ふくらむ
最初は指先だった。
次に腕、胸、と身体中に空気が行き渡り、まるで風船が膨らんでいくように、ゆっくりと、自分の体が膨らんでいくのがわかる。突然起きた変化に戸惑っていると開け放たれた窓から強い風が吹いて、気がつけば私の体は窓から飛び出て空に浮いていた。
どんどんと膨らんでゆく体、一体私はどうなってしまったのだろう。
遠のいていく街並みを見下ろしながらしばらく手足をバタバタと動かし抵抗していたけれど、やがて諦めて風に身を任せることにした。
いつもより近い星空が美しい。
しばらくすると私は山に流れ着いて、一際大きな木の枝に引っかかった。鋭い枝が私の腕に突き刺さり、小さな穴が空いて、そこからぷしゅうと間抜けな音を立てて空気が抜けていく。どんどんと萎んでいく私の体はひゅるひゅると空を縦横無尽に駆け巡って、やがて道路の端へと落ちた。
立ち上がって確認すると私の体はすっかり元に戻っていて、変な夢を見たのだろうかと思ったけれど、二の腕に空いた小さな穴があれが夢ではなかったことを示している。耳を澄ませるとその穴から空気が漏れ出ている音が聞こえてきたので、私はポケットから絆創膏を取り出して穴の上に貼った。