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海の家でもらった不思議なもの

作者: 瀬田一

 部活が午前中に終わって、何となくの流れで友達4人で海に来た。何も準備していなかったから水着やバレーボールを借りるために海の家に入った。


 入ってすぐ見えるレジに人はおらず、従業員はみんな隣にある食堂で接客や調理に忙しそうだ。忙しそうな中で声をかけるのに自分が気後れしていると後ろにいた悟が呼び出しボタンを押した。


 ピンポーン


 音が鳴ると同時にくす玉が割れ、中にある垂れ幕や紙吹雪が出てきた。


 『祝 1000人目』


 垂れ幕にそう書いてあった。


「私たちは記念すべき客ってことだね」


「何かもらえるのかなー」


 歓迎されている雰囲気を感じ取って、沙織と由紀がワクワクしている。


「お待たせしましたー。そしておめでとうございます。あなたたちがこのベルを押した1000人目のお客様です。記念品としてこちらを差し上げます」


 陽気なお兄さんが出てきた。お兄さんが渡したものはバレーボールだった。


「ありがとうございます」

 お礼は言っているが、正直微妙。もらってもそんな嬉しくない。


 俺は心の中で思ったことを飲み込んだが、沙織は違った。


「なんか微妙―」


 沙織の言葉にお兄さんがどんな反応するか少し怖かったが、お兄さんは得意気な顔で言い返した。


「微妙だなんて見る目がないね、お嬢ちゃん。そいつはあの天下の化粧品メーカー五生堂とのコラボ商品だぜ。使ってみると驚くと思うよ」


「え、まじ? この海の家ってどんな権力持ってんの?」


 沙織が目を見開いて驚いている。


「それは企業秘密だね。それよりも君たちはここに何をしに来たんだい?」


「水着を借りに来ました」


「了解。じゃ、こっちで好きなもの選んで」



 俺たちは水着に着替え、砂浜に移動した。


 太陽の光が肌を刺す。


 ビーチサンダルを履いていても隙間から入り込む熱せられた砂が痛い。


 夏の太陽による災害に耐えながらバレーボールができるスペースを探した。


 ボールを持って気が付いたが、少しジャブジャブしていて、ひんやりしている。中に水が入っているのだろうか。重さは普通のバレーボールと変わらないが。



 スペースを見つけて4人で円になった。


 俺は弱めのアンダーパスで対面にいる由紀にボールを飛ばした。


 飛ばした瞬間、手とボールがぶつかった部分から冷たい液体が噴き出した。


「冷たっ」


 思わず声が出てしまったがボールは狙い通り由紀のほうに飛んだ。


 由紀はこちらを少し不思議そうな目で見ているが、特に気にせずボールを悟に打ち返そうとしている。


「きゃっ」


 だが、ボールが触れた瞬間、出てきた冷たい液体にびっくりしたのだろう力が入りすぎて変な方向に飛んで行った。


 悟がボールを取りに行っている間に沙織が由紀に話しかけた。


「急に変な声出てたけど、どうしたの?」


「ボールから水が出てきたびっくりしちゃった」


「水?」


 沙織は由紀の腕に触れて確かめた。


 「ほんとだ。しかもなんか爽やかな匂いする」


 つられて由紀も匂いを嗅ぐ。


「これって五生堂の化粧水じゃない? 私はこれ使ってるから多分合ってる」


「俺たちは化粧水入りのバレーボールをもらったってこと?」


「そゆことだね。店員さんも五生堂とのコラボって言ってたし」


 俺たちがバレーボールの謎を解き終わったところで悟が戻ってきた。


「おーい、何の話してるんだ?」

 

「俺らがもらったバレーボールに化粧水が入ってるって話」


「まじかよ、そんなことあるの?」


「まじのまじだよ。五生堂の化粧水使ってる由紀が言ってるんだから」


「うん、このバレーボールがあれば運動しながらスキンケアができるね!」


 由紀が言ったことは少し違うだろうと思いながら遊びに戻った。



 バレーボールは化粧水が弾ける音と共に始まった。俺たち4人は笑顔で走り回りながらボールを追いかけ、バレーボールをした。太陽で熱せられたみんなの肌を化粧水が涼しくしながら、ボールを弾く音と化粧水の香りが4人を満たしていった。





読んでいただきありがとうございます!


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次回の投稿は4月8日になります!

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