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雷鳴
目が覚めるとそこは雲の上だった。
私の部屋の床も、壁も、天井も、全てが見当たらず、ただ周囲には青空が高く遠く広がっている。
唯一、見慣れた私の枕だけが足元に転がっていて、それが夢のようなこの現状において妙な現実味を生み出していた。枕を拾い、抱え込む。
私はどうしてこんなところにいるのだろう。
首を傾げていると、私の足元、雲の中から声が聞こえた。私の名前を呼ぶ声。
はあいと返事をすると、ずぼりと雲を突き破って人の手が飛び出す。
なぜかこの手を握らないといけないような衝動にかられて、私は枕を投げ捨てその手を強く握りしめると、そのまま雲の中に引きずり込まれた。途端に視界は白に覆われ、水蒸気が私の髪を濡らし、私を引っ張る手はスピードを上げて雲の底へ深く深く潜っていく。
やがてゆっくりと、自分の体が変容していくのがわかる。
雲の底を突き抜ける頃には私は一閃の光になっていて、そのまま地上に音を轟かせながら海へと落下した。