お母さんの葬式
お母さんの葬式は静かに終わった。
いや実際には少し騒々しかったのだけれど私の心内は静かで、そして冷え切っていた。
今まで当たり前にいた母を失うというのはなかなか強烈な体験でお父さんも親戚のおじさんおばさんもかなり心配してくれた。
けれど私はすでに割り切っていたのだ。もっと言えばお母さんの事故を目の当たりにして気を失ったあと意識を取り戻した時には私はお母さんがもういないということを理解し頭の片隅に投げ捨ててしまったのだ。
私はお母さんの葬式で一度も涙を見せることなくお母さんの棺を見送り、これからはどうなるのか。
仕事に出ていくお父さんや未だに幼い私が出来るはずのない家事はどうなるのかを考えてしまっていた。
今考えてみればなんて不気味な子どもだろう。
けれどその不気味な子が私だった。
死んだのは実の母親で、今まで愛情いっぱいに育ててくれた母だ。当然お母さんは大切な人だった、はずだ。
喪失感はある。
けれどすでに私の心は前を向き、母の死という新小学1年生がなかなか乗り切るのに時間がかかりそうなそれを乗り越えていた。
私は自分が怖くなった。
自分には本当の意味で大切な人はいないのかもしれない、そんなことを考えひどく孤独感を味わった。
とても6歳児とは思えない思考だけれどそう考え付いてしまったのだ。
葬式のあとお父さんと話し、再婚をするつもりがないことやこれからは家政婦さんを雇うこと、私は今まで通りの生活をして小学校生活を送ってほしいことなどが伝えられた。
お父さんは医療メーカーの理事をしているのだ。お金に困ることはない。
私はそれを聞きながらつまらない毎日からあのしつこいくらいに私に絡んできていたお母さんが死んでしまったことを考え、更につまらない毎日になりそうだと心の中でため息をついた。