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1章 転生 06

「き、君……! 自分が何をしたか、分かっているのか……!?」


「はぁ……妙な事を言うなよ……。分かってるに決まってるだろ……? 俺の邪魔をするやつに、俺をバカにするやつに……ただ教えてやっただけだ! 自分が愚かだってことをな!!」



 何と言う事だ。

 これは……想像以上に大変なことになってしまったかもしれないぞ。



「仕方ない、強引にでも止めるぞ!」


「了解!」



 合図と共に、熟練ハンター数人が少年へと武器を向けた。

 こうなったらもう話し合いではどうにもできなさそうだ。


 余計な火種にしかならなさそうだから俺は離れていよう……。



「良いのか……? お前らもそこに転がっている奴みたいになりたいって言うんだな?」



 そう言う彼の表情は明らかにまともなそれじゃなかった。

 人を殺すことに躊躇いを感じない。そんな雰囲気がある。


 一体、元の世界でどんな目に遭ってきたって言うのか。



「皆、挑発には乗るな。新人とは言え、彼の能力はBランクにも匹敵する。下手に手を出せば俺たちだって無傷とはいかないはずだ」


「おいおい、勘違いしてもらっちゃ困るぜ。誰がBランクだって?」


「な……ッ!? 何だそれは……!?」



 少年の周りにいくつもの大斧が浮遊し始めた。

 それも一つ一つから元素魔法らしきオーラが放たれている。


 話によれば、ハンターは戦士系と魔法系のどちらかの適正しか持たないらしい。 

 となればあの力は紛れもなく異界の放浪者(ワンダラー)としての力。


 この世界の法則を逸脱した、イレギュラーな力と言うことなんだろう。



「そうか……ハンター登録の際にはその能力は隠していたと言うことか……」


「だって全ての能力を馬鹿正直に教えたらこういう時に対策されちまうだろ? まあでも、対策されたところで俺の勝ちは揺るがないだろうがな」



 彼からは物凄い自信を感じる。

 同時に、どこか物凄い劣等感も。


 あの力を魔獣にぶつけてやれば一躍英雄にだってなれそうなのに、どうしてそうしないのだろうか。

 まあ、その理由もべらべら喋ってくれそうだなこの分だと。



「それだけの力があれば、君はハンターとして高みを目指すこともできただろう。なのにどうしてこんな……」


「どうして、だって?」



 それきた。

 ポップコーンとコーラがこの場に無いのが惜しいくらいにドラマチックな話をお願いします。



「お前にはわからないだろうな。弱いが故に奪われるしかない人間の怨嗟が。俺はここに来る前、何の力も持たない人間だった。毎日のように虐げられる日々。それでも生きていけたのはあの子がいたからだ。可憐で、優しい子だ。彼女は俺の心の支えだった。なのに、奪われた。俺が弱いせいで」



 ……どうしよう、中々に重い話が始まってしまった。

 このままだと感情移入しちゃって彼を憎めなくなってしまうかもしれない。



「奪われた……だって?」


「ああそうさ。彼女は奪われたんだ。同じクラスの不良に」



 ……うん?



「彼女と俺は両想いだったはずなんだ。なのにアイツは俺から彼女を奪っていった。それから彼女は変わってしまった。俺を避けるようになって……クソッ、俺に力があれば……アイツから彼女を奪い返せたのに! 俺は弱い自分が許せなかった。だがそれ以上に、弱い俺をバカにするアイツがなによりも許せなかった。自分が他の奴には無い力を持っているからって、ふんぞり返るような奴がひたすら憎かった……!!」



 ……NTR?


 何だこれはたまげたなぁ。

 とんだ恋のドロドロを聞かされてしまった。


 いや、「だったはず」って言っている辺り両想いだと勘違いしているだけの可能性も……じゃあBSSじゃねえのこれ。

 お前が勇気出して先に告白していればまだ何か違ったんじゃねーのか。



「だからと言って、こんなことが許されると思っているのか……!?」


「黙れ!! 許すか許さないかはお前たちが決めることじゃない。力を手にした俺を止められるものなどいないんだからな。俺こそが法であり正義だ!!」


「タケル、避けろ!!」


「ッ!? しまっ……」


 

 大斧がタケルへと向かって飛んで行く。

 いくら彼の盾が頑強であったとしても、さっき少年が力を発揮した時の彼らの反応を考えればただでは済まないだろう。


 しかしそうなるよりも速く、俺は彼の前へ飛び出ていた。

 ……どうして?



「度が過ぎるぞ少年。その勢いでは確実に殺していた」


「なッ……またお前か! 今更何を言っているんだ。俺は最初から殺そうと……」


「では何故、貴様は彼を生かした? やろうと思えば一撃で葬れたはずだ」


 

 俺の体はそう言いながら最初に攻撃された男を指差した。



「あ、あれは……」


「まだ躊躇いがあったのだろう? 口ではああ言っておきながら、貴様はまだ人殺しへの抵抗があった。だから彼を殺せなかった。違うか?」



 えっ、そうなの?

 いやでも確かに、この力があるなら初っ端一人殺しておいた方が脅しにもなるか。


 あのサイコな表情からてっきり殺しに躊躇いなんて無いと思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。

 ね、一人称ってあてにならないんですよ。



「煩い! 煩い煩い煩い!! 俺は、俺は強者だ……! この力があれば何者にも負けはしない!!」


「そう思うか。では来るがいい。その力をもって、このオレを屈服させてみよ」


「はぁ……はぁ……言わせておけばァ!! 後悔しやがれェェッ!!」



 えっちょ、何を言ってるんですかメリアさん俺は何も準備とかしてな……あ、いやっ案外なんとかなるもんですねこれ。



「なッ……!?」



 地面から金属の柱を突き出させ、飛んでくる大斧を次々に弾き返していく。

 相当な速度で飛んできている大斧も、今の俺にとってはゆっくりにしか見えなかった。


 採掘の時もそうだけど、きっとこの体は身体能力も物凄く高いんだろう。

 更に言えばメリアの出す金属は魔力に対する耐性も高いのか、大斧が帯びている元素魔法のオーラも無力化していた。


 なるほどこれがメリアの力……の、一端か。

 もうチートっすね。



「ありえない……俺の力は最強じゃなかったのか……?」


「そう嘆くな。貴様は確かに強い。それこそサラマンダー程度なら瞬殺であろう。だが、オレがそれよりも遥かに強かったと言うだけのことだ」


 

 なんだか色々と恥ずかしい文章を口走っているものの、言っていることはかなり重要だった。

 サラマンダーを瞬殺って言うのなら彼の力はかなり強いんだろう。黄金英雄記において終盤のダンジョンに出てくる敵だし。



「信じられない……魔法系でありながらあれほどの攻撃を無傷でしのぐなんて」


「ああ、だがそれだけじゃねえ。生まれてこの方、見たことのない召喚魔法だぜありゃあ」


「そこの二人、離れていろ。まだ終わっていないようだからな」



 ……マジで?

 

 いやぁ完全にこのまま戦意喪失ルートだと思っていた。

 まあメリアちゃんさん程の人がそう言うのならきっとそうなんだろう。



「まだだ……まだ、俺は負けてない」



 マジだった。

 メリアの忠告通り、どうやら彼はまだ戦いを続けるつもりのようだ。

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