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第七十四話「砂漠地帯から始まる旅」

第二章 中年期

アーサー 55歳


 乾燥地帯 砂漠――


 ギンギンに照りつける太陽。

 遠く高い上からの輻射熱。

 地面はサラッサラの乾いた白い砂。

 上からの伝道熱により反射され上からも下からも熱が浴びせされる。

 その地に存在する者の体力と気力を奪う。


 さらには、砂漠地帯特有の砂塵が舞う。

 いわゆる砂嵐だ。


 辺りは一面真っ白な砂、砂、砂。

 砂以外にあると言えば、これまた白い岩。

 水平線に広大な白。

 果たして、ここはどこなのだと言いたくなる。

 気が遠くなる。

 変わらない景色。

 発する声すら失うほどの暑さ。

 あまりの暑さに蜃気楼が見えるほどだ。

 ここを人間が歩くなんてことをしてみれば一巻の終わりだ。

 もちろん、誰もが知っているように、生産性、需要性がない砂漠地帯に住むという人間もいないであろう。

 飲水、食料、寝床、どれをとっても当てはまらない場所。


 そんなヤバい場所に俺はいる。


 俺の名はアーサー。

 現在 55歳。


 なぜこんな所にいるのか、それはおいおい話そう。


 五年前。

 俺は一国の王を勇退。

 わずか四年という短い任期であった。

 やめるという行為は国の皆が納得することなく今に至っている。

 ただ、理由としてはそもそも村の人間では無い俺に良い事なのだろうか。

 辛うじて、俺が王として即位したことに国は良き道を導き出し、歩き出した。

 可能性として、俺ではなかった場合、独裁政権という考えも有り得た。

 では、なぜその可能性も有り得る中、勇退したのか、単純にやりたいことがあったからという容易な考えだ。

 その本心は国の者には伝えていない。

 納得しないからだ。

 勇退後、次の王として三名の名が上がった。

 長老、アナ、メイの父だ。

 三人の候補の中から選挙といきたいところだが、後継者に俺が名指しして指名した。


 メイの父 ガンダルフ・シュワルサー


 俺が彼を次の王に指名した理由は単純に名前がかっこいいからという理由が全体の6割。

 あとの4割は軍器製造秘密機関総長という肩書き。

 そして、国に欠かせない、兵器の製造、防衛技術についての知識が豊富だからだ。

 俺が次の王として指名する理由の中に、国の防衛を一番に考える者をと踏んでいたからだ。

 その中で彼が一番最適と選んだ。


 繰り上がる形でメイが軍器製造秘密機関総長に就任。


 ほかの二名に関して

 長老は歳を取りすぎて、今後が心配。

 また、アナは逆に年齢が若すぎて統率が取りづらいと見た。


 年齢からも知識、技術、肩書きからも判断できるようにガンダルフにお願いした。


 もちろん、突然の声掛けにすんなり行くものではなかった。

 本来なら、一国の王の後継者という者はその者の息子であったりする。

 残念ながら、俺に息子や子供はいない。

 ましてや、未だに童帝である。


 親しい仲間、そして、本人ガンダルフには勇退する本当の理由は話している。


 余計納得はしなかったが、村を、国を救った英雄のお願いからか、断ることが出来なかったと見てもいい。

 ガンダルフには申し訳ないが俺は旅に出た。


 旅に出る一ヶ月前、俺は国民の皆の前に壇上し演説した。

 勇退するということ、そして新しく即位する王の紹介だ。

 一時間ほど長い演説だった。

 国民への感謝やこれからの国の展望など

 具体的に話すには至らなかったがきっちり説明した。


 隣国からすれば驚異、そして、無詠唱の継承という絶対的能力がアーサー王国からいなくなるという情報を得た場合、攻め込んでくるのでは?

 と、心配の声も上がった。

 確かにそうだった。

 自分で言うのもなんだが、俺がいることで隣国への脅威にもなっていた。


 そうなった時、果たしてどうすれば?

 俺は勇退できないのでは無いか。

 そんな不安が演説途中から漂うが、そこに割って入ったのが医療機関最高責任者のアナだった。


 俺に背伸びしても届かない身長。

 でも、これでもかなり伸びた。

 当時8歳の女の子は天才的な言葉を俺に耳打ちしてきた。


 彼女も俺が勇退し、旅に出るという話をした時、正直落ち込んでしまうのではないかという不安があった。

 でも、やはり少女は普通では無い。

 いつか来るその日が今来てしまったという気持ちの準備はとっくの昔に済んでいる表情だった。

 本当に成長したな。

 俺は親心を描きながら少女、いや、彼女に微笑みを与えた。


 俺は彼女からの言葉を代弁するように発した。


「いつか来るかもしれない災害、外敵。それは強大で絶望を我らに与えてくる。それは恐ろしく、皆の大切な者を奪い、痛めつけるかもしれない。そんな時皆はどうする?」


 突然変わった口調に国民は困惑していた。


「そんなことは決まっている。私が守る!」


 国民が静まり返って再び俺の話を聞き始めた。


「どんな強い外敵でも俺は皆を守ると約束しましょう!」


 歓声が沸いた。


「皆が大切に思う人や物は私にとっても大切なものだ。守るのは王として当然の義務。だが、私だけでは皆を確実に守るという約束はできない。ならどうするか。

……皆で皆の大切なものを守るのです! それには時間と鍛錬が必要です。皆も協力して欲しい。外敵が押し寄せてきた場合、皆で戦うと! それまで私は巨大な力をつける! それまで待っていてくれ!」


 さらに歓声が盛り上がった。


「私にとって皆は宝だ! 皆!俺が戻るまで戦ってくれー!!」


 国の外にまで聞こえるほどの歓声が沸きに沸いた。

 おそらく支持率100%

 政治で言えばありえない数値だ。

 この国にリベラル派などいない。

 全国民 保守派の人間であることに間違いない。

 俺の演説は完璧に決まった。


 要するに、異例の玉座が二席という二大王体勢へ。


 そして、永久的な王の座を陰ながら与えられてしまった。



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