一緒にやり方を見ていた登志枝が他のハイエルフ達の服を綺麗にし、ついでに神獣の毛並みも整えていた。その時に、実は服は他にも色々な色があるが、戦闘をするときなど森に溶け込む必要がある場合はこの色で来ると教えてもらった。ただし、単色しかないそうだ。実は今着ている服は布ではなく木の幹を薄く剥いだもので作られているそうで、麻や絹に比べて丈夫なのだそうだ。もちろん特殊な種類の木で、布と同じようにある程度は伸び縮みして汗なども吸ってくれるらしい。


「……しかし、これ中身食べるんだっけ? なんかこー、見てくれが虫みたいね」

「父、そんなこといっちゃダメ」


 あけびを見ながらつい本音が出たところ、文葉に怒られたので「ごめんなさい」と雅花が謝った。まぁ、気持ちはわからなくも無い。


「あんまり匂い無いね?」


 幹都も鼻を近づけてそう呟く。味見をするつもりは無いようだ。


「そういえば、これ、皮って食べれるの? そこそこ肉厚で、調理すればいけそうだけど」

「マッサナ様、中身以外は苦味があるのでまず食べません。種も噛むとエグミが出るので、しゃぶる感じですね」

「父様、私たちの世界では、火を通して食べることもあるそうです。ゴーヤみたいなものですね」

「へー。ゴーヤかー、ひき肉詰めてもおいしそうだけど、そうなるとハイエルフのみんなは食べれないか。とすると、やっぱり中身だけしゃぶる感じなのかねー」


 そういいながら、文葉が取ってくれたものから中身を取り出し口に含んでみた。思ったより種が多かったが、確かにさわやかに甘い。


「……うすい柿、かな? 結構美味しいな、おふみと幹都も少し食べる?」


 文葉は食べるといって、少し口に含みぷー子に、種はぺっぺするんですのよ、とレクチャーを受けていた。幹都は後でいい、とのことだった。


「あ、おふみ、もうそろそろもぐのいいよー。あまり取りすぎても食べきれないし」

「えー、ふみは、もっととりたい」

「早く帰ってあげないと、母やみんながさみしがるよ? まだ次のプルーンのところも行きたいし、また明日とかも採ればいいからね?」

「……わかった、さいごの一つにする」

「よし、えらい。幹都ー、幹都もそろそろストップね。次はプルーンところ行くよー」


 ちなみにりんごはもうもいでエコバックに詰めてトランクの中に入れていた。

 りんごは雅花達が知っているのより少し小ぶりだったが綺麗な赤で、瑞々しかった。ちなみに、こっちは一つ切ったところ、幹都も食べていた。あけびは見慣れていないので警戒しているようだ。


「父、生のプルーンって初めてやわー」

「私はあけびの方が好きですが、ピローテスやアーシェラなんかはプルーンの方が好きですね。あまり食べ過ぎるとお腹がゆるくなるので、お気をつけて」

「へー、確かにプルーンって便秘に効くイメージやもんねー。そうか、食べ過ぎるとダメなのか」


 最後のあけびを受け取ると、雅花は文葉を下に降ろし、幹都からもあけびを受け取って一つにまとめる。

 そのままトランクに放り込み、よろしくね、と声をかける。その間に皆も車に乗り込みシートベルトを締めていた。


「じゃ、最後のプルーンに向かいますか。このペースだと、出発してから二時間かからないぐらいで帰れるかな?」

「そうですね、相当早いですね、このクルマというのは。あ、方角はあちらの方に行って下さい」

「ハーイ了解。みんなシートベルト着けた? では、しゅぱーっつ」


 雅花がエンジンをスタートさせ、アクセルをゆっくり踏み込んだ。



  *****



 日が傾きだしうっすらと赤くなりつつある時間に、雅花達は広場に帰ってきた。

 トランクから収穫物を出し、皆に配っていく。

 ハイエルフ達はまだ体調が良くないようだが、せっかく採ってきてくれたのだから、とそれぞれ一口ずつかじり、さらに無理やりにでも口に入れようとしていたので、片山一家が止めた。栄養を取って体調を良くするはずが、逆に体調悪くしてどうするの、と。

 とりあえず、食べやすいだろうと言うことで、りんごの皮をむき薄く切って無理せず食べなさい、ということにした。

 クルンディは早々に眠りについていた。やはり無理をしていたようで、食事もとらずに横になり、すぐに寝息を立てていた。

 寝ているクルンディに片山一家は小さな声でありがとう、と頭を下げ、起きたら改めて礼を言おうね、と登志枝が子供たちの頭を撫でながら呟いた。

 よって、果物はほとんど片山一家で消費した。神獣もいくつか口に運んだが、まだ体調が戻っておらず、食べるとそれはそれで体力を使うため、程々で良い、とのことだった。病人に、重湯からはじめるようなもんかなー、と雅花は理解した。すりおろしりんごとかあればよかったのにねー、とも思ったが、さすがにすり下ろす道具はなかった。

 食事はクルンディが寝ているのと、他のハイエルフたちも少し口に運んですぐに横になっていたので、比較的静かに行われた。

 ちなみに子供たちにはプルーンが人気だったが、食べ過ぎるとダメとのことだったので、二個だけにしてあとはりんごとあけびにした。あけびもいざ食べてみると、皆気にせず口に運んでいた。というか、美味しかったので結構な勢いで食べていた。


「……さて、一応食べ終わりましたし、お話を始めましょうか」

「そうじゃな。すまぬが、ハイエルフの皆も起きてもらおうか。皆でしっかりと聞いた方がよいじゃろうからの」


 片山一家達が何者なのか。神獣やハイエルフ達が住むこの世界はどういうところなのか。

 大事な、皆にとってとても大事な話し合いが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ