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1章 転生 03

 え~……非常に不味いです。

 ただいま夕暮れ。ロリ一人、一文無し、都心にて。


 中世ヨーロッパ的な治安と比べればマシではあるんだろうけど、夜中にロリが一人寝ていたら絶対面倒なのに絡まれるって。

 それこそ脳裏によぎるのは『誘拐』の二文字。


 人身売買でガキモツとばされちまうといけないし、とりあえず遅くまで人がいそうなデカめの駅にでも向かうか?

 いや待て、こういう時は交番とかの方が良かったりする……?


 うーん、駄目だ。補導されて終わりだ。

 なんならこの世界における保護者のいない子供の扱いがどんなものか分かったもんじゃないし最後の手段にはなりそう。


 現代日本なら色々と社会福祉に頼れそうなものだがここは異世界。

 これだけ発展していたとしても人権周りまで日本と同じだとは言い切れない。


 クソッ、せっかくこれだけ文明が発達してるってのになぁ。金がないんじゃどうしようもないよ。

 この分ならカプセルホテルやネカフェなんかもありそうなのに……いや、どちらにしろ子供一人じゃ利用できないか。


 ……とかなんとか考えている間に図書館は閉館の時間。

 俺は外に追いやられ、無事に行き場を失いましたと。


 さてどうするか。

 とりあえず近場の公園にでも行ってみるか?

 中に入れるタイプの遊具とかあるかもしれないし。


 それかいっそのこと人のいない街の外に……いや、それこそ駄目だ。

 人の脅威はなくとも魔獣の脅威がある。


 ちなみに魔獣と言うのは森で出会ったあの獣たちの総称。

 どうやらこの世界の人類は奴らとの戦いの末、今の「分散型都市開発」に至っているらしい。


 人の数が多い所には魔獣も集まりやすいから少しでも被害を分散させるべく各所に都市を点在させているのだとか。

 街の規模が大きすぎない方が防衛もしやすいだろうから中々理にかなっていると思う。


 まあそんなことは今はどうでもいい。

 今の俺に必要なのは無事に朝を迎える方法なんだから。


 せめて野宿用の道具があればまだ違うんだろうが、生憎と今の俺にそんなものはない。

 着の身着のままと言ったところか。マジで一文無しどころかまともな所持品すらなかった。


 いや、待て。

 冷静になって考えてみれば今の俺はメリアであり、凄腕の錬金術師だ。

 であれば、可能なんじゃないか。錬成が。



「ふむ、試してみる価値はあるだろう。当然、成功はするだろうがな」



 メリア語を呟くと同時に俺は深く息を吸い込み、強く思い描いた。

 最低限一晩過ごせるようなテントを。


 すると俺の手が光り輝き、次の瞬間には折り畳み式のテントが地面へと転がった。

 成功だ。どうやら今の俺はメリアと同じく道具の錬成も行えるらしい。


 ほんのわずかに体に違和感を覚えるのは魔力を消費したからだろうか。

 もっともメリアの持つ魔力量がゲームと同じなのであれば大した問題ではなさそうだが。


 何はともあれ、これで野宿はできる。

 公園でテントを使って野宿している人がいたら不審者でしかないが、この際あまり贅沢は言っていられないし仕方がないことだと割り切るしかない。


 そう、いくらなんでも公園にあるテントの中を覗こうとする人はいない。

 面倒事に自ら首を突っ込むような人間でない限り。


 それじゃあひとまず今日は寝て、今後のことは明日考えるとしよう。




――――――




「……気付いたら違う世界にいて、身寄りもお金もないから公園で寝ていたと?」



 俺は今、事情聴取と言うか任意同行と言うか職務質問と言うか、とりあえずそんな感じで最寄りの交番へと来ている。

 と言うのもだ。朝、公園を通りすがった人がテントを怪しんで通報したらしい。


 まあ、案の定ではある。そりゃ怪しいもんな。

 逆に言えばこの世界ではしっかり警察や司法が仕事をしているということでもあるのでひとまず安心……していいのかこの状況。


 異世界から来たなんて信じてもらえるかわからないし、子供の戯言として受け取られたらそれこそ来るはずの無い保護者を待ち続けることになるが?

 


「これ……もしかして異界の放浪者(ワンダラー)ですかね」


「だろうな。まさかこんな小さな子供まで……」



 おっと、なんだか様子がおかしいな?

 深刻そうな雰囲気から察するに、恐らく今の俺みたいな境遇はこの世界じゃ珍しくないとみた。

 

 まあ、そうでもなきゃメリアみたいな口調の子共をこんなにすんなり受け入れたりしないか。



「せ、先輩……どうします? いくら力を持っていたとしてもハンターとして戦わせるには流石に年齢が低すぎますよこの子」


「確かにそうだが、残念ながらそれを決めるのは俺たちじゃない。残酷かもしれないが、この子の扱いは上に任せるしかないだろう」



 小声で会話しているみたいだけど、ばっちり聞こえている。

 何やら物騒なことを言っているのも丸聞こえだ。


 確かハンターってのは魔獣から人類を守るために戦っている人たちのことだったか。

 昨日読んだ本によれば魔獣と戦うための力に目覚めた人間はハンターになることを強制されるとのことだが、恐らくはワンダラーとか言う存在も同じなんだろう。


 

 ……そしてそれは実際同じだったようだ。

 あの後、俺はハンター連盟なる組織の人たちに引き渡され、そのままハンター連盟のビルへと連れていかれた。


 こうなってしまえばもう、恐らくハンターになる未来は変えられないのだろう。

 魔獣と戦うなんてできればやりたくないんだけどなぁ。


 しかし当然そんなことを言い出せる空気でもなく、事は進み続ける。


 まず行ったのは色々な機器を用いた計測。

 ハンターとしての適性などを測る目的があるらしい

 それによれば俺は魔法系だとかなんとか。


 まあメリアの能力を考えれば妥当と言うか当たり前だろう。

 一応他にも隠密系とか戦士系とか治療系とか多々あるらしいが、それら全て彼女には合致しないからな。

 もっとも、それらに近いことができないこともないだろうけど。


 と、そうして適正が分かった後、今度はハンターと魔獣について色々と聞かされた。

 と言っても大体は昨日本で読んだ内容と相違ないものなのでほとんど聞き流しだったが。


 大まかに言ってしまえば魔獣の脅威と人類の戦いの歴史についての話だな。

 その中で俺みたいな異世界からやってきた人に関して少しだけ触れていたものの、特異な能力を持っていること以外は詳しく分かっていないらしい。


 ただ、魔獣と戦える力を持つ者を都市全体及び国全体で優遇しますって話には興味があった。

 ハンターとして活動するうえで色々と支援をしてくれるのだと言う。

 報酬金とは別に、最低限の装備の提供や寮の用意まであるらしい。


 こうなってくると一文無しな俺にとってはありがたすぎる話と言えた。

 魔獣と戦いさえすれば衣食住に困ることがないってことなんだからな。


 いや、その「魔獣と戦う」って部分のハードルがハチャメチャに高くはあるんですけど?


 まあ最初の内は熟練ハンターに同行して荷物持ちとかの雑用をしていればいいみたいだし、今すぐに戦う必要があるってわけじゃないらしいが。

 その間に魔獣や戦いに慣れろってことか。慣れるものなのか?


 ……なんにせよ、俺のここでの生き方は決まってしまったわけだ。

 もう、覚悟を決めるしかないんだろうな。

本作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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