第七十九話「蹂躙したトカゲで大都市センティアへ」
夢? 現実?
その場所で出会った彼女の言葉をふと思い出す。
暗い無限の世界で話した彼女はとても良い香り。
もう一度嗅ぎたい。
吸いたい。
抱きしめたい。
俺は彼女のことが好きなのか?
互いの年齢が合っていない。
でも抱きしめてくれた。
いくら夜を迎えようと、いくら目を瞑ろうと、思い浮かべようと、あれからというもの彼女と出会っていない。
何年も前の彼女との記憶は今でも鮮明に覚えている。
彼女ともう一度話して、一体誰なのかを確かめたい。
なら、彼女が言っていた大都市センティアにある石版にたどり着かなくてはいけないであろう。
あの時の助言はどういう意味なのか?
彼女がそこで待っているのか?
待っていたとしても、彼女とどう対話をすれば良いのか?
「ムニャムニャムニャ……」
この感覚、あの時と似ている。
彼女と出会った感覚だ。
暗闇。
俺はおそらく寝ているのであろう。
予知というのか、感覚が俺の右手を動かした。
頭上に感じる大きな山二つは俺の精神に異常をきたす程の破壊力を備わっていた。
一体これはなんだ?
柔らかくて、ハリがある。
握ると押し戻されるほどの弾力性。どことなく、何度も何度も触ってほじりたくなるのは皆同じだと思う。
下半身が熱くなる感覚。
性欲。
欲というのは様々、無限にある。
その中で、一時の気まぐれにより犯罪になりかねない欲こそ性欲である。
ある時は抑えて、またある時は発散させる。
自身の自我が保てないほどの異常をきたす欲である。
そして、これが現実の世界だと気づいたのは目を開けた時だった。
この体勢から見るに、俺は膝枕をしてもらっていたようだった。
二の山というのは胸だった。
胸の越しに見え、顔をのぞかせるモナ。
マントを脱いでアラビアンスタイルのビキニは破壊力が物凄かった。
なんせ、世の男性をの心を轟かせる下乳だからな。
「また成長したな―……」
つい言葉を発してしまった。
どうやら大きな胸の正体はモナだったようで、白い大きな岩の影に俺たちは休んでいた。
とりあえず冷静に落ち着いて、物事の出来事を正確に理解しつつ、相手側に敵意がないことをアピールするため、とにかく冷静さを保った。
モナの表情とは言うと、眉間にシワを寄せて攻撃態勢という表情。
次に発する言葉を間違えてしまうと、この体勢、この至近距離、確実に殺される。
俺は最適会話をこの短時間で考えた。
※※※
【アーサーの予想①】
「どうやら、私は眠っていたようですね」
「目を開けたらこんな美人がいるなんて、ビックリして勝手に手が動いちゃいましたよ 笑」
モナの表情は少し和らいだ。
「にしても、いいおっぱいだ」
モナは右手を俺の顔面に振り下ろした。
これだと直球過ぎて、殴られてしまう。
開き直るっていう考えはどうだ?
【アーサーの予想②】
「どうやら、私は眠っていたようですね」
「あのー……こんなところで大変恐縮なんですけど、揉んでいっ?」
モナは右手を俺の顔面に振り下ろした。
いやいや、女性は丁寧に下心見え見えの発言はだめだ。
無かったことにするのはどうだ?
【アーサーの予想③】
「どうやら、私は眠っていたようですね」
「………………」
モナの表情は怒りに満ち満ちていた。
何事もなかったように、膝の上で再び瞼を閉じて、一息。
「……」
薄目でモナの表情を拝借。
どうやら、逆に何も答えなかったことに怒りが満ち満ちていたようだった。
モナは右手を俺の顔面に振り下ろした。
※※※
どの予想も結果は同じ。
良い方向のイメージが出てこない。
もう、殴られよう。
決心して、素直に思っていることをいうことに決めた。
「どうやら、私は眠っていたようですね」
「なんて、落ち着く場所なんだろうと思っていましたが、まさかモナの膝だったとは……ありがとうございます……」
眉間にシワを寄せていた本人も、俺の冷静さが移り言葉を発した。
「ま、まあ、こんな場所だし、戦闘もしたしそれは誰でも疲れるわよ」
「だから、少し休んでって思っただけ!」
あれ? なんか予想と違う。
彼女は恥ずかしそうにそっぽを向いて照れていた。
まあ、彼女も大人になったってことだ。
何気ないこんな会話でも俺たちの絆というのは確実に強まってる気がした。
それに、そんじょそこらのセクハラにもどうやら免疫がついてきたようで彼女も平気なようだった。
先程のリザードマンとの戦闘で楽々勝利を収めたが、どうやら戦利品という物が獲得できそうだった。
モナが言うには、このリザードマンは冒険者ギルド認定WANTEDだったらしく、依頼内容でもあったそうだ。
リザードマンたちの遺体を別空間魔法で収納し持ち歩くことに決めた。
後ほど、近くのギルドに収めるつもりだ。
日が暮れるまでに次の街に到着したいところではあるが、このペースで進むとエンドレスになりそうという相談の元、ある提案をモナが示してきた。
「魔物を飼って乗せてもらうのよ!」
そうは言うけれども、そんなことが本当にできるのかすら謎だった。
「簡単よ!」
じゃあやってみろと言わんばかりに俺は言った。
「どうやって?」
「蹂躙して脅すのよ!」
でた! モナのバカ発言。
と、俺が考えている間にモナは無限の砂漠地帯を走り出した。
「ちょっとまっててー」
一時間後――
「遅すぎる……」
岩の影に座って待っていたが、どれだけ待っても戻ってこない。
日差しが遮れる場所とはいえ、ここは砂漠地帯。
どこにいようと、体力消耗に変わりは無い。
モナに何かあったのではないかと考えて、腰を起こして辺りを見渡した。
ドンドンドンドンドン
それほど振動などは無いが、明らかにこちらに向かってくるような足音が聞こえた。
100メートル先が砂埃が立っているのが確認でき、音の正体はあいつだと確信した後、俺は構えた。
リザードンマンの新手?
別の魔物? とまで考えた。
「アーサーー!」
手を振って名前を呼んだのはモナだった。
トカゲの魔物の上に乗って猛スピードでこちらに駆け寄ってくるモナ。
俺に猛スピードで駆け寄りながら、目の前でストップ。
ドリフト状態でストップしたため、俺に砂が大量にかかった。
「あら、ごめんなさい」
体長およそ5メートルほどの大きなトカゲだった。
「全然見つからなくて待たせたわね」
彼女は腕組みしながら偉そうに言った。
「とりあえず乗りなさい!」
どうやら、魔物の蹂躙に成功したようだった。
モナが言うにはこのトカゲの魔物はこの地帯ではポピュラーで、貨物、物資などの輸送や同乗に使われる。
このトカゲは野生らしく、探すのに苦労したという。




