第八十六話「スカウトコロシアム」
中央大陸代表のベノムは言った。
「そんな長々とお話をするつもりはありません。できるだけ手短に……」
神強五大序列会議。
それは、この世界で最強と言われる五人の集いだ。
「ここセンティアでも昔と比べて随分と活気が戻り、生が溢れる豊かな街となりましたね。どれもこれも皆さんのおかげです。この場を借りて御礼申し上げます」
「さて、本題に入る前にこの会議の意味というものを皆さんはお忘れでは? もう一度初心に戻って考えてみてみましょう」
先生じみたこのダラダラと長い話についていけるものなどそうはいないであろう。
「本来、このセンティアという街は魔大陸と人大陸のちょうど中心を位置する酔狂な場所。そのふたつの大陸には圧倒的に比例しない現実というものが存在しています。それは民族、そして生き方の違い。力の差も過去にはあったでしょう。人大陸は豊かな土地と平和な日常が壮大に広がる大陸。その分、それまで戦争や争いという概念に囚われず穏やかな人間が日々を暮らす。一方魔大陸はとてもじゃないほど人間には生きづらい環境下の上、豊富とは言い難い農作物が待ち受けていました。ですが、魔族はその環境下に合わした環境適応能力がずば抜けていたため、今の魔大陸が住む上で適してきている。そして、圧倒的な力の差。それらは人間、魔族、共に互いが持っていないものを奪い合う争いが近年まで行われていましたが、そんな無意味な戦いをやめて、一緒に助け合おうじゃないかということで中央大陸・センティアが誕生したのです」
五位
「だからよー話長いって」
「前置きはいいからよー」
「いえ、そうはいきません」
「皆さんはこの会議のそもそもの意味をお忘れになっている。なぜ、この会議の場が必要なのか、なぜあなた方選ばれし者たちがこの場にいるのか理解頂きたい! 正直に言いましょう! この話を聞きたくないのであれば今すぐ除名とみなします」
「……」
「では、話を進めます」
「あなた方の役割の話をしましょう。神強五大序列は互いの大陸同士の秩序を守るために作られています。いわば、世界に強さを認めさせ、争いを無くす、抑えるという役割です、ご存知でしょう!? 」
「これまで行ってきた成果は認めましょう。ですが、まだ役割を完璧に遂行したとは言い難い。世界を周り、戦いや殺戮を亡くしましょう」
「ただ、認められた力を振るうだけでなく、全ての者が平等に生きる社会を作りたいと思って動いてほしい」
四位。
「私たちも精一杯頑張ってる方だと思いますが……」
「それは重々承知」
「でしたら、これまで通りでいいのでは?」
「無詠唱の綻……」
「30年以上も前の事件が解決してないじゃないですか?」
「それどころか、あなた方がこれまであげた功績というものは、悪く言えば程度の低い事件ばかり、どうでも良い事件などありません。ですが、皆さんを見ていると今の立場を利用して自分の利益ばかりに目がいってはいませんか? 立場を利用して、地位や名声を武器としていませんか? 命をかけて人を守るということを意図していないのでは? 」
「……」
「私が言いたいのは自覚しろ! それを言っているのです。何人も殺された首謀者の手がかりすら、未だ新たな発見すらない! あくまで一例に過ぎないですが、こういった大事件などの解決に力を入れて欲しいと私は願っているのです」
「……それくらいわかってますわ!」
「なら、結果を出してください! もしかして、めんどくさいとか怖いとか思っていませんよね?」
「そ、そんなことあるものですか!」
「自分の力……証明してみてくださいよ。 本当にお強いんですよね?」
ベノムの眼光は生気はなかった。
机を叩いていきり立つ四位。
「冗談じゃないわ! そんなに言うなら証明してあげるわよ! とにかく、結果を出せばいいんでしょ! 」
ベノムは笑顔で答えた。
「でしたら、良かったです!」
「具体的にはどのように……?」
四位は戸惑った。
「その30年前に起きた無詠唱の綻って事件、私が手がかりでも何でも探してきますわ!」
「皆さんもよろしいでしょうか!? これはお願いとご協力になりますが頼みますよ!」
返事はなかったが会議室の空気は最悪と言っていい。
「では、本題へ入りましょう!」
「来週開催されるスカウトコロシアムについてです」
「五年に一度の行われるコロシアムは次世代の強き者を育成する意味で開催される大会です。推薦、予選を勝ち抜いたもの同士のトーナメント戦。今、そちらのルーキー席にお座りの方、その方は前回大会優勝し、力を示すことに成功したお方です。この座をかけて戦って頂きます。まあ、優勝しなくとも力を証明することが出来ればいいという単純な戦いです。今のルーキー、挑戦者にどんな強者がいるのか確かめる戦いでもあります。ですので皆さんにもコロシアムを観戦して頂いて評価して頂きます」
魔大陸代表は聞いた。
「ベノム殿。いまトーナメント表はどのような形で?」
「現在、予選を勝ち抜いたもの達が15名。それからあと一枠、推薦枠を含めた16人で執り行います。ですが、現在その推薦枠がまだ見つかっておりません」
「どなたか推薦したい方いらっしゃいますかー?」
「……」
「大会は一週間後。めぼしい方がいなければシード枠として15名で行いましょー」
「それから、大会のルールですが、全ての選手に武器、魔法などの使用を許可します。対戦相手が降参、死亡を除く以外戦闘は続けます。それ以外のルールは長々しいので割愛しますが、参加者にもお配りする全500ページのルールブックをお配り致しますね」
「……」
「みなさん、何かご質問などありますか?」
「……」
「特にないようであればこれにて会議を終了致します……」
※※※
朝。
センティアでの最初の朝を迎えた。
ラブホテル事件からというもの気まずさはあるがその日はどこにも出かけず、ホテルで一日を過ごした。
特にどこへも出かけることなく一夜をすごした。
何かあった訳では無い。
同室というところからシャワー中もモナに気がいったりしたがそれくらいだ。
同じベッドで寝た。
とりあえず、最初は勃起したがよく分からない空間のもと、一夜を過した。
モナもモナで感じていたことであろう。
この空間、この状況で同じベッドで営みをしないことを。
普通に考えたら誰しも男女同じベッドで寝るということはそういうことを考えられるであろう。
でも、ベッドに埋めた30分後普通に寝てしまった。
何事もなく。
目覚めてベッドから起きると、隣にモナの姿はなかった。
部屋の奥からシャワーの音が聞こえている。
朝のシャワータイムのようだった。
気持ちのいい朝。
窓から差し込む日差し。
背伸びをして気持ちを整えた。
シャワーの音が止まると、バスタオル一枚巻いたモナがこちらに歩いてきた。
「おはよー」
普通の朝の会話だ。
でも、彼女の顔の具合は悪そうだった。
目の下のクマは酷かった。
大丈夫? と声をかけようにも一壁あるように感じた。
「よく寝れたー?」
彼女は言ったが、、
「まあ、ボチボチ……」
「だよねー 私全然」
「だから二度寝しちゃうねー……」
彼女はバスタオル姿のまま俺の隣にうつ伏せで眠った。
すぐに小さく可愛いいびきをかき始めたところで、起こさないように俺はベッドを後にした。




