もうひとつの世界
朝焼け空の冷たい風が窓から吹き込んだ。
たゆたうカーテン越しの風景をふと眺める。
規則正しく点々と灯るマンション。
少し眩しい歓楽街の街頭。
暖かそうに、優しく光る誰かの家。
街は徐々に、柔らかく色付いていく。
何気ない風景のはずなのに、
なぜか鳥肌が立ち、
目が離せなかった。
朝焼けの熱のせいか、それとも、星の冷たさのせいか、そんな理屈はどうでもよかった。
いま、この一瞬は、僕の心を確かに揺り動かしている。
何気ない日常は、感情を持たぬまま通り過ぎていく。
それはまるで、記憶を失ったかのように忘却の彼方へと。
ただこの風景だけはそのどれとも違う。
心が強く、確信している。
光の揺れる街を、息をひそめた時間のなかで、何も言わずに、ただ見つめていた。
窓から覗く景色は、もうひとつの世界に見えた。
それは、僕という世界の、静かな一部だった。




