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2章 隠しダンジョンと魔群大陸 04

 幸いなことに、あれ以降は目立ったヤバイ奴が出てくることもなかった。

 多分アレが異常だったんだろうな。


 なので俺が錬成で出した非常食なんかを適宜食べながら、俺たちはダンジョンをひたすら進み続けた。

 そしてついに――



「あれ見てください……! 絶対に外の光ですよ……!」



 ……外の光が、見えてきたのだった。


 大丈夫だよね?

 期待させて最後の最後にとんでもねえラスボスが出てきたり……とか、ないよね?


 いや、その心配はいらないか。

 ここに来るまでに少しずつ魔獣が弱くなっていったんだ。


 ダンジョンは入口に近い場所ほど出てくる魔獣が弱いらしいからな。

 おそらくはここが「入口」なんだろう。



「良かった……これで私たち無事に出ら……れ?」


「ふむ、どうかしたのか」


「えっと……ここ、本当に外ですよね……?」



 一足先に浮足立った感じでダンジョンの外へと出たアイリが妙なことを言っている。

 正直なところ彼女の言葉の意味がよくわからない。


 だって外は外だろ。

 いやこれ外なのか?

 外か。太陽あるし。

 

 じゃあこれ……どういう状況なんだ?



「ほう……? これはまた、随分と面妖なものだな。入った場所とは植生が違いすぎるではないか」


  

 なんてことだ。メリアちゃんですら少し動揺している……だと?

 当たり前か。ダンジョンから出たら辺り一面見たことのない植物で埋め尽くされているんだから。


 もちろん異世界ならそう言う事もあるのかもしれない。

 だが、少なくとも都市周辺で見られた植物は地球でも見覚えのあるようなそれだった。


 なのにここの植物はこう、何と言うか……世界観そのものが違う。

 どうぶつの森からブラッドボーンの世界に変わったみたいな、世界観の飛躍を感じる。

 

 え?

 俺たちもしかして異世界転移でもしちゃった?

 嘘だろ。ただでさえ転生しちゃってるのに、異世界要素を入れ子構造にするんじゃないよ。


 あ、待って。

 向こうに見える巨大な木には見覚えがあるぞ。

 確かこの世界に来たばかりの時に見たやつだな。


 ……近くね?

 あの時って雑に考えても数百キロは先に見えたような気がするんだけど。

 それこそ東京から富士山くらいの距離感はあったような。


 今これさぁ……数十キロとかじゃないか?

 マジで?



「メ、メリアちゃん……あの木、見えますか? 幻覚じゃないですよね……?」


「安心するがいい。オレにもはっきりと見えている」


「一応言っておくけれど、僕にも見えているよ」



 どうやら全員、あの木が見えているらしい。

 俺の見間違いとかではないことが確定してしまった。


 むしろ見間違いであってほしかったねこれは。



「あれ、巨大樹って呼ばれている木なんですけど……魔群大陸って言う別の大陸にあるはずなんですよね……」



 ……うん?

 別の大陸?


 いや、待ってくれよ。

 あの時見た距離感だとそこまで離れては……ああ、いや、うん。


 これ、あまりにもデカすぎて距離感バグってただけだわ。



「ふーん。それじゃあ僕たち、別の大陸に来ちゃったってこと?」


「そうなるな」


「ど、どうして二人ともそんなに落ち着いているんですか!? 異界の放浪者(ワンダラー)だからですか!?」



 なあに、安心してくれ。

 俺もメリア語が冷静なだけで、内心ではめちゃくちゃ慌てふためいているぜ。

 今すぐ叫び出して走り周りたいくらいにはな。


 けどそうすると絶対にアイリさんまで発狂するだろうから、結果的にメリア語には助けられている気がする。



「ふむ……考えられるとすれば、ダンジョンの一帯が一種のワープ装置になっていた……と言ったところか。直接転移魔法を使われた形跡がないことから考えても可能性は高いだろう」


「そ、それじゃあ元の道を戻れば帰れるんですね……!」


「転移が一方通行でなければな。しかし、戻ったところで道が崩落していることに変わりはない。無理に瓦礫を払いのければ再び崩落する危険性もある。いくらオレとて、地下深くで生き埋めになれば其方らの無事は保証できん」


「あ……はい、そうですよね……」



 不味い、アイリさんの表情が目に見えてズーンと暗く……!

 せめて何かこの状況を打破できる朗報でもないだろうか。



「おや? あなた方は……」



 おっと、何やら後ろから声が聞こえてきたぞ。

 それも聞き覚えのある声だ。

 これは確か……。



「えっ……? うそ、あのAランクハンターのユイさん!? ど、どうしてここに!?」


 

 そうだ、ユイだ。

 あの時の隠密系Aランクハンターだ。


 あっ、待ってくれ。

 と言うことは……だよ?



「キ、キヒ……」



 うわああぁぁ!

 なんてこった、あの時の倫理観ぶっとびガールもいやがるぜ!!



「キヒッ……こ、この間はごめんなさい……。アタシ、熱くなると周りが見えなくなっちゃって……」



 ……うん?

 あれ、なんか思っていたのと違う。


 ああ。人は見た目で判断するなってやつか。

 いやまあ見た目って言うか、一度とんでもない姿を見ているんだけどね。



「エ、エリさんまで!? どうしてここにAランクハンターのお二人が!?」


「それがダンジョン遠征中に天井が崩れて来て、部隊の方々とはぐれてしまいまして。一旦外に出て合流しようとしたところ……どういう訳か外はこの有様。そこにあなた方がおりましたので、こうしてお声がけさせていただいたのです」


「お二人も私たちと同じ状況だったんですね……。となると、やっぱり来た道を戻るのは難しい……ですか?」


「残念ですが、そうなるでしょう。崩落しているダンジョンを通って外に出るのはいくらAランクハンターと言えど危険。とくにエリちゃんは暴れると手が付けられませんから」


 

 納得。すげえ納得。

 あの暴れっぷりの無法ガールがただでさえ崩落気味なダンジョンで暴れてみろ。

 俺たち全員生き埋めになって終わりじゃ。



「……とは言ったものの、あの巨大樹の近さを考えればここが魔群大陸であることは確実。未知の大陸で下手に動けば相応の危険は伴うでしょう」


「そんな……。それじゃあ私たちはどうしたら……んむっ!?」


「大丈夫です。必要以上に怖がることも、心配することもありません。下手に動かなければよいだけなのですから」


「むがっ、えっあっ……んなっ……!?」



 おぉ、アイリが優しく抱擁されている。

 なんとも恐るべし包容力。流石はAランクハンターのユイだ。色々と、デカい。


 いやそれはランクとは関係が無いだろいい加減にしろ。セクハラ親父か俺は。



「あっ、えっと……」


「うふふ、落ち着きましたか?」


「はい……ありがとうございました」



 アイリは頬を染めながらユイに礼を言っている。

 凄いな。完全に虜になってやがるぜ。釘を食え。



「それじゃあ次は僕の番かな?」


「うふふ、構いませんよ。どうぞ、こちらに……」



 いや、エルシーは別に動揺も混乱もしてないでしょうに。

 完全にただの私利私欲やんけ。


 けど、確かにあの包容力は凄まじい。

 包み込まれたい。そう思うのも無理もないだろう。ズルい。


 だが俺は体こそメリアちゃんだが中身はれっきとした男!

 プライドが、許さんのだ……!

 あとシンプルに罪悪感。

 


「えへへー。それじゃ遠慮なく……」 


「待て、エルシーよ」



 うわっびっくりした。

 急にどうしたんだ俺……いやメリアちゃん。 



「うぉっと……!? 一体なにごと? まったく、いいところだったのにー」


「何者かが数名、ここに近づいているようだ。ここは未知の領域のようだからな。警戒を怠るなよ」



 何者かが近づいているって……そんな漠然と言われてもなぁ。

 せめてもう少し、何か情報をくれませんか?



「おい、何者だお前ら!!」



 おおぅ、どうやらもう来ちゃったらしい。


 ゆっくりと、声がした方を見る。

 するとそこには数人の男性がいた。


 ただ、その恰好は街で見たものとは大きく違っている。 

 これまた世界観が違う……と言ったところだろうか。

 武器を持っている点はハンターと一緒だが、どこかファンタジー要素の強い服装だ。


 こうなると厄介なのは、恐らく向こうも俺たちと同じように思っていると言う点だろう。



「見たことの無い恰好をしているな。お前ら、どこから来たんだ? ここが聖域だと知っての蛮行であれば容赦はしないぞ」



 ほらね。向こうからしても俺たちって異質な存在なわけよ。

 でもって、ここは聖域とか言うらしい。


 なので今の俺たちは完全に、聖域を荒らした犯罪者……ってコト!?

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