表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/23

016:手に入れた戦利品

 ワールドで初の戦闘は大勝利で終わった。

 通信設備や対空ユニットなどの破壊を済ませて。

 残りのメリウスなども適当に潰しておいた。

 俺は敵から鹵獲したNー7cという機体名のメリウスを強奪した。

 大型のバックパックは俺の予想通り外付けのレーダーユニットであったが。

 これは俺にとっては重りでしかないので早々にパージしておいた。

 俺は奪ったメリウスを駆り、そのまま次の拠点を目指していった。


 空は少し暗くなっていた。

 中継拠点からそれなりに移動したが。

 まだ、次の標的は見えていない。

 整地された道を進みながら、周りの背の高い木々などを見つめて警戒する。

 隠れ潜んでいて攻撃されたらひとたまりも無いからな。


 ずしずしと音を立てながら地面を走行していく。

 これで遅かれ早かれ、敵に俺の存在が気づかれるだろう。

 始末した敵兵が戻って来るまでにはおそよ十分ほどで。

 外部の連絡手段を使って仲間に知らせているとすれば、他の敵たちも既に警戒態勢に入っているだろう。

 その前に、あともう一つの中継地点くらいは叩いておきたい……と、その前にだ。


 マップを展開し現在地を確認する。

 すると、敵の領地内であるものの。

 まだまだ中央からは遠かった。

 対空ユニットを置いていたのも、有志たちの領域が比較的近いからで。

 中央へと近づけば近づくほどに敵の装備やユニットに関してもゴリゴリに固めてくるだろう。


 さっきのように簡単にはやられてくれないかもしれない。

 そんな事を思いながら、俺は敵の拠点を探して……近いな。


 敵の中継地点が近い。

 マップに書かれた情報が正しければ、もう視界に入るくらいで。

 俺はセンサーを動かしながら周りを確認する。

 すると、道なりにいった先にて監視台やゲートを確認した。

 メリウスやトラックもいるようであり、監視台の人間から通信を繋げられようとしていた。

 俺は一瞬考えたものの、すぐに通信を繋ぐ。


《此方はA05中継拠点所属アイザック。お前の所属と名前、此処に来た理由を速やかに明かせ》

「あぁ……所属はA02中継拠点。名前はトーマス。理由は……A02が敵の襲撃を受けた為、報告に来た」

《……照合した。敵の襲撃だと? 何故、お前一人で来た。他の奴らはどうした?》

「全員やられた。襲撃者は倒して俺だけが生き残ったが、敵は通信機器を破壊してな。やむなくこいつに乗って来た」


 危ない危ない。

 偶々、通信機器を破壊する時にそこにいた敵を倒し。

 そいつが持っていた手帳を盗んでおいて正解だった。

 そこには所属であったり、その兵隊の情報などが記載されていた。

 咄嗟に説明できて良かったと思っていれば、A05中継拠点の中からメリウスが武装して出て来る……あれ?


 メリウスは三機であり、両手で持つタイプのマシンガンを装備していた。

 それらがゲートを守るように横一列に展開し。

 殺気を放ちながら、俺へと銃口を向けていた。

 

 警戒されている気がする。

 三機のメリウスの武装は両手にマシンガンであり。

 此方をロックオンしながら構えていた。

 通信を繋いだ輩はその場で静止しろと言ってくる……あぁ絶対に報告して確認する気だなぁ。


 咄嗟の説明であっても、信用はされなかったようだ。

 まぁ一人を残して他の兵士が全滅して。

 何で、やってこれたのかと思うのが普通だ。

 奇跡的に一人だけ生き残ったなんて思う馬鹿はいない。

 俺は少しの間考えて――うん、諦めよう!!


 俺は通信をぶつりと切る。

 そうして、スラスターを噴かせながら勢いよく駆けだした。

 瞬間、監視台の奴が警報を鳴らして。

 敵のメリウスたちは俺へと照準を定めてマシンガンを放ってきた。


 強い閃光が走る。

 そうして、すぐ近くを無数の銃弾が抜けていった。

 俺はそれでも臆する事無く駆けていく。

 

 俺は前に盾を構えながら突貫した。

 マシンガンの弾がガリガリと盾を削っていく。

 バチバチと弾が触れて装甲が砕けていった。

 コックピッド内にまで伝わるほどの衝撃で、握ったレバーが激しく振動していた。

 つぅっと汗を流しながらも俺は今という瞬間を楽しんで笑みを零していた。


 今俺が立っている場所は奴らが立っている場所よりも低い。

 急と呼べるほどの斜面ではないものの、拠点の方が高い位置で。

 此処からでは俺の方が圧倒的に不利だった。

 出力を底上げしても、敵のマシンガンに押されて上まで駆け抜けられない。

 

 これでは拠点に入る前に蜂の巣であり、俺はステップを踏んで横へと跳躍する。

 道から外れて木々の合間を縫うように移動。

 メリウスをすっぽりと覆い隠せるほどの木であり、敵は俺へのロックを強制的に解除されただろう。

 木にぶつからないように注意しながら止まる事無く駆けていく。

 奴らは拠点のゲートの守りを固めて一歩も動こうとしない……だったら!


 俺は木々を縫うように更に移動していく。

 まるで、蛇のようであり。

 敵はセンサーを俺へと向けてマシンガンを構えていたが。

 横一列に並んでいたからか、横に広がった奴の仲間は自然と動く必要があった。

 その僅かな移動時間だけは明らかな隙だ。

 このまま大きく移動しながら拠点へと詰めていく。

 奴らは俺が飛び出した瞬間を狙って総攻撃を仕掛けるだろう。

 至近距離で三機のメリウスから一斉走者をされればひとたまりも無いからな。

 敵が隊列を崩し広がろうとした――今だ。俺は木々から抜けていく。


 出力を全開にして木々を駆け抜けていく。

 すぐそこに迫る木々を最低限の動きで避けて行けば。

 奴らが隊列を組みなおす前に木々を抜けきった。

 

 地面を踏みしめながら駆けていく。

 敵は慌てて攻撃を仕掛けて来たが、他の二機は攻撃動作が間に合わない。

 一機からの攻撃を受けてガリガリと盾の装甲が削られていく。

 そうして、盾の下半分が限界を迎えて砕けてしまった。


「はは、まだまだぁ!!」


 強く叫ぶ。

 そうして、レバーを押してペダルを踏み続けた。

 

 数発が機体を掠めていくが俺はそれでも突っ込んでいく。

 そうして、此処だという時に盾をパージする。

 全力でスラスターを噴かせて地面を蹴りつけて一気に跳躍する。

 前方に立っていたメリウスは此方を狙おうと上を向くが。

 大きなマシンガンでは小回りが利かずに此方の動きについていけていない。

 広がろうとしていた二機はそもそもが此方の動きが読めていなかった。

 俺はそんな二機のメリウスの頭部を狙い――撃つ。


 フルオートにて射撃をし。

 精確に敵のセンサー部だけを潰す。

 奴らは攻撃を真面に受けて、頭部から黒煙を上げていた。

 視界を潰された事によって、二機の動きが明らかに悪くなる。

 此方を狙っていた先頭のメリウスは攻撃を仕掛けるが弾は一発も俺には当たらない。

 アレだけ重いレーダーユニットを背中に背負っているんだ。

 空中で動く者を狙うのならば、動きがトロ過ぎる。


 そのまま俺は敵の上空を飛び。

 地面に着地してから、視界を潰されたメリウスの背後に回る。

 そうして、そのままバックバック越しに敵のコックピッドを狙い攻撃を行う。

 ガガガと音が連続して鳴り響き、敵は機体を震わせながら沈黙する。

 そのまま、此方に攻撃を仕掛けようとしてきた無事なメリウスに死骸を蹴り飛ばす。

 奴は避ける事も出来ずに仲間の死骸に巻き込まれて倒れてしまう。

 視界を潰された別のメリウスは此方を狙って攻撃をするが。

 俺は避ける素振りも見せずに奴へと近寄った。


 碌な狙いをつけられていない攻撃だ。

 派手なだけのそれは目を瞑っていても避けられる。

 そのまま、錯乱するように攻撃する敵のコックピッドに銃口を押し付けて――トリガーを引く。

 

 連続してマズルフラッシュが発生。

 そのまま弾丸が敵のコックピッドを貫く。

 沈黙したそれからマシンガンを奪い取り、片手で倒れている敵へと狙いをつけて放つ。

 片手であるから狙いはひどいものだが。

 すぐそこに倒れてる上に残弾も気にせずバラまけば。

 勢いのままに放たれた弾丸が、もぞもぞと動いていたメリウスに殺到した。

 敵は機体を激しく振るわせながら、パーツをバラバラとまき散らし――爆散した。


 真っ赤な炎と黒煙を上げるそれ。

 俺はそのまま流れるように監視台の敵へとマシンガンの銃口を向けて放つ。

 ライフルの銃口を此方に向けて攻撃していた生身の兵士ごと吹き飛ばして。

 そのまま悠然と拠点の中に入ってから、先ずは設置された対空ユニットを破壊しておいた。

 マシンガンの弾が当たれば、エネルギーが漏れ出して爆発を起こす。

 そのままコンテナを改造した通信室兼仮眠室となっているそれも破壊しておいた。


「……?」


 小さな金属音が鳴り響く。

 センサーを下に向ければ生き残りの兵士たちがまだいたようで。

 ライフルの銃口を俺に向けて攻撃をしていた。

 俺はライフルなどで始末してもいいと思ったが。

 弾が無駄であるからと、そのまま脚部を上げて――踏みつぶす。


 敵は目を大きく開けながら叫んでいたが。

 そのままぷちゅりと虫を潰すように……あぁ。


「……ゲームでも後味悪いな、これ」


 あんまり生身の人間を踏み潰すような経験はしたことがなかったからか。

 これはあんまり多用しない方が良いなと心の中で思う。

 死んでいても痛みはそんなに感じていないと思うが。

 あのリアルな表情を見てしまえば、人殺しをしているようで気分が悪い……ま、いっか。


 リアルなゲームあるあるだ。

 罪悪感を抱くほどに精巧だと思えばいい。

 俺は気を取り直して、敵の拠点にある武器と自分が持っていた武器を交換する。

 ライフルの残弾は残り少なかったから此処で新しいのに交換する。

 マシンガンは連射力があり高火力だが、接近戦では取り回しが悪く。

 俺のような敵がいれば、あぁやって翻弄されて殺されるだけだろう。

 だからこそ、マシンガンは捨ててそこにあったシールドを装備しておいた……よし。


「……これで、中継地点は二つ潰したけど……有志達は分かるかなぁ?」


 俺は彼らが一緒になって戦ってくれる事を願う。

 俺だけでは“時間が掛かる”し、何度も何度も現実へと帰る必要があるからか。

 敵の警戒度だって日に日に上がっていくだろう。


 時間を掛ければ掛けるほどに敵の対応は増していく。

 此方の動きに完全に対応されてしまえば、俺も自由には動き回れない。

 だからこそ、俺が敵の統制を乱している間に有志達にも攻撃を行って欲しい。

 同時に攻め続ければ敵にも隙が生まれて、最終目標である帰還装置の破壊も達成できるかもしれないんだ。

 俺は単独で潜入したが、自分一人でこの依頼が達成されるとは思っていない。


 協力は大事であり、あのクソ野郎のように裏切られたら困る……まぁ裏切ったらただじゃおかないけどな。


 俺はくつくつと笑う。

 そうして、すぐに身を隠す為に行こうとして……お?


 拠点内に何かがあった。

 カバーを掛けられた何かであり。

 俺は気になってそっちに近づいた。

 センサーはメリウスの武器であると表示している……此処の兵士の誰かの私物か?


 もしかした、自前の武器を持ち込んでいたのか。

 俺はそうかもしれないと考えながら、カバーを掴んで剥がして……おぉ。


 カバーを剥がせば、長大なライフルが現れる。

 迷彩柄に塗装されたスナイパーライフルだ。

 俺は武器を全て捨ててから、それを掴んで持ち上げた。


「ボルトアクションで……スコープ付きか……結構、遠くまで見えるな。カスタマイズされている」


 中々に良い武器であり、これもワールドの醍醐味だと勝手に思った。

 知らぬ間に倒れた別のプレイヤーのメリウスから。

 こうやって良い武器を手に入れて使う……いいね。


 そそる展開だと思った。

 だからこそ、俺はこの武器を装備して持ち帰る事にした。

 これからの立ち回りを考えるのであれば、これは打ってつけの武器で。

 幸運の女神が微笑んでいるのではないかと思った。


「幸先が良いな。このまま敵を蹂躙して……隠しエリアの情報を手に入れよう」


 悪党を華麗に倒し、求めていた情報も手に入れる。

 一度で二度おいしい展開だ。

 俺は笑みを零しながら、スナイパーラフルを両手で掴んで駆けて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ