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第八十三話「猫耳お姉さんの誘惑」

 

 建物が密集してそのすぐ側至る所に水路が街中を縦横無尽に走る。

 流石は水の都と言ったところ。

 透き通る水路にはゴンドラが走り、市民の移動手段や貨物の運搬にも使われる。

 年に数回程度だが、雨の日にはよく洪水になることもあるが、災害になれた住人にとって対策はいくつか建てられているという。


 街に住む住人は様々で魔族、人間はもちろんハーフ、クォーターと人種は様々。

 差別は少なからずあると言えるかもしれないが、表では出すことがない街。

 貧困差も特にない。

 治安もよく、とても住みやすいが、ほかの大陸や同大陸の住人がセンティアへ転居するとなると、一点問題が発生する。

 それは土地、家賃の高さだ。

 金銭影響がネックか、住みやすい街ランキング上位に食い込むことは無い。

 だが、1年を通して気候が良いため裕福な家庭の中では上位に切り込む。



※※※



 センティアに到着したらまずは彼女が話していた石版へたどり着きたいところだが、その前に色々とやることがある。

 リザードマンの換金と宿探し。

 モナが言うにはそれ相応の金額がいるというのだから、まずは手元にあるお金と換金して得たお金で合わせてどれくらいの期間ここセンティアに泊まることが出来るのか、そもそもここの相場がいくらなのか知りたい。


 まずは冒険者ギルドへ向かおうと思う。


 砂漠地帯をぬけて、草原地帯をぬけて、センティアの港へ到着した俺たちは、珍しい作りをした街並みに興味を持っていた。

 モナは一度ここへ来たことがあるという。

 元々冒険をしていたこともあったということで、冒険者にとってここは切っても切れない、必ずと言っていいほど通る街だという。


 このセンティアもやはり警備が厳しく、港を抜けると検問所が存在した。

 恐らく、怪しまれない限り誰でも通れるとは思う。

 十人ほどの列をなした最後尾に並ぶ。

 前に並んでいる人種も様々だった。

 魔族、冒険者、魔法使いなどなど。

 身なりからして大した冒険者たちには思えないところから、緩い検問所とみている。

 並びの人数と一人にかける所要時間から推測するにあたり、おそらく10分程度待つであろう。


 特に金銭を支払うことも無く、すんなりとボディーチェックと滞在理由などを明記して登録するという手順のようで、チェック体制もそれほど強固なものではないように感じている。

 甲冑を着たセンティアの兵士であろう。

 ボディーチェックを簡単に済ませ、持ち物の確認、簡易的な手続きで終わりだ。


 少し違和感を感じた。


 俺たちの前後に並ぶ男たちの視線が俺たちに注がれることを感じた。

 視線ももちろんそうだが、何かムンムンとした色気のあるまなざしだ。

 感じているのは俺だけのようで、モナは周囲の雑観に夢中。

 違和感を感じたまま気持ち悪いが、殺気のようなものではないためスルー。

 すんなり終わらせて門を潜ることに成功。


 白を基調とした門は厚さによるとかなりの物だった。

 薄暗い洞窟のような門をを潜っていく。

 奥が真っ白に光る輝きを目指すだけ。

 輝きをただ一点に進み洞窟を抜けた。


 薄暗さからまぶしい光に目が慣れず、手で光を遮って慣らす。


 街は活気あふれていた。


 街並みは白を基調として、開放感のある街だ。

 まず門を抜けると大きな噴水広場が俺たちを待ち受けていた。

 水をふんだんに使用した軽いショーみたいなものだった。

 その噴水の周りでは子供たちが水遊びをしたりして遊んでいた。


「自由で豊かな街って感じですね」


「それもそうね。ここは魔大陸と人大陸のちょうど中間を位置してる街ともあって、多種多彩の人種がいるらしいから」


「へー」


「戦争とか戦いを知らないって言った方が早いかもね」

「逆に言えば、戦争を知らないから危ないって意味もあるわ」


 俺たちはとりあえず冒険者ギルドを目指した。


 水路が拡充されて、行き交うのは子供が多く見えた。

 露店もあって、食べ物も美味しそう。


「ここの名物食べましょ!」


 はて、名物とは?

 少し期待した。

 砂漠地帯ではサソリの肉を食ったしここのご飯は非常に楽しみだ。


 ある露店へモナが促して行ってみる。


「おじさんこれ2つちょうだい!」


「はいよー」


 敬語も使わず気軽に話しかけて、金銭を渡した。

 二つで小銅貨二枚。

 一つ百円って感じだな。


「はいおまち! 水水水串(みずみずみずくし)二本ね」


 はて、水水水串とは?


「はいこれ、アーサーの分」


 モナから受けとったのは透明な球体が三つ竹串に刺さった奇妙なものだった。

 これは一体?


 俺が眉を寄せてじっと見ていると、モナが丸々一つ頬張った。


「んんー センティアと言えばやっぱりこれよねー」


 モナのほっぺが膨れて口をモグモグさせながら言った。

 どうやら非常に美味ということらしい。


 なら俺も一口頂こう。


「これ食べるのコツがいるのよ。丸々一つ口の中に入れて一気に噛むのよ」


 なるほど……

 やってみた。


 丸々一つ口の中へ入れて、思いっきり噛んだ。

 すると、口の中に透明な球体が弾けて口いっぱいに広がった。


「……」


 とにかく俺は味を探した。


「んーー……」


「どうどう!?」

 

 モナが真剣な表情で俺に視線を寄せてきたが、俺は思った。

 これってただの水だよね?


「味無くない?」


 その言葉にモナは目を細くして睨んできた。


「やっぱりね。そう言うと思ったわ」

「もういいわ、次行くわよ」


 モナがなぜ怒っているのか分からないが、おそらく水の都と言われるセンティアの名物というのは、ゼラチンの膜で閉じ込めたセンティア産の水ということらしい。

 店のおじさんが言うには、センティアの水は甘くて、砂糖水のような仕上がりになっているというのだ。

 果たして、俺の舌がバカなのか分からないが、俺にはただの水の味。

 無味無臭だ。

 水には味があるというが、軟水も硬水も違いがわからない俺にとって、この水水水串という名物の存在価値と評価は分からない。

 価値観の違いでもあるとみている。


 店主もモナに同調するように舌打ちをしたあと不機嫌になった。


 そっぽを向いて速歩でいくモナに俺はついて行くだけだった。

 女の子って難しい。


 そんなに距離はなく露店から200メートル離れた場所に冒険者ギルドと大きくはられた看板があった。

 そうここが冒険者ギルドだ。


 まあまあ大きな建物だ。

 魔物の骨格を象った模造品。

 それが頭上の看板の上にぶら下がっていた。

 これはわかりやすい冒険者ギルド。


 気を取り直して、たのもー。

 分かりやすく門を開けた。

 そこは開けたフリースペースに、二階へ続く階段の先にもフリースペース。

 中央の開けた場所の頭上には大層大きな魔物の骨格標本が吊るされていた。

 形状から見て何かしらのドラゴンであろう。

 とにかくここは自由なギルドであった。

 屈強な男戦士やマントを被った明らかな魔法使い。

 それも多種多様。

 猫耳戦士やこれは一体なんの種族だと言わんばかりの者と様々だった。

 俺はこの冒険者ギルドがいかに豪勢かと言うよりも種族に興味津々。


 活気だって様々な言語が飛び交う冒険者ギルドにワクワクした。

 酒のジョッキ樽を片手に盛り上がる冒険者やイケメンチックな男が冒険者の女の子を誘っていたりと、、

 ここまで大きく盛大な冒険者ギルドはあまりないであろう。


 それに、服装などはその人物の個性。

 つまり、性格は服装に比例するということだ。


 例えば、手の先まで衣服で隠している冒険者というのはガードが堅い。

 逆に肌がはだけた服装は緩いと相場が決まっていたりして、、


 そんなこんなで、様々な生き物がいるこのギルドで俺はただ一点を見つめることにした。

 肌がはだけた女体だ。

 お触りはしません。見ることはタダなので!


 エロい格好をした女性も多数いる。

 ヨダレを垂らしながら俺はその子たちを見ていると、視線を断ち切るようにモナの顔が割って入ってきた。

 見るからに眉間にシワを寄せて、眉がキリッとつり上がっていた。

 すぐさま垂れ出たヨダレを吸い上げて、凛々しい顔へ豹変させて言った。


「えーっと……受付受付……」


「チッ……」

 舌打ちをされた。


 起こったことを無かったかのように受付へ向かった。

 だが、受付にも誘惑が存在していた。

 一年を通して温厚な気温のこの街には長袖という文化はあまりなく、冒険者が肌着として着るのはあるが受付の女性はとにかく露出が激しい。

 露出魔だ。

 胸はとりあえず出まくり、布の面積が明らかに少ない状況。

 下はビニキスタイルのこれまたパンツ。

 一応、スカートスタイルだが、はみ出るパンツが誘惑してくる。

 さらに、種族も多彩で娼館を思わせる。

 とりあえず、半勃起して受付のお姉さんに聞いてみた。


「換金したいのですが……」


「はい! いらっしゃいませ! お待ちしておりましたー!」

 にっこり笑顔の猫耳のお姉さんはとにかく笑顔がピカイチ似合うお人。


「チッ……」


「魔物討伐でしょうか? 薬草、鉱物の換金でしょうか?」


「えーっとですね……」


「チッ……」


「あれですね」

 壁に貼られていたWANTEDを指さした。


「こちらは指名手配されているリザードマン討伐のクエストですが……」


「ええ! 討伐してきました」


 受付の女性たちは驚きの顔をしていた。


「チッ……」


 別空間魔法でリザードマンたちの亡骸をドバドバっと地面に放り出した。


「こっこれは……確認致します……」



 ※※※



「確かに、特徴と一致しています……本物の指名手配されていたリザードマンです……」


「では、換金をお願いします」

 俺も笑顔で返した。


「チッ……」


「す、すごい……」

「お兄さん何者ですか?!」

「あのリザードマンを討伐するなんて……」

「お兄さんお強いんですね」


 猫耳のお姉さんは特徴のあるフワフワの耳をピンッと張りつつ、肘をテーブルについて谷間を寄せる。

 そして、ニッコリ今度は頬を赤くして笑ってくれた。


「いやーそれほどでもー」


「チッ……」


 先程から気になってはいたが全てスルーしていた。

 会話の間間に舌打ちを入れるモナに視線を置くことはリザードマン討伐より難易度が高いと思った。

 一度だけ、ほんの少しだけ見てみよう。


 スーっと視線を流し目でやると、いつもの3分の1程の狭く鋭い目付きが俺をずっと睨んでいた。

 それに、猫耳の受付の女性に対抗しているのかもしれないが、こちらはアウターをいつの間にか脱いでアラビアンスタイルのビキニにいつの間にかなっていた。


 それを確認したあと、すぐに視線を受付に戻すと、こちらはにっこり笑顔。

 左には鋭い眼光。

 俺はどこを向けばいいのか分からなかった。


 目の前の猫耳のお姉さんと左のモナお嬢様、どちらにも気を使いながら


「あ、換金……お願いします……」


 換金してもらった。


 金貨五枚という値段がついた。

 およそ50万円ほどだ。


 この五年間で稼いだ金額と合わせると余裕で暮らしていける程の金額を手にしている。


「ところで、この近辺で一番安い宿舎ってどれくらいなんですか?」


「うーん……そうですねー 大銅貨一枚くらいですかね?」

「安いですけど、衛生的に気にしない人であれば住めるってイメージです」


「じゃあ標準的な宿舎だと?」


 猫耳のお姉さんはテーブルに肘をついて胸を寄せて見せつけるようにしてきた。

 ちょうど俺が俯瞰でき、谷間が見える位置だ。


「おっ……」


 油断してると、今度は左から憎悪が感じ取れた。


「あ、ごめんなさい」


「えっ何がですか?」


「あ、いやいやこっちの話です」


「標準的な宿舎だとお一人銀貨一枚程度って感じですかね?」

「これくらいだと、この辺いっぱいありますよ」


「だったら、標準的な値段でご飯も美味しくて、比較的綺麗な宿舎を紹介して頂けると」


「かしこまりましたー!」

「近い場所にいい所があるのでご紹介しますね!」


「よろしくお願いします!」


「紹介したところがお気に召さなければ、私と同じベッドで寝てもらってもいいですよ 笑」

「冗談です!笑」


「えっ? どういう意味……?」


「内緒です……笑」


 猫耳お姉さんのふざけた誘惑後、左隣から血管が切れる「ブチブチブチ」という鈍い音が聞こえた。


 俺は左側が今どのような状況なのか把握したくなかったので、正式にお断りを入れて、宿舎を紹介してもらうことになった。



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