第九十一話「石版と大会」
俺の意見を聞き入れることなく、というよりも、意見を言えずに大会出場ということで事は進んだようだった。
選ばれし十六人が戦うということで、猛者しかいないことを承知の元、一週間後大会が始まるようだった。
とにかく、地位、名声、財政ともに欲しいと思っていないので、適当に出場して、適当に負けてしまったらそれで良くて、仮に優勝したところで、ギルド組織に入団する気もない。
話を聞く限り、別に入団拒否はできるということなので、勝手に勧められた出場枠にすんなり受け入れる。
今の自分のレベルの確認にもなるし、何か様々な手がかりも有り得る。
それ以前に猛者たちの立ち振る舞いも気になるところ。
続いて、石版について話が進んだ。
石版についてだが、この石版の意味。
それはこの世界で強いとされる五人の名が刻まれているようだった。
今で言うと神強五大序列の面々たちの名だった。
ただそれだけのことらしく。
石版は透明な反対側が透き通るように透かして見えている。硝子のように見えて、ガラスではないようで、水晶を加工した代物のように見えた。
深々く聞くと歴史に紐解く話になってくるという。
大昔。
この世に存在しない素材、鉱物からこの石版は作られたという。
新発見の鉱物に対して科学者たちは和気あいあいにテンションを上げて研究したという。
一説によると、研究者の間ではあまりに透き通る純度の高さから、空から舞い降りた神の品物や、宇宙から降ってきた隕石の一部、大魔道士が作り上げた最高の鉱物と言い張るものの前で、どこで、誰によって存在しているのかが定かではなかったという。
最初に石版は作られたという話したが、実際には鍛治職人が加工して現在の位置までに構築された訳ではなく、実は勝手に変形を繰り返し今の形に纏まったという。
それからというもの姿形は変わらずとも、石版には名前が印字されてきたという。
つまり、科学者たちは、この石版、いわゆるこの鉱物は生きていて、呼吸をして、我々を常に上から見ていると。
最も信じ難い話だが、それは確かな情報で、この石版に意識があるように存在しているという。
そのため、丁重に扱われ、青い塔の上層部に保管され、近衛兵が警備していると言っている。
そもそも、加工へ手を加えようにも加工できなかったという。
まるで意識があるように抵抗を続けて、加工をしようとするものに対して、魔法防壁のようなシールドをはられ、物理攻撃は言わずとも魔法すら通らず、傷一つつかないという。
つまりだ。
誰も手出しできないのであれば、持ち出される危険性も薄く、自然に観賞用として放置するのが得策だと判断し、今に至ったらしい。
単純にいまの役目は石版が判断した最強の五人の名を刻み我々がそれに順を追って組織をつくりあげているいわば司令塔なのであろう。
全くもって意味がわからない。
そもそも、彼女がここへ向かってと懇願して、情報はこれだけでどうすれば良いのか分からない。
彼女が実際にいる訳でもなく、ここからどうすればいいのか分からない。
ここ、センティアで何が生まれ出すのか、変化がなく、この先どうすればいいのか一度リセットされたようだった。
この石版の意味とは何なのか。
神強五大序列に選ばれる判断材料として石版で判断されている。
名が描き変われば、神強五大序列の剥奪もあるという。
この石版がどのような基準で判断しているのかも分からないそうで、とにかく、石版が全ての強さを左右するものになっているという。
結果的に、本当にここに名がある五名が最強なのかは相性などを含めて分からないが、ある種の基準となっているようだった。
ここへ名前が刻まれることを名誉と思っているギルド組織も多いようでこういう大会も開かれる要因になっているようだった。
「っていうのが石版のお話でしたー」
ミナは笑顔で答えた。
「で、ミナはここに自分の名前が刻まれるというのが夢ということ?」
「んん! 全くもって」
「単純にこの石版が綺麗で見とれてて好きなだけだよ」
「石版がどうとかどうでも良くて、ただ好きなだけ」
「なんじゃそりゃ 笑」
「今やここへ来る人は珍しくてね。 名前が描き変わる時くらい盛大に行われるんだけど、今や誰も来ないの」
「……」
「あくまで、私の勝手な考えなんだけど、イベントがある日を除いてここへ来る人って、この石版に導かれて来ているんじゃないかって思ってて」
「それが君かもって!」
「わたし?」
「だって君ちょっとおかしいんだよね!? 歳は相当言ってるはずなのに魔力量というか、衰えが感じないというか……」
俺の顔をじっくり見始めたミナ。
「ま、まあ、そういう人もいると思いますよ!」
「ところで、一つ疑問に思ったことあるのですが、私ってそもそも大会に出場できるんですか?」
「……?」
「いわばこの大会って、新生、いわゆる次世代のルーキーを発掘するって言う大会が趣旨なのではないですか?」
「一応、言っときますが私ルーキーではないですよ」
「あ、大丈夫大丈夫!」
「その辺はあんまり考慮してないし、それに推薦だからほんとは誰でもいいの」
この時点で大会への出場が正式に確定した。




