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1章 転生 04

 ハンターになってから数日。

 俺は座学を中心にハンターの基礎を叩きこまれる日々を送っていた。


 戦闘に関しては戦士系や隠密系なら武器の修練とかもあるんだろうが、俺は魔法系らしいからな。

 基本は魔法の仕組みなんかの勉強をすることになっている。


 なんでもこの世界における魔法は「元素魔法」と「召喚魔法」に区別されるとのこと。

 そして元素魔法は更に火、水、風、土、光、闇の六つに分けられ、そこでも各種適正が存在するらしい。


 一方で召喚魔法はその名の通り何かしらを召喚することに長けた魔法なんだと。

 使い魔だったり武器だったり、まあ色々だ。


 んで俺の適性が何処に類するのかと言えば、召喚魔法である。

 錬金術の類はこの世界で体系化されていないのか、召喚魔法の一部と言うことになっていた。


 もっとも、メリアの力をもってすれば各適正における基礎魔法と呼べるものはあらかた使用できるみたいだが。


 しかし、そんな内地でぬくぬく生活も今日で終わり。

 とうとう実戦訓練の日が来てしまったのだ。


 内容は至って単純。

 街から少し離れた位置にあるダンジョンに熟練ハンターと共に潜って荷物持ちと採掘をする。これだけ。


 ちなみにダンジョンと言うのはこの世界に存在する不思議な迷宮で、魔獣がわんさか湧いてくる恐ろしい代物だとか。

 何故そんな恐ろしいところにわざわざ人類が向かわなきゃならないのかと思うだろうが、その理由は二つある。


 まずシンプルに外に溢れ出る魔獣を減らすため。

 ダンジョンの内と外では魔獣の出現数が段違いらしく、ダンジョンを放置すると手が付けられない程の数が外に出て来てしまうようだ。


 もう一つはエネルギー問題。

 都市を維持するために必要なエネルギーは魔鉱石と言う未知の鉱石素材から得ているようで、ダンジョン内にしか存在しないコイツの採掘を定期的にする必要があるのだと。


 魔獣を相手にできるのはハンターだけみたいだから必然的にその仕事もハンターが請け負う事になる。

 いくら近代兵器で武装を固めた特殊部隊だろうが、魔獣にとっては貧弱な人間でしかないらしいし。


 まあ、それだけハンターと言う存在は人類にとって重要なものってこった。

 そりゃ都市どころか国が大事にする訳だよ。


 んでそんな危険なところにこれから俺は向かう訳だが……本当に大丈夫なんだろうな?

 新人ハンターは後ろで見ていればいいって話だけど、流れ弾とか来ないよな?


 ……不安だ。 



――――――



 街を出て数十分。

 自衛隊が使っていそうな装甲車に乗せられた俺たちハンターは今なおダンジョンへと向かっている最中だ。

 どうやらダンジョンまでは結構距離があるらしい。


 まあ、当然と言えば当然か。魔獣の脅威を少しでも減らすためには距離が離れている方がいいだろうし。

 と言うかそうでもないと街の門があんなに無防備なのおかしいもんね。


 話によればハンターの人が自由に出入りできるように普段は開けっ放し。

 魔獣が近づいたら勝手に閉まるうえに迎撃用設備が飛び出てくるとかなんとか。


 ただ、ダンジョンまでの距離が遠いとなるとそれはそれで問題も出てくる。

 俺にとっては……の話だが。

 

 何が問題なのかって?

 ……他のハンターとの会話だよ。


 今の俺は口を開けばメリア語が飛び出してしまう。

 そしてメリアはお世辞にも社交性があるタイプとは言えない性格だ。


 そんな状態で話しかけられようものなら……。



「聞きましたよ。貴方も新人なんですよね? 私もハンターになったばかりで、今日が初めてのダンジョン遠征なんです。お互い頑張りましょうね!」


「ほう、それは奇遇だな。しかしオレを新人呼ばわりしてもらっては困る。稀代の天才錬金術師たるこのメリア・ゴルドランはいかなる場所、いかなる状況でも常に実力者なのだからな」


 

 こうなる。


 ふざけるなよ!

 何が「いかなる状況でも実力者」だ。新人であることに変わりは無いだろうが!


 

「えっと……?」



 ほら見ろ、話しかけてくれた隣のお姉さんも困惑している。 

 どうするんだよこの空気。



「あ、あぁ……はい。そう言う……お年頃ですもんね?」



 ああ、すみません。

 もう本当に。


 くそぅ、なんてことだ。完全に気を使わせてしまった。

 確かに見た目は少女だからそう言う風に思われても仕方ないんだけどさ。


 うぐ、彼女の困惑に混ざる慈悲の表情が非常に心に刺さる。

 穴があったら入りたい。同時に土下座したい。


 ……こうなった以上、もはやできるだけ人と話さない方がいいのかもしれないな。


 などと、この先の憂鬱を考えていると目的地に到着したのか車の動きが止まった。

 全てはこれからだって言うのに、なんかもう凄い疲れたよ。



「それでは新人の方は後方で荷物の運搬をお願いします。それと戦闘の際は極力前に出ないように。魔獣と接触した場合は全て我々が対応しますのでご安心ください」



 車から降りた俺は今回の遠征におけるリーダーの指示に従い後方部隊に混ざった。

 と同時に荷物であるリュックを背負う。


 うん。やはりと言うか、大した重量ではない。


 ハンターは身体能力が非ハンターの人間に比べて圧倒的に高いらしいけど、ハンターとしての力に目覚めたばかりの新人に関して言えばまだまだその能力は低いらしい。 

 だからなのか重量物はほとんど入っていないようだ。

 

 実際、入っているのは比較的軽めの予備の装備と非常食だけ。

 大きめの鎧や武器、水や回復用のポーションとか、そう言う重い物はある程度ランクの高いハンターの担当になっていた。


 話によるとFランクからAランクまであるハンターランクの中でもDランク辺りからは目に見えて人間離れした力を発揮する人が多いらしい。

 きっと重量物を担当している人もその辺りのランクの人なんだろう。


 つまり、戦闘を担当している熟練ハンターの人たちはそれすら優に超えているということになる。


 はたしてその力がどれくらいのものなのか。

 魔獣に対して、この世界の人類がどの程度抗えているのか。

 そして今の俺のメリアとしての力がどこまで通用するのか。


 それがこの遠征でわかるのだろう。

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