第3話 恩送り
第3話です。対戦よろしくお願いします
最近メインストーリー完結したらしいゲームにハマって1ヶ月近く経ってました。
書きなさい
冒険科は、将来冒険者や王国の騎士を目指す人たちが所属する、レイラン学校の学科のひとつだ。
他にも魔法化学科、商業科、医療科、普通科の4つがあるらしいが、せっかく魔法の存在する異世界に来たんなら冒険者になりたいなーと思ったので、冒険科を選んだ。
私は最初の授業は無難に自己紹介だと思っていた。前世の時は毎度毎度そうだったから。
だがしかし!先生が突然入ってくるなり演習ホールまで来いと言われ、いきなり実践と思ってついてきたら……ステージの上になんかデカい鏡があるではないか!なにこれ!
「冒険者は、4人1組でパーティを組んで行動することが多い。なのでアンタたちには今から4人組を組んでもらう!これからこの大鏡が相性の良い4人を表示するから、今からその4人にわかれなさい!」
この人は私たち1年2組の担任、キャネル・ローゼ先生だ。
実はこの人、現役冒険者としても活躍しているのだが、相当の実力者らしい。なんでも若い頃に、災害と恐れられる魔物の1種であるドラゴンを1人で同時に3体も倒したとか。
「アヤセ……俺たち、同じパーティになれるかな……?」
「……もちろんだよ、初めて会ってからそんなに経ってないけど、私たちの相性が良くないわけないでしょ?」
リキは不安そうな顔で、こくりとうなずく。
リキは転生してから発作のせいでずっと変人扱いされてきたらしい。今までちゃんと向き合ってくれる人がいなかったんだから、そりゃあ不安になるよね……
突然他の人のざわめく声が聞こえてくる。
大鏡を見ると、知らん人の顔写真と名前が一度に4人表示されている。
あんな感じで表示されるんだ……少し緊張。
しばらくリキと大鏡を見つめながら、
「あの人知ってる!」
「誰?」
なんて会話をしていた。
「さあ、次が最後だ!」
「あれ、私たちまだ出てきてないよね?」
「ってことは……」
大鏡に私とリキの2人を含めた4人……いや、なぜか3人の顔と名前が表示される。
途端にリキの顔がパァっと輝き、横から抱きつかれる。
あまりに突然だったのでよろけてしまったが、なんとかバランスを保った。
「アヤセ!俺たち同じパーティだよ!やった!やった!」
あまりにも大きな声で、しかも耳元で叫んでくる。
周りの視線が痛い。そしてうるさい。
やめさせないと。自分が持たない。胸が苦しい。顔が熱い。
「リキくん、やめてあげて……すごく苦しそうだよ……?」
「えっ?あ、ごめん!」
リキが私を捕らえていた腕を離す。
「何やってんだ、俺……」
という声が聞こえてくる。
一気に気が楽になるけれど、動悸と顔の火照りが治らない。
そういえば、のんびりとした口調の女性の声が聞こえた。
声の主を確認するために、無理やり自分を落ち着かせて顔を見上げる。
「私はサイカ・トキムネ。パーティの仲間として、これからよろしくね。アヤセちゃん、リキくん」
「サイカちゃん……よろしく」
おっとりとした優しそうな顔だ。
「ときむね……?」
リキがなぜか考え込んでしまった。
「リキ、どうかした?」
「……なんでもないよ!」
それにしても、このパーティだけなんで3人?人数が合わないからだとしても、4で割り切れるように人数調整をしなかったんだろう?
「アヤセ、リキ、サイカ!」
突然名前を呼ばれて振り向くと、そこには先生が腕を組んで立っていた。
「このパーティは3人しかいないが、それはタツヤという名の転校生が今後入る予定だからだ。戦力的に他のパーティより劣ってしまうが、バエル様からのお告げだ。許してくれ」
「……大丈夫ですよ、私たちは3人でも最強のパーティになりますから!」
サイカちゃんが自信満々にガッツポーズする。
「ならば良し!私はこれから任務に行かなければならないので今日の授業は終わりとする!各々パーティのメンバーと仲良くなっておきなさい!」
そう言って先生は演習ホールを去ってしまった。
「改めて、自己紹介でもする?私はサイカ・トキムネ。スキルは氷魔法だよ。よろしくね」
そういえば、まだお互いのことは名前ぐらいしか知らない。
この機会に2人のことを知っておかないと。
「私はアヤセ・レイドルク。スキルは強化魔法。両親が王都の城で住み込みで働いてて、私も王都の城で暮らしてた。よろしく」
ふとリキの方を見ると、未だにリキは難しい顔をして考え込んでしまっている。
自分の世界から抜け出す様子もないので、軽く肘で小突いて呼びかける。
「リキ」
「わわ!ごめんごめん……俺はリキ・サンドーレ。スキルは爆発魔法で、親は現役冒険者!よろしく!」
リキの親って冒険者なんだ。どんな人なんだろう。
「ねえ、今からクレープとか食べに行かない?学校に来る途中キッチンカーを見かけたんだけど、すごく美味しそうで――」
サイカちゃんが目を輝かせて今にもヨダレが垂れそうな顔で言うと同時に、なにかの警報機と思われる音が演習ホール中に鳴り響く。
慌てて振り向くと、演習ホールの扉が壊されてフードを被って顔を隠した人たちが出てくる。
その先頭に立っている髪の長い人が呪文と思わしきものを唱えた瞬間、扉の近くにいた人たちが一気に吹っ飛んでしまった。
「うおっ!?なんだあの威力……!」
苦しみに悶える悲痛な叫び声と怯える人たちの金切り声。
怖い。ここで殺されてしまうのかもしれない。
あの人らの目的は分からないけど、ここにいる生徒たちが襲われているではないか。
きっと昔の私なら、ぼうっと立ち尽くして殺してくれることを待っていただろう。
そうしていたら、ムネが死にたいのか死にたくないんだかわからない私の事を救ってくれたから。
でも、今はその最愛の人も、もういない。
『アヤちゃんがどうなろうと、俺がお前を助けるから』
と、スマホ越しに優しく語りかけてくれたムネの声を思い出す。
私はいつも、どん底から救い出してくれたムネに恩を返したいと思っていた。
だがもうそれも叶わない。
だったら、今度は私が人を救う番ではないのか。ムネとはやり方が違っても、私がムネに貰ったものをたくさんの人に分け与えたい。『恩送り』ってやつだ。
そのためには――
「ねえリキ、魔法を使っちゃダメとは言われてなかったよね?」
「うん、言われてなかったと思うけど……」
私は両親に教えられたことを思い出す。
『魔法を使う時は、どんな魔法を誰に、どのようにしてぶつけるのか思い描いてから呪文を唱えるんだよ』
『自分にかける時は、自分が何をしたいのかを考えてから唱えるのよ』
私は、今ここにいる人たちが傷つかないように、助けが来るまで時間を稼ぎたい。
私のスキルは強化魔法。1番使いやすくて傷つけないように手加減しやすいのが、これだ。
「アヤセちゃん、何をしようと――」
ムネは今、どうしてるだろう。小さい頃火事で亡くしたお母さんと、天国で幸せに暮らしているだろうか。それともどこかで生まれ変わって、人生を謳歌してる?
「ムネ、見ててね。ムネが私にしてくれたことを、これからは私もほかの人たちにしていくから。……『マリン・スター』」
第3話でした。対戦ありがとうございました
このイベントは本来、もっと後にやる予定でした。
でも(自分が)マンネリしそうだったんで前倒ししました。