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1章 転生 05

 ダンジョンの中は意外にも石材で舗装されていて、どういう訳か光源すらあった。

 最初は採掘のために人間が設置したものかと思ったがどうやら違うようだ。


 理由は不明だが、何故だかダンジョンはどこも人工的に作られたかのような姿をしているらしい。

 もっともそのおかげで探索や採掘は容易になっているので人類にとってはありがたいことこの上ないみたいだが。


 そんなダンジョンに入ってから数分と経たず、最初の戦闘は起こった。

 出てきたのは三体のゴブリンだ。



「前衛は武器の準備を。後衛は僕の指示があるまで待機。何かあった時は新人の方を守ってください」



 リーダーであるタケルが指示を飛ばす。

 その瞬間にはもう前衛のメンバーが武器を構えていた。


 おぉ、凄い。もうこれだけで手練れだってわかる。

 明らかに歴戦の雰囲気を感じさせる動きだ。



「ググゲェ!」


 

 こちらの戦闘の意思を感じ取ったのか、ゴブリンの内の一体が最前列のタケルの元へと駆けだした。


 ゴブリンって言ったらゲームとかだと下級の魔物だけど、どうやらそれはこの世界でも同じらしい。 

 現に今、どっから見ても明らかにタンクである彼の元へ真っ先に向かっている。


 きっと何も考えていないんだろうな。

 そうじゃなきゃ、わざわざ狙ってくださいって言っているようなのを真っ先に襲ったりしない。 

 狙うべき相手はもっと他にいるだろうに。



「ふぅっ……はァァッ!」


「グゲァァ」



 案の定と言うべきか、ゴブリンはタケルの大盾によってあっけなく吹き飛ばされている。

 それを見て他のゴブリンは逃げる……わけでもなく、馬鹿の一つ覚えみたいにタケルの元へと駆けだしていた。


 ああ、うん。

 まあゴブリンってそんなものだよね。



――ゴッ……ズシャッ



 鈍い音と共にゴブリンたちは吹き飛ばされ、地面や壁へと強く打ち付けられる。

 それ以降、二度と動くことはなかった。


 結局ゴブリン程度では彼ら熟練ハンターの実力を確認することはできなかった。

 と言うより、そもそもこのダンジョン自体かなり危険度の低いところらしい。


 なので出てくる魔獣もゴブリンとか小型の獣型とかの魔獣ばかりで、彼らが本気を出すまでもないようなのがほとんどなんだろう。

 その点は少々残念ではあるけど、それだけこのダンジョンが他と比べて安全ということでもある。


 正直なところ危険なのは嫌なので俺としてはそっちの方が助かるまであるかもしれない。



「ゴブリン三体の討伐を確認。警戒しつつ、先へ進みましょう」



 ゴブリンの絶命を確認したらしいタケルの指示が聞こえてくる。

 見ればさっき倒したはずのゴブリンの姿が消えていた。


 なるほど。

 ダンジョン内で倒した魔獣は戦利品だけ残して消失するって言うのは本当なのか。

 自分で解体したり剝ぎ取りしたりする必要がないのは助かる。


 逆に森で出会った奴らは倒したあともそのまま残っていたっけか。

 ハンターの人たちはダンジョン外で好き好んで狩りをしないらしいけど、理由としてはこれが大きいんだろうな。


 一応ハンター連盟のところに持っていけば解体してくれるとのことだが、そこまで死体を持っていく労力を考えたら……って感じか。



 ――それからも数度魔獣と出会ったものの、どれも危険度の低い魔獣だった。

 当然その程度の魔物だと速攻で戦闘が終わる。

 なので想像以上にあっけなく採掘地点までたどり着いたのだった。



「では我々が周囲を警戒しておくので皆さん採掘の方をお願いします」



 タケルの指示と共に魔鉱石の採掘が始まった。

 皆それぞれツルハシを使って鉱石を砕いていく。



「フンッ! そりゃァッ!」



 中にはガントレット的なもので殴って粉砕している人もいるけど、多分あれは例外中の例外だと思う。

 恐らくは戦士系の中でも格闘に長けた人なんだと思われ。


 なので俺は他の人にならってツルハシを振るう。

 幼女パンチで鉱石を砕くなんて野蛮なことはしない。

 メリアちゃんのかわいいおててが傷ついたらどうするのか。



「お、おい見ろよあれ……凄いパワーじゃないか?」


「あんなに小さな子があれだけの力を……やはり異界の放浪者(ワンダラー)と言うのは凄まじいな」



 一心不乱に採掘をしていたところ、何やら俺について話している声が聞こえてきた。

 どうやら俺の採掘速度……と言うかパワーはハンターの中でも一目置くレベルらしい。


 まあ、力任せにツルハシを振っているだけではあるんだけども。


 ごり押し採掘とは言え、まるで自分自身に採掘速度上昇が付与されているみたいだ。

 ビーコン要らずだなこれは。



「おい、お前。少しはやれるみたいだが、あまり良い気になるなよな」



 ツルハシを振るう。

 うおォン、俺はまるで人間掘削機だ。



「聞いているのか? お前に言っているんだぞ」



 ……もちろん聞こえてはいる。

 だがしかし、今の俺は下手に口を開けば面倒事しか起こさない火薬庫。


 ましてやこの類の輩に対して、メリアの性格はあまりにも相性がよろしくない。

 火に油を注ぎ続けるようなものだ。


 なので無視をするしかない。

 頼むから早くどこかへ行ってくれ。 



「いい加減に……! ッ!? なっなんだ、この力は……!!」



 ガシッと腕を掴まれる。

 ゆっくりとそちらを見ると、声の主は一人の少年だった。

 メリアよりも少し年上くらいだろうか。


 けどこれは不味い。

 俺の……メリアの邪魔をしようものなら彼女が何と言うか。



「ほう、オレの邪魔をしようと言うのだな。しかしオレは寛大だ。すぐにその薄汚い手を離せば見逃してやろう」


 

 ウワー!

 やっぱりこうなった! 


 どう考えてもそれで手を離すような相手じゃないでしょうに。

 明らかに喧嘩を売ってるよねこれね!



「何だと!? ぐぬぅ、同じ子供だと思って馬鹿にしやがって……!! 言っておくが俺も異界の放浪者(ワンダラー)だ。それもお前よりも遥かに強力な力を持った……な!!」


「そうか。では見せてみろ。その力とやらをな」


「い、良いのか……? ハハッ……後悔するぜ」


 

 俺の発言があまりにも堂々とし過ぎているからなのか、少年はやや動揺しているように見える。

 けど、すぐに彼はどこからともなく大斧を取り出して構えて見せた。


 恐らくは召喚魔法。

 それもあの自信からすると相当に強力なもののはず。


 とは言え、この状況で仲間であるハンターに武器を向けることの意味を彼は理解しているんだろうか。



「君、何をしているんだ!」



 騒ぎを聞きつけたのか、瞬く間に数人のハンターが少年を囲い込んだ。

 まあ、そうなるな。


 これがもっと治安の終わり散らかした中世風異世界とかならやったもん勝ちだったんだろうけどね。

 生憎とこの世界の人類は法治国家を築いている。


 だから、先に手を出した方が負けなのだ。


 まさしく戦わずして大勝利……ってね。

 流石にこの状況なら彼も矛を収めて――



「ぐぁっ……!? な、何を……」



 ……おいおい、マジかよ。

 コイツ、やりやがったぞ……?

本作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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