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2章 隠しダンジョンと魔群大陸 05

 聖域。そうか聖域かぁ。

 確かにそう呼ばれるにふさわしい神々しさがこの場所にはある気がしてきた。

 さっさと移動しておくべきだったのかもしれないな。


 いや、ここが未知の場所と言うのならユイの言葉通り下手に行動するのもあまりよろしくはないか。



「おい、何か言ったらどうなんだ!」


「まあ待つがいい。オレたちは敵ではない。だからその武器を下ろ……」


「キーハッハッハァ!! 武器だ! 敵だ!! 死にてェ奴からかかってきなァ!!」



 ……はい。

 穏便にどうにかする手段が潰えました。



「き、貴様ぁ!? 何をしておるかあぁぁ!! こちらから手を出したらそれはもう戦争だろうがたわけええぇ!!」



 おお。

 いや、おおじゃないが。


 待て待て、メリアちゃんがこんなに動揺しているところを見られるのは珍しいんだ。 

 これはまさしく「おぉ」だろ。



「はいはい、駄目ですよエリちゃん」


「ウガッ!?」



 あ。

 ユイがあの時と同じように取り押さえた。



「ごめんなさいね。この子、気が昂るとすぐこうなっちゃうんです」


「ふ、ふざけるな! あれだけの敵意を見せられても武器を収めろと言うのか!?」


「あらあら……」



 まあ、そうなるよな。

 俺だって相手の立場でさっきのエリの様子を見ていたらどう考えたって敵としか思えない。


 とは言えこのままじゃいつまでたっても平行線だ。

 いやむしろこっちが勝手に聖域に入り込んでしまっているのなら向こうの言い分の方が正しいまである。

 

 うーむ、どうしたものか。

 こちらが先に動けば向こうには正当防衛と言う大義名分が。

 向こうが先に動いたとしても聖域からの余所者の排除と言う名目がある。

 

 あれ? 

 詰んでね?

 チェックメイトにはまったのだ? 



「はぁ……仕方がないか。こうなれば実力行使も視野に入れねばならん」


「えぇっ!? 戦うんですか!?」


「んー……多分そうしないと、どっちにしたって僕たちただじゃすまないんじゃないかな」



 どうやらエルシーもメリアと同じ考えのようだ。

 正直なところ、俺自身もそうしなければいけないと考え始めている。


 このまま無抵抗で捕らえられた場合、何をされるかわかったものじゃない。

 あの人たちの恰好から考えると下手すりゃ死刑すらありえる。

 だってなんか魔女裁判とかしてそうな雰囲気あるもん!


 だから、やるしかない。

 戦って生き残る。戦わなければ生き残れない。

 それしかないぜ。



「そこの人たち、こっち!!」


「ッ!? な、何だ!? うわぁ目が!!」


「何事か!?」



 突如、目の前が眩しく光り輝いた。


 幸いなことにメリアにはある程度の閃光耐性があるから薄っすらとだが周りが見える。

 どうやら隠れていた誰かが閃光魔法か何かを放ったようだ。



「ま、眩しい……!? 何も見え……うわぁっ!?」


「案ずるな、俺の手を握っていれば何も問題はない」


「はっ、はい……!」


 

 完全に視力を持っていかれているアイリの手を握り、閃光魔法を放ったであろう人影の元へと走る。



「エリちゃんは私が抱えて行きますのでご心配なさらず!」


「僕はきちんと見えてるから問題ないよ」



 よし、他三人も問題はなさそうだな。

 さて……この先にいるのが敵なのか味方なのかはまだわからないが、ひとまず今は走り続けるしかないだろう。



「こっち! 急いで!」


 

 視力が戻ってきたので改めて声のする方を見る。

 すると、そこには竜のような姿をした魔獣と共に少女がいた。

 

 なるほど、あの子が人影の正体か。

 でもあの魔獣は一体……召喚系の力で呼び出した召喚獣か何かだろうか?



「大丈夫? 全員いるよね? それじゃあこれから飛ぶから、しっかり捕まっていてね! ハイヤー!!」



 五人全員が魔獣に乗ったのを確認すると、少女は掛け声とともに魔獣に指示を出した……んだと思う。

 現に今、俺たちを乗せた魔獣は空を飛んでいる。



「あ、目が見えるようになってき……た? うええぇぇ!? な、なんで空……!? 跳ぶって、てっきりジャンプの方かと……!!」


「高い所が怖いならあまり下は見ない方がいいよ」


「は、はいぃ……そうしますぅぅ……」



 どうやらアイリは高所が苦手らしい。

 いや、普通は苦手だろ。高所が好きなんて頭のネジが外れた奴くらいなものだよ。

 俺だって生前は苦手だった……はずだ。

 

 そのはずなんだが、今はそこまでだった。

 もちろん落ちること自体への恐怖はあるが、足がすくむほどのそれじゃない。

 恐らくこれもメリアパワーの一つなんだろう。



「うーんと、これくらい飛べば大丈夫かな? 急降下するから衝撃に備えてね」



 少女の言葉通り、ジェットコースターで急激に下る時のような衝撃がグンとやってきた。

 久しぶりの感覚だ。ただこれもメリアパワーなのか、幾分か恐怖感が消えている。


 この分だと幽霊とかに関してもそうなのか?

 もしかしたら今の俺は遊園地を楽しめない体になっているのかもしれない。



「もう降りても大丈夫だよ。うーんと……お姉さん、大丈夫……?」


「は、はい……大丈夫……です」



 決して大丈夫ではなさそうな顔をしたアイリが魔獣から力なくポテっと落っこちた。

 とっくに限界を迎えていたようだ。

 きっと根性だけでしがみついていたんだろう。



「ありがとうございました……えっと……」


「ウチはニーニャ。で、この子はドラブロ」


「グウァ」



 おぉ、召喚獣に名前を付けているのか。

 確かにその方が愛着が湧くかもしれないな。

 俺も錬成した武器に名前とか付けてみるか?


 出でよ、ゴールデンハルバード……みたいなね。

 中二病かな。恥ずかしいからやっぱやめようか。



「ドラブロ……さん? 見た感じ飛竜でしょうか。こんなに立派な魔獣を召喚するなんて……ニーニャさんは凄いハンターなんですね」


「召喚……? ううん、ウチはテイマーだからこの子は正真正銘ウチが卵から育てた子だよ」


「育てた……? えっ? 卵から魔獣を?」


「うん。テイマーは魔獣と絆を深めて共に戦うんだ」


「そんなことが……可能なんですね」



 アイリの表情はまさに狐につままれたような驚きのそれになっている。

 ぶっちゃけ、俺もメリアの体じゃなければ同じような顔をしていただろう。


 なるほど、魔獣を育てる……か。

 ハンター連盟の持つ情報にも、図書館で読んだ本にも、そんなことができるとは一切書かれていなかった。


 だがここが別の大陸であり、未知の土地だと考えれば決して不可能ではない……ということなんだろう。



「それより、ハンターって言うのがよくわからないんだけど……あ、もしかして! ちょっと皆、ウチと来てくれる!?」



 ニーニャは慌てたように再びドラブロへと乗った。


 とは言え、このままニーニャに着いて行っていいのだろうか?

 彼女を信用しても問題はないのだろうか?


 正直、俺たちならこのまま逃げることもできるだろう。

 まあ……助けてもらった手前そんなことはできないか。

 

 と言うより、メリアがそうはさせてくれない。

 好奇心旺盛なこの体はきっと問答無用で彼女に着いて行ってしまうだろうし、実際着いて行ってしまった。


 ああもう、俺しーらない。

 ホイホイついて行ってあーんなことやこーんなことになっても俺知らないからね!

本作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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