第七十八話「襲撃」
嗅覚、思考、肉体ともに完成系に近いリザードマンは、そもそも話が通じないと仮説は立てていた。
アイコンタクトと顎で指示し、今からの戦闘の形態を仕込んでいるように感じた。
二丁拳銃を持つリザードマンが、どうやらリーダー存在のようだった。
連携、鍛錬共にかなりの時間をかけている。
その仮説通り、射程距離内に俺が入ったことを確認後、真っ先に連携、連隊を組んで俺に走って向かってきた。
何を目的とし、何も収穫とし、何のために俺を襲うのか正直分からないところ。
ただ、正当防衛という建前からこいつらをたとえ殺そうが、認められるであろう。
俺は左サイドに走りながら、囲まれることだけは避け、何度も地面を掌で触った。
こちらが無詠唱魔法使いということは確実に気づかれていないと踏んでいるため、地面にトラップを貼りながら移動。
こちらの攻撃手段を理解される前に片を付けるのが勝利への最善。
移動後、即座に下手から攻めてきた片手直剣のリザードマンと対峙した。
右手からの剣を大振り。
すんなり躱す、そこから隙をつきたいところ。
別空間魔法から召喚。
ブラックゴールド色に輝くその剣。
少し湾曲刀剣、細く、幅は10センチほど、長さは150センチ。
鍔がついているところをみると、日本刀に近く、耐久力に優れた一品だ。
現国王、ガンダルフ・シュワルサーが製作した剣だ。
太刀筋一片。
がら空きの右脇腹懐に入りつつ、剣を持っている右手目掛けて俺は剣を振るった。
スパンッと切れ味最高の一太刀が入り、断絶。
血が吹きでた。
戦いに慣れたリザードマンはこれで終わらなかった。
悲鳴一つ上げず、左足で砂漠の砂を巻き上げて、俺の目元に命中させてきた。
目に染みる。
すぐさま手で拭いながらも視界が切れる。
右手前方から三人のリザードマンが迫ってきているのを確認しながら、距離を取ろうとしたが、三体のリザードマンの後方から、狙いを定める別の一体。
二丁拳銃使いのリザードマン。
味方に当たらないよう、サイト・ピクチャーして連続で発砲。
銃弾がジャイロ回転しながら俺に向かっているのが見えた。
数発、アクロバティックに避けたあと、無詠唱魔法発動。
二丁拳銃使いのリザードマンのその周辺の砂地が盛り上がり、捉えた。
砂漠の砂地が命を宿すように、変幻自在に砂を動かし、動きを固定。
手足、体共に砂を覆いかぶさせて、身動きを取れないように。
これで一旦、こちらに集中できるはず。
味方が拘束されて、身動きが取れない情緒にもかかわらず、一切気にかけず俺に向かってくるところを見る感じ、戦いに慣れていることをさらに高める。
または、自身の仲間を仲間と思っていない種族なのか?
それとも、この状況を想定、経験から対処の仕方を考えてでもいるのか?
そんな知能があるとは考えづらいが……
残り三体のリザードマンが迫る中、腕を切り落としたリザードマンのはらわたを全力で蹴り飛ばした。
そうすることにより、迫り来るリザードマンに接触させようとしたが、簡単に交わされた。
なら、再び距離を取りながら、走った。
大鎌使いのリザードマンは振るって飛び散る斬撃で俺を狙ってきた。
避けながら、刀剣で受ける。
何度も飛び散る斬撃から三体は徐々に俺の周囲を囲みながら一斉攻撃。
囲まれたが、なんの造作もない。
誘導に成功している。
ここは俺のテリトリーだ。
トラップ発動。
リザードマンは上手く俺を取り囲めたとでも思っているのであろう。
いや、逆にここへ誘い込ましたのは俺の方だ。
三体のうち、二体が真上から押し寄せる重力により地面に叩きつけられた。
重力操作 グラビティトラップ
この世界のおよそ30倍の重力がのしかかる。
身動きも取れないであろう。
あまりの体の重さに体が砂地に埋まる。
残り一体。
いや、先程腕を切り落としたリザードマンがいた。
そいつは俺に向けて弓を構えていた。
構えている弓の数三本。
同時打ちというやつだ。
俺はそれを一瞥後、正面から切り込んでくるソードシールドのリザードマンの太刀を刀剣で受けつつ、襲い来る矢の盾に回す。
三本のうち二本はソードシールドのリザードマンに背にぶっ刺され、残り一本は俺に顔面に向かってきている。
俺は冷静に対処。
迫り来る弓矢がスローに見えた。
これがゾーンと言うものであろう。
弓矢には返しが付いていた。
その返しに上手く刀剣を引っ掛けて、くるりと一回転後、勢いをつけて、跳ね返し、弓のリザードマンへ投擲。
その矢は弓から発射されるより威力を増し、凄まじいスピン音と共に、額へ命中。
弓のリザードマン 矢による脳天へのダメージで死亡。
ソードシールドのリザードマン 味方の矢により死亡。
大鎌、片手直剣のリザードマン トラップにかかったあと刀剣で一刺し 死亡。
砂地に捕られた二丁拳銃のリザードマンは怒号と共にもがいていた。
両手にはまだ拳銃も所持。
近くまで寄り、拳銃を観察すると珍しい代物だった。
リボルバーが二丁。
弾数は六発。計十二発。
型は古く、傷が目立つ。
そもそも、リボルバーを使うにあたりリスクは伴うものだ。
なぜなら、一発一発の威力はあるが、弾数が少なく、リロードにも時間がかかる。
ましてや、それを二丁ということは余計な動作をうみやすい。
俺なら家の飾り程度の品だ。
おそらくだが、前衛の仲間への信頼と後衛を任せられる立場としてリボルバーを選んだのであろう。
というよりも、ゴブリンの時もそうだが武装魔物は大抵、人間から奪った代物であろう。
俺以外にも機械的武装を所持するものがいるということになりうる。
二丁拳銃を奪ったあと、身動きの取れないリザードマンの首を刀剣で刎た。




