第八十八話「スカウトコロシアム前大会優勝者ミナ」
ホログラムが収縮されて俺の体は元の状態へ戻っていく。
分散され、ホログラム化されて転移されたのだ。
転移魔法と言うべきか。
その時初めて体験したがホログラム転移と呼ぶ。
あまりいいものでは無い。
一瞬意識が飛ぶような、現代に自身が存在しなくなったような感覚。
吐き気を呼ぶような気持ち悪さが体全体を襲う。
別に構わないが、単純に階段など作れば良いのでは?
ここは魔法の世界、こんなのもアリなのか?
だったらもっといい方法があるのでは?
昔のやり方のように感じた。
現代魔法と古代魔法の違いが浮き彫りだ。
現代の魔法技術であれば転移方法など造作のない多大なやり方を考えれるのであろうに。
その分、ここがどれだけ歴史があるのかが窺える。
ホログラム化された体から元の状態へ戻った後のことだ。
塔の最上部へ転移されたであろう場所が一体どんな場所なのか確認する前に一瞬のうちに殺気が走った。
デーモン、死神を連想させる鋭い太刀が俺に押し寄せた。
その姿を確認するやいなや俺は別空間魔法でガンダルフが製作した刀剣で制御。
火花が散った。
力の限り大鎌を押し返した。
身軽かつスピーディーに相手も対応。
空中を一回転して距離を取る。
俺の反応速度もずば抜けていたが、相手の応用力もかなりのものだった。
腰ほどまでスラッと伸びた金髪。
長いバング。
女性だ。
所持している大鎌はパープル色に煌びやかに輝き、肩に担いだ。
彼女が誰なのかすら分からない状況で俺は発した。
「転移早々狙い撃ちとはあまり良い教育はなさってないようですね」
「そんなことない。勉強は嫌いだけど頭は悪くない」
「殺気が殺すつもりだった」
「いや、寸止めしようとしていた」
今ので?
だとしたらやばい子だ。
「じゃあ聞かせて貰えますか?」
「何を?」
「攻撃の理由を」
「そんなの決まってる。私はここに用があったから」
「……理由になってないですが……」
察した。
こいつは頭が良くない。
「ここに用があったから攻撃をしたと?」
「ならば、私はここへ来てはいけなかったと?」
「なぜ?」
「……」
「話が全く通じないですね」
「剣で感じろと言うことで!?」
「そうね。それも良い」
会話で時間を動かしながら、周囲の確認。
どうやら、ここが石版の居場所らしい。
彼女の背に石版らしきものが。
考えていた石版とは違うようだが、あれがそうであろう。
石版と言えば文字通り材質は石かと思っていたが、硝子とは。
一瞬、彼女が石版を守る重鎮とも思ったがそんな感じでもなく、何がしたいのかさっぱりだった。
「まずお名前を聞いても?」
「ミナ……」
「ただのミナ……」
「ミナ……私はアーサー」
「アーサー……」
「剣で交えるのは構いませんが、出来ればお話で解決したいものですね」
「それは無理。わたし、戦い、好きだから」
「それに、候補者を探してる」
「……名前なんだっけ?」
「アーサーです」
「あんぽんたん……」
「アーサーです」
「アーサー……」
「候補者とは何のことでしょうか?」
「大会の候補者。一人足りないから探してる」
大会?
「大会が何だか知らないですが、誰でもいいでしょう!?」
「誰でも良くない。強くないと」
「それで確かめると」
「そう」
「戦わなければなりませんか?」
彼女は頷いた。
「場所は変えませんか?」
「いや。私はここが好き」
「わかりました」
ここは壊したくない。
けど、一瞬でカタをつけるには巨大な魔法などを繰り出せば何にも問題ないがしょうがない。
「じゃあ、始める」
彼女は足場を思いっきり蹴った。
その瞬間、太ももの筋肉が異常に発達した。
倍増したと言おう。
大鎌を180度背に振りかぶり、大きな一太刀。
【ミナの目線】
相手の左首筋への一振。
その剣で庇うか?
避けるか?
剣で庇った場合、左足の蹴りから右膝蹴り。
避けた場合、右足の蹴りからの再度大鎌の一振。
さあ、どう来る?
【アーサー目線】
ここは壊したくないし、移動したくない。
どうしたら……
まあ、いっか……
×××
神速。
彼女の目の前から姿を消す。
背後をとって大鎌目掛けて剣を一振。
彼女もこの速度に反応してきている。
傷つけるつもりないんだ。
この一振は重いだろう受けきれるかな?
彼女は耐える声とともに数メートル飛ばされた、
ハマった。
ミナが飛ばされた背後には俺が作り出す。
別空間魔法 漆黒の空間。
ドス黒い渦に彼女は吸い込まれた。




