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第七十三話「冒険が始まるまで」


 四年後――


 アーサー 60歳

 アナ 8歳


 四年の歳月をかけてかつての村は中規模な国へと変貌した。

 全くもってエレスティン王国ほどの規模、人口とまでは言わないが、傍から見ても国だ。


 国の守る大外の外壁は高さ20メートル。

 黒に塗装された鋼鉄の壁だ。

 素材は資源が豊富な山から採取されたもの。

 頑丈かつ鉄壁だ。


 国の広さは直径5キロ。

 中央に行くほど高々しい建造物が構え、それはエレスティン王国とはまるで違う。

 最中央部には近代的な鋼鉄で漆黒の城。

 上級権力者が構える都市だ。

 そこから、大外に行くにつれて建物の規模は小さくなるが、ほぼ全ての家々が漆黒の外壁。

 一般庶民が暮らす街や住宅だ。


 街は盛んで、常にワイワイ盛り上がる明るい街といったところ。

 外壁の色とは違い、誰一人不満がない国と言われている。

 村時代とは違い畜産や農業というよりは、輸入輸出を主に国を支える。

 豊富な資源の森を潤沢に活用し、素材の宝庫の街でもある。

 今では様々な職業が開拓されて、隣国のエレスティン王国との交流もしばし、政治的内政は喜ばしいというまではいかない。

 むしろ疎遠状態と言っていい。

 あまりにも動きがないのだ。お互いがお互いを警戒、尊敬する中で起こりうる言わば冷戦と言えるのかもしれない。

 だか、それとは裏腹で市民の交流や輸出輸入といった取引というものは盛んに行われ、お互いがお互いの持っていないものを売買なども含めて交流に外壁は無い。

 踏み込んでもなく今が一番良い距離感と言っても良い。


 この四年間で全てが好転。


 現在の国王は俺アーサー。

 国の名前の通りだ。


 マンネリ化した毎日というものは退屈なものだ。

 仕事内容は公務の最終的な決断。

 治安、消防、水道、教育、文化事業などなど

 書類と毎日対峙する日々。

 それに近隣の村や国との交流。

 物流などの調整だ。



【一日のスケジュール】


 朝――

 玉座に座る頻度も増えて、国の皆は俺を神扱いし、食材や山で取れた鉱物をお供え物してくるが

 正直興味が無い。

 俺はそんなことしなくて良いと毎回言うが、それを阻んでお供えしてくる。

 わざわざ、王宮にまで足を運び申し訳ないため、対応はしている。


 その後、様々な書類に目を通していく。

 終わる気配がない紙の束。



 だが、俺も発言する時はする。

 今なお敵国からの防衛力強化を何より推奨する俺にとって一番に取り組んでいることがある。

 王宮直属の部隊だ。

 元々高齢国として見ていた俺にとって、まずは若返りが重要と踏んでいたため、とにかく子供を沢山産んで次の世代に繋げることを心がけた。

 その際の手厚い手当ても拡充。


 今はまだ国ができて四年といった軟弱者だが、ここから十数年後を見据えて動いている。



 昼――

 お昼になると、部隊に志願した若者を中心に訓練を行っているが、それは俺が直接指導している。

 一日の仕事の中でこれが、この時が一番自分にしっくりくる。


 

 夕方――

 訓練が終わり、裏では夕食の準備が進められれている中での自由時間。

 俺は己の鍛錬に時間を費やした。

 誰もいない森深くの開けた場所での鍛錬。

 ここでは一人の空間が欲しいと何度もお願いをするが、一国の王として禁止されている。

 少し離れたところに国の兵士が陣取り警備。

 一人の空間などないのだ。



 夜――

 食事が終わりお風呂タイム。

 若い女性が体を隅から隅まで洗ってくれる。

 そんな理想はなく、ベテランの女性が数人で俺の体を洗ってくれた。

 その時俺の股間は立つわけがなく、しんなりしている。

 その後、就寝。

 といった、マンネリ化した日常。


 他のみんなはというと、

 アナは8歳にして国の天才医療機関最高責任者に就任。

 国全ての医療機関を取り締まる。


 エバは俺の右腕として王国政治長官に就任。

 主に俺ができない政治的懸案解決にあたり調整能力を備えたポスト。


 メイは国の直属軍器製造秘密機関副総長に就任。

 メイの父は国の直属軍器製造秘密機関総長に就任。

 国に欠かせない、兵器の製造、防衛技術の開発を任せられている。


 フォーとその子供は王宮内での番犬のような扱いになっている。

 また、森林の守り神として森の魔物を統一している猛者。


 モナはというと、ここ四年間旅に出たまま会っていない。


 どうやら、エレスティン王国との一件後、自身の力の未熟さに旅に出ると言って旅立った。

 俺に一言だけ残した。

 国が発展して落ち着いた頃、あなたを迎えに来ると。


 モナが発した言葉は四年前。

 どうやらその時が来たように突然感じた。


 なぜか。

 この国には感謝している。

 むしろ感謝されている。

 落ち着いた国、居心地のいい場所、気持ちのいい人々。

 優雅な四年間。

 何一つ不自由なく、一般市民も含めて全ての人が幸せな国作りと俺は改革を進めて今に至る、

 ここまで来たら、もう俺がどうなろうと良くなる一方。

 そろそろ俺も次へ進む時が来たようだった。


 その日の夜――

 俺は城のベッドで休んでいた。


 俺の好みでは無いが、外壁とは違い、城の内装というのは中世ヨーロッパを思わせるものだった。


 もうここまで来たらどうでもいいが好みでは無い。


 大きな窓が一つ。

 月夜が部屋中を照らす中、それは消えた。

 俺と月の対角線に何かが現れたのだ。

 そして、窓がバッと開いた。


 逆光で素顔は見えないが、匂い、スタイルでわかった。

 たが、様子が四年前と少し違う。

 セミロングの長さがあった髪の毛は腰の位置までスラッと伸びていた。

 4年も経てば伸びるってもんだ。

 でも、どことなく大人の女という色気が感じ取れた。


 彼女はモナ・スペルディ 21歳


「うっざっ」

「こんな気持ちのいい夜によく寝てるわね」


 モナだった。

 彼女は微笑んだ。


 俺は上体を起こした。


「迎えに来たわ!」


「とうとうこの時が来ましたか」

「かなりの歳月待ちましたよ。少しは強くなったんでしょうね!?」


「誰にそんなことを言ってるの!?」

「あなたこそどうなのよ アーサー」


「たかが一国の王。たかが魔法使い」

「そんな生半可な四年間を過ごした訳ではありませんよ」


「フッ!」


「私もこの四年間鍛えに鍛え、若返り、強くなった」

「ここから私はもっと強くなる」



第一章終了です

次回から第二章へ続きます。

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