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4 考古学系歴史学専攻大学教授夫人エレノアが語る④

 ……正直、エジプトだけだったらまだ良かったわ。その辺りに支社を作ったんだ、って。

 だけどその後、どんどんトルコやインド方面へ進んで行くのに、その都度先回りして彼等、居るのよ。

 イスタンブール、アンカラ、テヘラン……

 そして必ずひょいっと現れて言うの。


「あら、奇遇ね」


 って。

 で、彼の格好を見た義弟は「あ、ボタンが取れてますよ」とか「帽子がほつれてますよ」とか言って、その場でポケットから小さな裁縫キットを取り出して付け直したり。

 妹は妹で私に対して「ずいぶん埃まみれになって日焼けもして!」って、自分は現地で買った布を常に巻いているから大丈夫とか何とか言って、綺麗な肌を自慢したり。

 でも…… 奇遇な訳ないでしょ…… 

 いくら何でも、そんな風に支社を作るとか転勤とかって、そもそも軍の命令で向かった場所に居るってどうなの、って……

 だってそもそも私達が進んだ経路って当時かなり危険だったのよ。

 時期が時期だったし。

 そもそも途中から「奥さんは先に船で本国に帰した方が」って何度も言われたのよ。

 でもまあ何というか、ともかく意地というか。

 でもさすがに、「この河を渡るには少し時間がかかるな」とか、「天気が悪いから少し待とう」って場所でも現れるって。

 だんだん私も夫も――

 あのね、私の夫はね、私よりずっと穏やかで物事を気にしないひとよ。

 ただあのひとは、現地の怖さをそれなりに知っているから、その都度居る彼等っていうのが、信じられないって感じだったわ。


「絶対もう誰か俺達が何処に行くのか漏らしてる!」


って、震えていた程だもの。


「でも、どうして?」

「判らない」


 そこで私達、やっぱり軍を通して、できるだけ早く義弟の実家の方に連絡つけたの。

 そうしたら、向こうが驚いたのよ。


「行方不明になっていたんですがそっちに居るんですか!」


って。

 慌ててこっちへ来る、っていう話がまとまった訳。

 支社を作る辞令はエジプトにしか出していない、そこから二人ともいきなり居なくなった。

 皆さらわれたのか、襲撃されたのか、とか心配していたんだ、って。

 ――っていう話がまとまった時に、急にまたこの二人が現れたのよ。

 その、通信ができる施設のすぐ外に。


「何でここが判ったの?!」


 だって私達が連絡を付けた場所は、インドに駐留している軍の施設よ!

 そもそもそんなところに一般人が入っていいと思う?

 さすがに私、その時は悲鳴を上げたわ。

 ひどく熱い日差しの中、もうこれは幻覚かって。

 そうしたら、すっ……、と二人とも消えたの。

 ……そう、その時居た二人は、幻覚だったのよ。

 私も夫も、二人して幻覚見てたのよ。

 だってその後また連絡が来たのよ。

 私が叫んだ直後くらいに折り返しで、「遺体が出た」って。

 エジプトとイスタンブールまでは本当に居たのよ。

 だけどそこで拐かしにあって身ぐるみ剥がされて殺されたんですって。

 ……だから、その後に私達が見たのは……

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